職務分掌とは? 業務分掌との違いや職務分掌規程の作り方を解説!

 2023.04.28  リアルテックジャパン株式会社

通常業務において責任の所在が曖昧だったり、不測の事態が起こった際に誰がどのように対応するのかが明確に決まっていなかったり、といったケースは多くの組織で見られます。そのような事態を防ぐためには「職務分掌」で業務範囲や責任の所在を明確にする必要があります。この記事では、職務分掌が必要とされる理由や職務分掌規程の具体的な作成方法・記入例などを紹介します。

職務分掌とは

「職務分掌」とは、組織の中で部署や担当者、役職者に仕事を配分し、業務の範囲および責任の所在を明確化することを指す言葉です。複雑な仕事を分担し、効率よく進めていくために、主に大企業や公的機関などで採用されています。職務分掌における最大の特徴は、担当者や役職者などの「個人」に対して仕事を割り振ることです。「誰がどの仕事を行うべきか」を明らかにすることで、非効率な仕事を防止する役割を果たします。

一方で、似た意味として捉えられやすい言葉に「業務分掌」があります。これは、職務分掌で配分された仕事をさらに細分化し、具体的な業務内容を明確化することを指す言葉です。どちらも仕事を効率的に進めるために必要な取り組みであり、それぞれ規定を設けて運用している企業もあります。

職務分掌規程とは

職務分掌規程とは、職務分掌を明文化し、業務の範囲および責任の所在を示した規程書のことです。多くは社内規則のひとつとして扱います。法律などで作成が義務付けられているわけではありませんが、作成することで従業員は業務内容が理解しやすくなり、プロジェクトの実現性も高まります。

職務分掌規程と同様のものに職務権限規程があります。これは、職務に対しての権限を記載したものであり、その担当者が行える職務の範囲を示した規定です。例えば、「人事担当者は採用業務および従業員の評価、昇進に関する手続きが行える」といった内容を示します。

職務分掌が必要とされる理由

企業運営において職務分掌が必要とされている理由を、「責任の明確化」「人材育成の効率化」「リスク対策」「内部統制」の4点に分けて解説します。

業務の責任の所在が明確になる

まず、役職や担当者ごとに業務を割り振り、誰がどの業務を行っているかを明確にすることで、責任の所在を明らかにすることが挙げられます。業務上のミスが発生した際にも、責任者がすぐに対処できるようになることで被害を最小に抑えることも可能です。また、それぞれの従業員の行うべき業務が明確化されていることで、業務に対する責任感を高めることも期待できます。

人材育成の効率が上がる

従業員は自分の役割が明確になることで、より業務に集中できるようになります。また、「何をスキルアップするべきか」などの目標を立てやすくなることで、モチベーション向上が期待できます。人材育成においても、教育担当者は職務分掌に沿った育成計画が立てやすくなり、プロフェッショナルな人材育成が可能です。

各職務が担当する業務が明確になれば、人事評価も行いやすくなります。適切な評価がなされることで、従業員はさらなる目標に向かって成長できます。

コロナウイルスなどへのリスク対策になる

職務分掌によってそれぞれの役割が限定されていることで、「ジョブローテーション制度」が導入しやすくなります。ジョブローテーションとは、組織内の従業員に異なる職種を経験させることで、個人の能力を広げ組織全体の能力向上につなげることを目的とした取り組みです。これにより、不測の事態におけるリスク対策にもつながります。

例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、多くの企業は新しい業務への対応や、テレワークをはじめとする業務形態の変更といった事態に直面しました。このような場合でも、ジョブローテーション制度の下においては、柔軟な人員配置やフォローアップ態勢の構築といったイレギュラー対応が取りやすくなります。

感染症の流行や自然災害といった不測の事態はいつ発生するか予想できません。職務分掌においてイレギュラー対応を定めておくことで、業務の属人化が解消できるなど、スムーズな対応が可能です。職務分掌は、あらゆる事態を想定して決めることで、企業のリスク対策としても役立ちます。

内部統制に役立つ

内部統制とは、経営者が組織を適正に運営するために指揮・監督やリスク管理などを行うことです。職務分掌により、「目的達成のために業務が効率的に行われているか」「事業活動における法令・モラルの遵守に問題は発生していないか」「安定性は保たれているか」といった状況が把握しやすくなります。そのため、内部統制の実施には職務分掌が効果的です。また、業務における不正・虚偽・隠ぺいなどの問題が発生した場合でも、職務分掌によって責任の所在を明確にしておくことで、内部統制の重要な要素であるリスク管理にも役立ちます。

