SAPセキュリティ完全ガイド
基本から対策、監査ログまで徹底解説

 公開日: 2023.10.13  更新日: 2026.01.29 

企業の基幹システムとして、ビジネスの中核を担うSAP。そのセキュリティ対策は、もはや「IT部門だけの課題」ではありません。
「SAPのセキュリティ対策、具体的に何をすればいいのだろう?」「自社の設定は本当に安全なのだろうか?」といった漠然とした不安を抱えていませんか?一見複雑に感じるSAPセキュリティですが、体系的に理解すれば、取り組むべき対策は明確になります。

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この記事では、SAPセキュリティの専門家が、基本概念から具体的な対策、監査ログの活用法までを網羅的に、そして分かりやすく解説します。

この記事でわかること

  • なぜ今SAPセキュリティが重要視されるのか、その背景と脅威
  • SAPセキュリティを構成する3つの柱と対策すべき領域の全体像
  • ユーザー権限管理や通信暗号化など、明日から使える具体的な設定方法
  • セキュリティ監査ログの活用法と、システム監視で押さえるべきポイント
  • 脆弱性への対応やインシデント発生時に備えるための実践的なフロー

この記事を最後までお読みいただくことで、漠然とした不安は解消され、自社のSAPシステムを保護するための具体的なアクションプランを描けるようになります。では、さっそくSAPセキュリティの世界を紐解いていきましょう。

なぜ今、SAPセキュリティが重要視されるのか?

多くの企業で導入されているSAPは、会計、販売、生産、人事といった基幹業務を支える重要なシステムです。しかし、その重要性の高さから、ひとたびセキュリティインシデントが発生すれば、事業継続に深刻な影響を及ぼしかねません。近年、ビジネス環境の変化に伴い、SAPシステムを取り巻くリスクは増大しており、セキュリティ対策の重要性はかつてないほど高まっています。一見難しく感じるSAPセキュリティですが、なぜ今、対策が急務なのでしょうか?その理由を具体的に見ていきましょう。

企業の基幹システムとしての役割

SAPセキュリティが極めて重要である第一の理由は、SAPが企業の「基幹システム」として、経営の中核を担っている点にあります。 基幹システムとは、企業の活動に不可欠な販売、会計、生産、在庫、人事などの業務データを統合的に管理するシステムのことです。 SAPはこの分野で世界的に高いシェアを誇り、多くの大企業が経営の根幹に据えています。

もし、この基幹システムがサイバー攻撃や内部不正によって停止したり、データが改ざん・漏洩したりすれば、その影響は一部門に留まりません。具体的には、以下のような深刻な事態に発展する可能性があります。

  • 生産活動の停止:生産計画や在庫データが失われ、工場の稼働がストップする。
  • サプライチェーンの混乱:受発注データが混乱し、部品の調達や製品の出荷ができなくなる。
  • 会計業務の麻痺:決算業務が遅延し、財務諸表の信頼性が損なわれる。
  • 信用の失墜:顧客情報や取引情報が漏洩し、企業の社会的信用やブランドイメージが大きく傷つく。

このように、SAPシステムのセキュリティインシデントは、直接的な金銭被害だけでなく、事業継続そのものを脅かす経営リスクに直結するのです。

巧妙化・多様化するサイバー攻撃の脅威

SAPセキュリティの重要性が増している第二の理由は、SAPシステムを標的としたサイバー攻撃が年々増加し、その手口が巧妙化・多様化していることにあります。 企業の機密情報や個人情報が集中するSAPシステムは、攻撃者にとって非常に魅力的なターゲットです。 近年では、特に以下のような脅威が高まっています。

