SAP Enterprise Portal終了迫る!クラウド後継品
「SAP Build Work Zone」の紹介

 2025.11.27  リアルテックジャパン株式会社

多くの企業で利用されてきた SAP Enterprise Portal(EP)は、標準保守サポートが 2027 年末に終了し、延長保守も 2030年末をもって終了することが発表されました。
本記事では、EPに代わるSAP BTP上で提供されるサービス「SAP Build Work Zone」をご紹介します。
現在、SAP社はクラウドベースであるSAP BTPの活用を推進しており、マルチクラウド環境への移行を検討されているお客様には、SAP Build Work Zoneの導入を推奨しています。
新しくポータルサイトを構築したい方や、既存のEPからの移行を検討している方にもお役立ていただける内容ですので、ぜひご一読ください。

図:SAP Build Work Zoneのサイト例
SAP Enterprise Portal終了迫る!クラウド後継品「SAP Build Work Zone」の紹介

SAP GRCインプリメンテーションサービス

サービス概要

SAP BTPとは?

SAP Build Work Zoneは、SAP BTP(SAP Business Technology Platform)上で提供されるサービスであり、SAP Build製品群の1つです。
SAP BTPは、SAP社が提供するクラウドベースのビジネステクノロジープラットフォーム(PaaS:Platform as a Service)で、主に「アプリケーション開発と自動化」「統合」「データと分析」「基盤/共通サービス」「人工知能」といった5つの領域に大別され、これらの分野に対応する多様なサービスを提供しています。
現在では80種類以上のサービスが利用可能となっており、各サービスの詳細や最新情報はSAP Discovery Center(https://discovery-center.cloud.sap/viewServices)にて確認することができます。

SAP Build Work Zoneについて

前述したSAP Buildは、SAP社がSAP BTP上で提供するローコード・ノーコード開発向けの製品群で、2022年に既存のソリューションを改良・統合したうえでリブランドされました。
SAP Build Apps、SAP Build Code、SAP Build Process Automation、SAP Build Work Zoneにより構成されており、SAP Build Work Zoneは、クラウドとオンプレミスの両方でSAP/非SAPのアプリケーションに対する一元化されたエントリポイントとして機能するポータルサイトを作成することができ、Standard editionとAdvanced editionの2つの異なるエディションが提供されています。
SAP Enterprise Portalをオンプレミスでご利用されている方にとっては、そのクラウド後継製品として捉えていただくとイメージしやすいかと思います。

Standard editionとAdvanced editionの違い

先ほど紹介した通り、SAP Build Work Zoneには、2つのエディション(Standard edition、Advanced edition)があります。
Standard editionは、各アプリケーションへの一元化されたエントリポイントを提供し、アプリケーションサイトの様なシンプルなポータルサイトを作成したい場合に適しています。一方のAdvanced editionは、Standard editionの機能をさらに拡張したもので、情報共有やUXカスタマイズが可能で、企業内ポータルサイトとしての活用に適しています。
下記表を見ていただくとわかるように、例えばAdvanced editionでは、Microsoft TeamsやSharePoint、Googleドライブとの連携も可能で、さらにガイド機能を使ったワークフロー作成といった、より高度な業務支援も実現できます。
契約形態も異なっており、Standard editionはサブスクリプション契約または従量課金で導入できますが、Advanced editionはSAP BTPEAライセンス(SAP BTP Enterprise Agreement)を前提とした契約形態になります。

図:Standard editionとAdvanced editionの比較
サービス概要

REALTECH GRCセキュリティスターターパック
One Identity Manager(OIM)で可能にする効率的なID管理

主な機能

ユーザエクスペリエンス

SAP/非SAPのクラウドとオンプレの両方に対して一元化されたエントリポイントを作成することが可能で、ユーザがより効率的、生産的にタスクを遂行することができます。

  • 統合されたエントリポイント(ホーム画面)
    SAPやサードパーティアプリケーション、カスタムアプリケーションなどにシームレスにアクセスが可能。
  • 役割に応じたパーソナライズ
    ロールベースのアクセス制御により、ユーザごとに必要なアプリケーション・情報だけを表示させることができます。
  • マルチデバイス対応
    PCだけでなく、スマートフォンやタブレットなどのモバイル環境でも快適に利用できます。
  • カスタマイズ性
    FioriベースのUIで一貫した操作感を提供します。

認証/認可

SAP BTP上で提供されるSAP Cloud Identity Servicesに含まれるIdentity Authentication Service(IAS)と連携することで、ユーザに対して安全でシームレスな認証/認可機能を提供できます。