職務分掌規程の作り方と3つの過程

ここでは、職務分掌規程の作成方法について、過程の順を追って解説します。また、SAPを導入した職務分掌規程の作成方法も紹介します。

作成前に経営者・従業員の理解を得る

規程を作成する前に、経営者や従業員の理解を得なければなりません。経営者の許可を得なければ規定を定めることは不可能であり、また従業員の協力がなければ職務内容の把握も困難です。作成の意義や目的を詳細に説明し、理解や許可を得てから作成に入ります。

職務分掌規程に盛り込む内容を決定する

作成の合意が得られたら、次は職務分掌規程に盛り込む内容を決定します。まずは組織における全体像を把握するために、本社や支社、部署・部門に至るまで、すべての業務内容を理解することが重要です。役職者や各部署の担当者などから業務内容をヒアリングし、すべての業務の洗い出しを行います。また、従業員からもアンケートなどを実施することで、これまで見えていなかった業務内容の把握につながる可能性があります。加えて、職務分掌が決定した後のローテーションや、イレギュラーな業務への対応も盛り込むことにより、効果の高い職務分掌規定が実現できます。

職務分掌規程を作成する

ヒアリングの内容を基に、業務の割り振りを行います。責任や権限の範囲を明確化し、各部署・部門の連携なども考慮しながら適切に配分しましょう。職務分掌が定まったら、職務分掌規程を作成します。記載内容は企業規模や業種などにより異なりますが、おおむね、規程の目的や設定する組織・部署、業務分掌、各部署の職務・責任などを詳細に記載します。

作成した後は、従業員の誰もがいつでも閲覧できる状態にしておきます。また、定期的に見直しを行うことが重要です。

SAPを導入して職務分掌規程を作る方法もある

職務分掌規程を作成するにあたっては、組織の業務を一元管理できるSAP社が提供するERPシステムを導入して行う方法もあります。SAPにおいて職務分掌を定義することで、ビジネスプロセスおよび手順の責任を従業員に配分し、アクセス権を適切に割り当てることが可能です。SAPのアクセス権限では、「誰が何をできるか」というポイントから設定します。

また、企業の資産保護および不正行為の防止に役立つルールも用意されています。ルール違反が発生すると、職務分掌の不整合の詳細や抵触の詳細、想定されるソリューション、加えて軽減管理の提案も表示することが可能です。

職務分掌の記入例

ここからは、職務分掌の具体的な記入例について、厚生労働省の資料を参考に紹介します。この資料では、課長職の職務分掌について、「タイトル」「内容」「具体的な行動」の順により具体的な行動指針を定めています。

「タイトル」では、「メンバーを指導育成する」「目標を達成するためにチームを管理する」などのように、職務(ここでは課長職)において果たすべき役割を記入します。次に「内容」欄では、タイトルで示した役割において必要なタスクや責任を記入します。例えば、タイトルが「メンバーの指導育成」であれば、内容は「仕事を通じて業務遂行力を高め、成長させる」「メンバーに権限を譲渡する」などです。

次に、「具体的な行動」では内容に応じて必要となる行動をさらに具体的に記入します。内容が「仕事を通じて業務遂行力を高め、成長させる」であれば、「メンバーの能力を見極め、本人に適した指導を実践する」というような、実際に行うべき行動です。何を行うべきかを具体的に示すことで、業務効率が上がり組織運営が円滑化します。

まとめ

職務分掌とは、職務ごとに仕事を適切に配分することで、「誰がどの仕事を行うべきか」を示すことです。業務における責任の所在が明確になり、人材育成に関わる業務の効率が上がります。また、内部統制にも役立つほか、組織運営の円滑化も期待できます。

作成は各職務における業務の洗い出しから行い、従業員へのヒアリングも実施しましょう。また、組織の業務を一元化できるSAPの導入も、職務分掌の作成に役立ちます。


RECENT POST「GRC」の最新記事


GRC

SAPのセキュリティとは?設定方法と監査ログ・脆弱性への対策を解説

GRC

特権ユーザーとは? 意味や必要性、リスクを詳しく解説

GRC

コンプライアンスとは? 意味や違反例、対策方法を徹底解説

GRC

内部統制とは? 4つの目的と6つの要素・3点セットや報告書について解説

職務分掌とは? 業務分掌との違いや職務分掌規程の作り方を解説!
New Call-to-action

RECENT POST 最新記事

RANKING人気記事ランキング

ブログ購読のお申込み