攻撃の種類 概要とSAPシステムへの影響
ランサムウェアによる被害 システム内のデータを暗号化し、復旧と引き換えに身代金を要求する攻撃。基幹システムであるSAPが被害に遭うと、全社的な業務停止に至る危険性が非常に高い。
サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃 セキュリティ対策が手薄な取引先や子会社を経由して、標的企業のシステムへ侵入する攻撃。 SAPは多くの取引先とデータ連携しているため、サプライチェーン全体での対策が不可欠。
標的型攻撃による機密情報の窃取 特定の企業や組織を狙い、業務に関連するメールなどを装ってマルウェアに感染させ、システム内部に長期間潜伏して機密情報を盗み出す攻撃。
脆弱性を狙った攻撃(ゼロデイ攻撃) SAPソフトウェアの脆弱性が発見された際、修正プログラムが提供される前にその弱点を突いて行われる攻撃。 実際にSAPの脆弱性を悪用した攻撃は多数報告されており、迅速なパッチ適用が求められる。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2024」においても、組織編の上位には「ランサムウェアによる被害」や「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃」がランクインしており、これらの脅威がSAPシステムにとっても他人事ではないことがわかります。

内部不正による情報漏洩リスクの高まり

外部からの脅威だけでなく、従業員や元従業員、委託先の担当者といった内部関係者による不正行為も、SAPセキュリティにおける重大なリスクです。 内部者はシステムに関する知識や正規のアクセス権限を持っている場合が多く、外部からの攻撃よりも検知が難しいという特徴があります。

内部不正には、以下のようなケースが考えられます。

  • 金銭目的の不正:会計システムを不正に操作して会社の資金を横領する、顧客情報を抜き出して売却するなど。
  • 私的な動機による情報漏洩:会社への不満から、機密情報や個人情報を外部に漏洩させる。
  • 退職時の情報持ち出し:転職先での利用などを目的に、在職中にアクセスできた重要データを不正にコピーして持ち出す。
  • 権限の誤設定・管理不備:本来アクセスすべきでない情報にアクセスできてしまう設定不備を悪用されたり、意図せず情報漏洩につながったりする。

IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2024」でも、「内部不正による情報漏えい等の被害」は組織にとって3番目に大きな脅威として挙げられています。 このようなリスクを防ぐためには、職務分掌(SoD)の原則に基づいた厳格なアクセス権限管理や、特権IDの監視、操作ログの定期的な監査が不可欠です。SAPが提供するGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)ソリューションなどを活用し、不正の兆候を早期に発見する仕組みを整えることが求められます。

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SAPセキュリティの基本概念と構成要素

SAPセキュリティの基本概念と構成要素

SAPシステムは企業の経営資源を統合的に管理する基幹システムであり、そのセキュリティは単一の技術だけで成り立つものではありません。一見複雑に感じるかもしれませんが、その構成要素を体系的に理解することで、自社に必要なセキュリティ対策の全体像を明確に把握できます。SAPの堅牢なセキュリティは、大きく分けて「3つの柱」と、それに基づく具体的な「対策領域」から構成されています。

セキュリティを構成する3つの柱

企業の重要情報が集約されたSAPシステムを保護するためには、多角的なアプローチが不可欠です。SAPセキュリティの土台となるのは、「技術的セキュリティ」「組織的セキュリティ」「コンプライアンスとガバナンス」という3つの柱です。これらが相互に連携し、補完し合うことで、はじめて効果的で持続可能なセキュリティ体制が実現します。

技術的セキュリティ

技術的セキュリティは、SAPシステムそのものや、関連するITインフラを物理的・技術的な脅威から保護するための直接的な防御策を指します。これには、不正なアクセスを防止し、データの機密性、完全性、可用性を確保するための様々な技術的コントロールが含まれます。

具体的には、以下のような要素で構成されます。

  • アクセス制御:ユーザー認証、ロールベースの権限管理、シングルサインオン(SSO)などを用いて、許可されたユーザーのみが必要な情報にアクセスできるように制御します。
  • データ保護:通信経路(SSL/TLS)やデータベースに保存されたデータを暗号化し、盗聴や不正なデータ抜き取りから情報を守ります。
  • ネットワークセキュリティ:ファイアウォールや侵入検知システム(IDS/IPS)を設置し、ネットワークレベルでの不正アクセスや攻撃を遮断します。
  • 脆弱性管理:定期的なセキュリティパッチの適用や脆弱性診断を通じて、システムの弱点を特定し、攻撃者に悪用される前に対策を講じます。

例えば、SAP S/4HANAでは、標準で強力なデータベース暗号化機能が提供されており、これを利用することで、万が一データベースファイルが外部に流出しても、内容を読み取られるリスクを大幅に低減できます。