  • 認証
    IASは、シングルサインオン(SSO)や多要素認証(MFA)をサポートし、SAML2.0やOpenID Connectなどの標準的な認証プロトコルに対応。
    ユーザはIASを通じて一元的に認証され、SAP Build Work ZoneなどのBTP サービスに安全にログインできます。
  • 認可
    IAS側で管理されたユーザ属性情報を基に、SAP BTPサブアカウント内でロールコレクションとマッピングすることで、ユーザごとに適切なアクセス権限を付与できます。
    これにより、SAP Build Work Zone上のアプリケーションやコンテンツに対して、必要な操作権限を制御することが可能です。
    また、既にS/4 HANAをご利用の場合は、既存のFioriロール情報をフェデレーションによってSAP Build Work Zoneに一括取込することができ、SAP BTP上でロール管理を行うことができます。
    <補足>
    SAP Build Work Zoneにおけるフェデレーションとは、他のシステムや環境からビジネスコンテンツ(アプリ、カタログ、ページなど)を連携(フェデレーション)して利用するコンテンツ連携のことを指します。

3. 導入のメリット

【導入前の課題】

  • 各業務アプリケーションごとに入口(アクセスポイント)が分かれており、ユーザは目的のアプリケーションごとに異なる場所からアクセスしなければならない。
  • 利用するアプリケーションが増えるほど、管理しなければならないURLやログイン情報(ID・パスワード)が増えるため、覚える・管理する負担が大きくなる。
  • アプリケーションごとに個別の認証(ログイン)が必要で、ユーザは1日に何度もログイン作業を強いられる。(シングルサインオンが使えない場合もある)
  • ユーザ自身がどのアプリケーションの利用権限を持っているのか、事前に把握しづらく、実際にログインしてみるまでIDの登録や権限の有無が分からない。

【導入後の改善効果】

  • 各業務アプリケーションへの入口が一元化され、ユーザはひとつのポータルサイトからすべての対象アプリケーションへアクセスできるようになる。
  • 利用するアプリケーションが増えても、URLやログイン情報の管理はポータルサイト上で一元化されるため、IDやパスワードを個別管理する手間が大幅に減少。
  • シングルサインオン機能により、アプリケーションごとに個別ログインする必要がなくなり、ユーザは一度の認証で複数の業務システムをシームレスに利用できる。
  • どのアプリケーションが利用可能か、権限やID登録の有無がアプリケーション内で明確に可視化されるため、ユーザはログイン前に自身の利用範囲を把握できる。

まとめ

  • システムのエントリポイントをまとめられる
    複数のSAPクラウド・オンプレミスシステム、サードパーティ製アプリケーションを統合し、一元化されたエントリポイントを作成することが可能。ユーザは複数のアプリケーションやコンテンツに一箇所からアクセスできるため、生産性と効率が向上します。
  • 認可されたシステムにシームレスにアクセスできる
    標準的にシングルサインオン(SSO)をサポートし、Identity Authentication Service(IAS)や既存認証プロバイダと連携してユーザの認証情報を統合することができます。
  • GROW with SAP、RISE with SAP利用者は追加費用なしで利用可能
    契約を保有するお客様は、追加コストなくSAP Build(SAP Build Work Zoneを含む)を利用できます。
  • Standard editionからAdvanced editionへのアップグレードは、一部マニュアル対応が必要
    選択したコンテンツ項目を移送することはできますが、サイト及びその内部に含まれるコンテンツは、技術的にコンテンツの構造が異なるため移送はできません。今後、簡素化されたアップグレードパスの提供が予定されています。
  • SAP Enterprise PortalからSAP Build Work Zoneへ
    SAP Enterprise Portal(EP)は、主にオンプレミス環境を前提としたポータルサイト作成ツールでしたが、SAP社はEPのクラウド後継製品としてSAP Build Work Zoneへの移行を推奨しています。

 まとめ

SAP Note:3365091 - SAP Enterprise Portal 7.5: What's Next & Future? | Transition from SAP Enterprise Portal to the Cloud

【本記事の監修体制について】

執筆:Professional Service

監修:リアルテックジャパン株式会社 SAPソリューション事業本部

この記事は、SAP導入プロジェクトの豊富な経験を持つ当社の専門部門が内容を精査し、 以下の最終承認プロセスを経て公開しています。

最終監修責任者:リアルテックジャパン株式会社 代表取締役社長 松浦 一哉

企業の代表として、お客様の課題解決に繋がる有益で正確な情報発信に責任を持って取り組んでまいります。

One Identity Manager(OIM)で可能にする効率的なID管理

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