組織的セキュリティ

どれほど高度な技術を導入しても、それを利用する「人」や「組織」のセキュリティ意識が低ければ、リスクを防ぐことはできません。組織的セキュリティは、技術ではカバーしきれない人的な側面を強化するためのルール作りや体制構築を指します。

主な取り組みは以下の通りです。

  • セキュリティポリシーの策定:企業としての情報セキュリティに関する基本方針や行動指針を明確に文書化し、全従業員に周知徹底します。
  • 役割と責任の明確化:情報セキュリティに関する責任者(CISOなど)を任命し、インシデント発生時の報告体制や対応フローを整備します。
  • 教育・訓練:全従業員を対象に、パスワードの適切な管理方法や標的型攻撃メールの見分け方など、具体的なセキュリティ研修を定期的に実施します。
  • インシデント対応体制の構築:セキュリティインシデントが発生した際に、迅速かつ適切に対応するための専門チーム(CSIRT)を設置し、対応手順を定めます。

ある国内大手製造業では、全従業員を対象に年2回のSAPセキュリティ研修と抜き打ちの標的型メール訓練を実施しています。その結果、不審な操作やメールに関する従業員からの報告件数が前年比で約30%増加し、インシデントの未然防止に大きく貢献しています。

コンプライアンスとガバナンス

コンプライアンスとガバナンスは、法律や業界基準、社内規程といった「守るべきルール」を遵守し、企業統治を徹底する観点からのセキュリティです。 特に内部統制の観点から重要視され、不正行為の防止や監査への対応を目的とします。

この柱の重要な要素は以下の通りです。

  • 内部統制(J-SOXなど):財務報告の信頼性を確保するため、業務プロセスにおけるリスクを評価し、それを統制するための仕組みを構築・運用します。
  • 職務分掌(SoD):相互牽制を働かせるため、一連の業務を複数の担当者に分離することです。例えば、SAPシステムにおいて、取引先のマスタ登録権限を持つ担当者と、その取引先への支払処理を実行する権限を持つ担当者を分けることで、架空取引などの不正を防止します。
  • アクセスログの監視と監査:誰が、いつ、どのデータにアクセスし、何を行ったのかを記録・監視し、定期的に監査することで、不正の早期発見や原因究明に繋げます。
  • GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス):これらの活動を統合的に管理し、全社的なリスクマネジメントを効率化するための仕組みです。

セキュリティ対策の主な領域

では、これら3つの柱を基に、具体的にどのような領域で対策を講じるべきなのでしょうか。SAPセキュリティ対策の主要な領域を以下の表にまとめました。これらの領域は相互に関連しており、包括的に取り組むことが重要です。

対策領域 概要 具体的な対策例
ID・アクセス管理 ユーザーの本人確認と、役割に応じた適切なアクセス権限の付与・管理を行う。 ロールベースの権限設定、特権IDの管理・監視、多要素認証(MFA)の導入、定期的な棚卸し。
データ保護 システム内外でのデータの盗聴、改ざん、漏洩を防ぐ。 通信経路やデータベースの暗号化、マスキングによる個人情報の匿名化、データ損失防止(DLP)ソリューションの導入。
ネットワークセキュリティ 社内ネットワークと外部ネットワークの境界を防御し、不正な通信を遮断する。 ファイアウォールの設定、SAP Web Dispatcherの利用、セキュアなプロトコル(HTTPS/SNC)の使用。
アプリケーションセキュリティ SAPアプリケーション自体の脆弱性や、独自開発したプログラム(カスタムコード)の弱点を突いた攻撃を防ぐ。 セキュリティパッチの定期的な適用、カスタムコードの静的・動的脆弱性診断、セキュアコーディング規約の策定。
監視・監査 システムログやアクセスログを継続的に監視し、インシデントの予兆や不正行為を早期に検知する。 セキュリティ監査ログ(SM19/SM20)の有効化と定期的なレビュー、SIEM製品との連携による相関分析。

【実践】主要なセキュリティ機能と設定方法

【実践】主要なセキュリティ機能と設定方法

SAPシステムの堅牢なセキュリティは、日々の適切な設定と運用によって成り立っています。一見難しく感じるかもしれませんが、ポイントを押さえれば、セキュリティレベルを格段に向上させることができます。では、具体的にどのような機能があり、どのように設定すればよいのでしょうか?

この章では、SAPセキュリティの核となる「ユーザー認証とアクセス権限管理」「通信とデータの暗号化」「セキュリティ警告設定」という3つの主要な機能に焦点を当て、その具体的な設定方法を実践的に解説していきます。

ユーザー認証とアクセス権限管理

SAPセキュリティの最も基本的な対策は、「誰が」「何に」「どこまでアクセスできるのか」を厳密に管理することです。これがユーザー認証とアクセス権限管理の目的であり、「最小権限の原則」に基づき、ユーザーには業務に必要な最低限の権限のみを付与することが鉄則です。

ロールと権限設定の基本的な考え方

SAPでは、ユーザー一人ひとりに対して個別に権限を設定するのではなく、「ロール」という概念を用いて効率的に権限を管理します。 ロールとは、特定の職務(例:経理担当者、営業担当者)に必要な権限をまとめたものです。 ユーザーに適切なロールを割り当てることで、必要な権限を一括で付与できます。

このロールの作成や変更は、主にトランザクションコード「PFCG」を使用して行います。 ロールには、単一の業務機能を持つ「単体ロール」と、複数の単体ロールをまとめた「集合ロール」の2種類があり、これらを組み合わせて柔軟な権限管理を実現します。

ロール設計の具体例を見てみましょう。

ロール名 説明 割り当てられる主なトランザクションコードの例
経理担当者ロール(単体) 会計伝票の登録や照会など、日常的な経理業務に必要な権限 FB01 (伝票登録), FB03 (伝票照会), FBL1N (仕入先明細照会)
人事担当者ロール(単体) 従業員マスタの登録や更新など、人事業務に必要な権限 PA20 (従業員マスタ照会), PA30 (従業員マスタ更新)
一般社員ロール(集合) 経費精算や勤怠入力など、全社員に共通して必要な権限をまとめたもの (関連する単体ロールを複数割り当て)

このようにロールを適切に設計・運用することで、内部統制の強化と管理業務の効率化を両立させることが可能になります。

特権ユーザーの管理と監視

SAPシステムには、「SAP_ALL」プロファイルを持つような、すべての操作が許可された「特権ユーザー」が存在します。このユーザーはシステム管理や緊急時の対応に必要不可欠ですが、その強力な権限ゆえに、不正利用や操作ミスが発生した場合のリスクが極めて高いという側面も持っています。

そのため、特権ユーザーの管理には特別な注意が必要です。具体的な対策としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 特権ユーザーの最小化:日常業務では特権ユーザーを使用せず、必要な場合にのみ利用を許可する。
  • パスワードの厳格な管理:推測されにくい複雑なパスワードを設定し、定期的に変更する。物理的な金庫で保管するなどの対策も有効です。
  • 操作ログの監視:特権ユーザーによる操作はすべてログに記録し、定期的にレビューすることで不正な操作がないかを確認する。
  • 緊急アクセス管理ツールの導入:「SAP GRC AC(EAM)」などのツールを利用し、特権ユーザーの利用を申請・承認ベースにし、操作内容を詳細に記録する仕組みを導入する。

これらの対策を講じることで、利便性を損なうことなく、特権ユーザーに起因するセキュリティリスクを大幅に低減できます。

通信とデータの暗号化

企業の機密情報を取り扱うSAPシステムでは、データの盗聴や改ざんを防ぐために、通信経路とデータベースに保存されたデータの両方を保護する「暗号化」が不可欠です。

クライアント/サーバ通信の保護(SSL/TLS)

ユーザーのPCからSAPサーバーへ、あるいは開発環境から本番環境へといったシステム間の通信経路上でデータが盗聴されるリスクを防ぐためには、通信の暗号化が必須です。SAPでは、SSL (Secure Sockets Layer) やその後継であるTLS (Transport Layer Security) を用いて通信を保護します。

SSL/TLSを有効化するための大まかな手順は以下の通りです。

  1. サーバー証明書の準備:トランザクションコードSTRUSTを使用してPSEファイルを作成し、証明書の署名要求(CSR)の発行やインポートを行います。
  2. プロファイルパラメータの設定:トランザクションコード「RZ10」などを使用して、SSL/TLSを有効にするためのパラメータを設定します。
  3. サービスの再起動:設定を反映させるために、SAP関連サービスを再起動します。

これらの設定により、通信データが暗号化され、第三者によるなりすましやデータの盗聴、改ざんのリスクを効果的に防ぐことができます。詳細な設定手順については、SAPの公式ドキュメントであるサポートする SSL に対する SAP Web AS の設定(SAP ヘルプ ポータル)も併せてご参照ください。

データベースに保存されたデータの保護

通信経路だけでなく、データベースに保存されているデータそのものを暗号化することも重要です。これにより、万が一データベースのファイルが外部に流出したとしても、内容を解読されることを防ぎます。この技術は一般的に「透過的データ暗号化(TDE: Transparent Data Encryption)」と呼ばれます。

特にインメモリデータベースであるSAP HANAでは、Data-at-Rest Encryption(保存データの暗号化)というTDE機能が標準提供されており、以下のデータを暗号化することが可能です。

  • データボリューム:データベースの実データが保存されている領域。

  • ログボリューム:データの変更履歴(REDOログ)が保存されている領域。

  • バックアップ:システムのバックアップデータ。

  • Data-at-Rest Encryption機能を利用することで、アプリケーション側に変更を加えることなく、データベースレベルでデータを透過的に保護できます。

これにより、物理的なメディアの盗難や不正なアクセスから機密情報を守ることができます。

セキュリティ警告設定の構成

テスト自動化ツールや外部アプリケーションからスクリプトを利用してSAP GUIの操作を行う際に、デフォルト設定のままだと「スクリプトによってSAP GUIにアクセスしようとしています」という警告メッセージが都度表示され、処理が中断してしまうことがあります。

このような場合、事前にSAP GUIのオプション設定を変更しておく必要があります。

設定手順は以下の通りです。

  1. Windowsのコントロールパネルから「SAP GUI Configuration」を開きます。
  2. ダイアログボックスが表示されたら、「アクセシビリティ&スクリプト」のタブから「スクリプト」を選択します。
  3. 「スクリプトがSAP GUIにアタッチする時に通知」のチェックを外します。
  4. 「適用」または「OK」ボタンをクリックして設定を保存します。

ただし、この設定はセキュリティレベルを一部緩和することになるため、信頼できるスクリプトを実行する場合にのみ限定して利用し、不要になった際は設定を元に戻すことを推奨します。

セキュリティリスクの監視と監査

セキュリティリスクの監視と監査

SAPシステムは企業の基幹を担う重要な存在であり、その安定稼働とデータ保護は経営上の最重要課題の一つです。万が一、セキュリティインシデントが発生すれば、事業継続に深刻な影響を及ぼしかねません。そこで不可欠となるのが、システムの「監視」と「監査」です。一見すると似ていますが、監視は「現在」の脅威をリアルタイムに検知する活動、監査は「過去」の操作を検証し、問題の原因究明やコンプライアンス遵守を証明するための活動です。では、具体的にどのように進めていけば良いのでしょうか?この章では、SAPシステムのセキュリティリスクを管理するための監視と監査の具体的な手法を解説します。

セキュリティ監査ログの重要性と活用法

SAPのセキュリティ監査ログは、システム内で「いつ」「誰が」「何をしたか」を克明に記録する航海日誌のようなものです。このログを活用することで、不正アクセスや内部不正の早期発見、インシデント発生時の迅速な原因究明が可能になります。また、J-SOX法(内部統制報告制度)などの法規制対応においても、アクセス制御が適切に運用されていることを証明するための客観的な証跡として極めて重要です。

具体的な活用シーンとしては、以下のようなケースが挙げられます。

  • インシデント発生時の追跡調査:不正なデータ更新や情報漏洩が疑われる際に、監査ログを分析して不審な操作を行ったユーザーや端末を特定し、被害範囲の特定に役立てます。
  • 内部不正の抑止と検知:特権IDを持つユーザーによる機密情報へのアクセスや、業務時間外の不自然なログイン試行などを監視し、内部不正の兆候を早期に捉えます。
  • コンプライアンス監査への対応:監査法人から、特定の重要トランザクションの実行履歴や、ユーザーマスターの変更履歴などの提出を求められた際に、証跡として提示します。

監査ログで取得できる情報

セキュリティ監査ログでは、システムの安全性を検証するために多岐にわたる情報を記録できます。 システムログが主にシステム管理者向けの技術的な情報を記録するのに対し、監査ログは監査人やセキュリティ担当者向けに、よりビジネスプロセスに近い視点での情報を記録する点が特徴です。 具体的にどのような情報が取得できるのか、下の表で確認してみましょう。

ログの分類 主な取得情報 活用の具体例
ログオン関連 ・ダイアログログオンの成功・失敗
・RFCログオンの成功・失敗
特定のユーザーIDによる深夜帯の大量のログイン失敗を検知し、ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)の可能性を調査する。
操作・実行関連 ・トランザクションの実行
・レポートの実行
・RFC経由での汎用モジュール呼び出し
経理担当者以外のユーザーが支払関連のトランザクションを実行していないか、定期的にチェックする。
マスターデータ変更 ・ユーザーマスターレコードの変更(権限変更など) 意図しない管理者権限の付与や、退職者アカウントの不正な有効化が行われていないかを監視する。
監査設定の変更 ・監査プロファイル自体の変更履歴 監査ログの設定が何者かによって意図的に無効化されていないかを確認し、監査機能の信頼性を担保する。

監査ログの基本的な設定手順

監査ログの有効化と設定は、主にトランザクションコード「SM19」を使用して行います。 ここでは、基本的な設定の流れを解説します。

  1. トランザクションコード「SM19」を実行:まず、SAP GUIからトランザクションコード「SM19」を入力し、セキュリティ監査の設定画面にアクセスします。
  2. 監査プロファイルの登録と有効化:「静的プロファイル」または「動的プロファイル」を新規に登録します。恒久的にログを取得する場合は静的プロファイルを選択し、プロファイルを有効化します。
  3. 監査イベントの選択:監査したいクライアントやユーザー(通常は全ユーザーを意味する「*」を指定)を設定し、「詳細照会」から記録したいイベントクラス(例:ログオン成功・失敗、トランザクション開始など)にチェックを入れます。
  4. プロファイルパラメータの確認:最後に、プロファイルパラメータ「rsau/enable」の値が「1」になっていることを確認します。 もし「0」の場合は、有効化するためにBasis(ベーシス)担当者による設定変更が必要です。

設定が完了した監査ログは、トランザクションコード「SM20」または「SM20N」で分析・照会できます。 これにより、設定した条件に基づいたログを時系列で確認し、セキュリティインシデントの調査に活用することが可能です。

定期的なシステム監視で押さえるべきポイント

監査ログが「過去」の記録であるのに対し、システム監視は「現在」のシステムの健全性を保ち、インシデントを未然に防ぐための活動です。特にSAPシステムのような複雑な環境では、パフォーマンスの悪化がセキュリティ上の脅威の兆候であるケースも少なくありません。ここでは、安定稼働とセキュリティ維持のために押さえるべき監視ポイントを解説します。

  • パフォーマンス監視:CPU使用率、メモリ使用量、ディスクI/O、データベースの応答時間などを継続的に監視します。例えば、特定のプログラムの暴走や外部からのサービス妨害攻撃(DoS攻撃)により、CPU使用率が異常に高騰することがあります。
  • セキュリティイベントのリアルタイム監視:監査ログと連携し、特に重要なイベントをリアルタイムで検知する仕組みが重要です。 例えば、特権ユーザーのログイン、重要なシステムパラメータの変更、監査ログ設定の変更といったイベントが発生した際に、即座にセキュリティ担当者にアラートを通知する仕組みを構築します。これを実現するために、多くの企業ではSIEM(Security Information and Event Management)ツールとSAPを連携させています。
  • バッチジョブの監視:夜間や早朝に実行されるバッチジョブの実行状況を監視します。ジョブの異常終了や想定外の長時間実行は、データ不整合や業務遅延に直結します。また、不正に登録されたジョブが実行されていないかもチェックが必要です。
    Redwood社のRunMyJobsを導入することで、複雑なジョブの実行状況をリアルタイムに可視化し、異常検知から通知までを自動化します。これにより、不正なジョブ登録の監視を含め、効率的でミスのないジョブ運用が可能になります。
  • 移送管理の監視:開発環境から本番環境へのプログラムや設定の変更(移送)が、正規の承認プロセスを経て行われているかを監視します。REALTECH社のSmart Change Transport Managementを導入することで、移送承認作業をフロー化し、未承認の移送適用や適用順序のミスを防ぎます。これにより、移送管理業務を統制し監査証跡の管理工数も大幅に削減されます。

これらの監視を効率的に行うためには標準機能のみではなく、サードパーティ製の統合監視ツールを活用することが一般的です。
ある製造業の事例では、Redwood社のRunMyJobsの監視機能を活用し、本番環境におけるクリティカルなバッチジョブの遅延をリアルタイムで検知し、生産ラインへの影響を未然に防ぐことに成功しました。
また、別の製造業においては、移送管理業務の高負荷が課題であったが、Smart Change Transport Managementの導入により、人的な移送ミスの防止と効率化による工数削減を同時に達成しました。
このように、プロアクティブ(予防的)な監視体制を構築することが、ビジネスインパクトの大きい障害を防ぐ鍵となります。

脆弱性への対策とインシデント対応

脆弱性への対策とインシデント対応

SAPシステムは企業の基幹業務を支える重要な存在ですが、その重要性ゆえにサイバー攻撃の標的となりやすい側面も持っています。ひとたび脆弱性を突かれれば、事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、プロアクティブな脆弱性対策と、万が一の事態に備えたインシデント対応体制の構築が不可欠です。 この章では、SAPシステムを脅威から守り、堅牢性を維持するための具体的な対策について、順を追って解説します。

セキュリティパッチの定期的な適用

SAPシステムにおける脆弱性対策の基本は、SAP社から定期的にリリースされるセキュリティパッチ(SAP Security Notes)を迅速かつ確実に適用することです。 なぜなら、攻撃者の多くは既知の脆弱性を狙って攻撃を仕掛けてくるため、パッチを適用していない無防備なシステムは格好の標的となってしまうからです。

SAP社は、世界中のユーザーやセキュリティ専門家から報告された脆弱性情報を集約し、毎月第2火曜日(米国時間)にセキュリティノートを公開しています。 これには、脆弱性の深刻度を示す共通脆弱性評価システム(CVSS)スコアが付与されており、特にスコアが9.0以上の「HotNews」や7.0以上の「High Priority」に分類されるものは、早急な対応が求められます。 例えば、過去には認証不備やコードインジェクションといった深刻な脆弱性が報告されており、これらを放置することは極めて危険です。

ただし、パッチの適用は業務システムへの影響を考慮し、計画的に行う必要があります。適用前には十分なテストを実施し、本番環境への影響を最小限に抑えることが重要です。 適用作業そのものよりも、適用後のテストに多くの工数が必要となるケースもあるため、汎用的なテストシナリオを事前に用意しておくといった準備が、スムーズなパッチ管理を実現します。

脆弱性診断の実施とカスタムコードの検証

セキュリティパッチの適用は「守り」の基本ですが、それだけでは万全とは言えません。次に重要となるのが、定期的な脆弱性診断を通じて、自社のシステムに潜む未知のリスクを能動的に発見・対処することです。

特に注意が必要なのが、企業独自の要件に合わせて開発された「カスタムコード(アドオン)」です。SAP標準のプログラムはパッチによって脆弱性が修正されますが、カスタムコードに潜むセキュリティ上の欠陥は、自社で責任を持って検証しなければなりません。具体的には、以下のような脆弱性がカスタムコードには潜んでいる可能性があります。

  • SQLインジェクション:不正なSQL文の注入により、データベースを不正に操作される脆弱性。
  • クロスサイトスクリプティング(XSS):悪意のあるスクリプトがWebアプリケーションを通じて実行され、ユーザー情報が窃取される脆弱性。
  • 権限チェックの不備:本来アクセス権のないはずのユーザーが、重要なデータや機能にアクセスできてしまう脆弱性。

これらのリスクに対処するため、SAPでは「SAP Code Vulnerability Analyzer (CVA)」といった静的コード分析ツールを提供しています。 このようなツールを活用して定期的にカスタムコードをスキャンし、潜在的な脆弱性を開発段階で特定・修正することが、セキュアなシステム運用に繋がります。

インシデント発生時の対応フロー

どれだけ万全な対策を講じていても、セキュリティインシデントの発生リスクをゼロにすることは困難です。そこで重要になるのが、インシデント発生を前提とし、被害を最小限に抑えるための事前の対応計画(インシデントレスポンスプラン)を策定・準備しておくことです。

インシデント発生時は、混乱の中で場当たり的な対応をしてしまうと、かえって被害を拡大させかねません。事前に定められた手順に基づき、誰が、何を、どのタイミングで行うかを明確にしておくことで、冷静かつ迅速な対応が可能になります。 一般的なインシデント対応フローは、以下の表のように整理できます。

フェーズ 主な活動内容 具体的なアクション例
準備 インシデント対応計画の策定、体制の構築、訓練の実施
  • CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の設置
  • 連絡体制(エスカレーションルート)の明確化
  • 対応マニュアルの整備と定期的な見直し
  • インシデント対応訓練の実施
検知と分析 インシデントの早期発見、影響範囲と原因の特定
  • セキュリティ監査ログや各種システムログの監視・分析
  • 異常検知時のアラート通知設定
  • フォレンジック調査による証拠保全と詳細分析
封じ込め、根絶、復旧 被害拡大の防止、原因の排除、システムの正常化
  • 感染したシステムのネットワークからの隔離
  • 不正なアカウントの停止
  • 脆弱性の修正(パッチ適用など)
  • バックアップからのデータリストア
事後対応 関係者への報告、再発防止策の策定と適用
  • 経営層や関連部門、必要に応じて監督官庁や顧客への報告
  • インシデント対応プロセスの評価と改善点の洗い出し
  • 新たなセキュリティ対策の導入・強化

特に「検知と分析」フェーズにおけるフォレンジック調査は、インシデントの全容を解明し、適切な再発防止策を講じる上で極めて重要です。 どのような経路で侵入され、どのような情報が窃取されたのかを正確に把握することで、同じ過ちを繰り返さないための具体的な対策へと繋げることができます。

GRCソリューションによる統合的なリスク管理

GRCソリューションによる統合的なリスク管理

巧妙化するサイバー攻撃や内部不正など、企業を取り巻くリスクは日に日に複雑化しています。これらのリスクに個別で対応する従来の手法では、管理が煩雑になるだけでなく、対応漏れや非効率といった課題が生じかねません。そこで注目されているのが、GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)の考え方です。この章では、SAPが提供するGRCソリューションが、いかにして企業の統合的なリスク管理を実現し、セキュリティを強化するのかを詳しく解説します。

GRCとは何か

GRCとは、「ガバナンス(Governance)」「リスク(Risk)」「コンプライアンス(Compliance)」という3つの要素を統合的に管理し、企業価値の最大化を目指す経営手法のことです。 これまで別々の部門で管理されがちだったこれらの活動を連携させることで、より効率的かつ効果的な全社的リスクマネジメントを実現します。

  • ガバナンス:企業の目標達成に向けた、健全で効率的な意思決定と実行を支える仕組みを指します。
  • リスク:企業の目標達成を阻害する可能性のある不確実な事象を特定、評価、管理するプロセスです。
  • コンプライアンス:法律、規制、業界基準、社内規程などを遵守することを指します。

一見すると関連性が薄いように感じるかもしれませんが、これら3つは密接に連携しています。例えば、適切なガバナンス体制がなければリスクの全社的な把握は困難ですし、リスク管理が不十分であればコンプライアンス違反につながる可能性が高まります。SAP GRCソリューションは、これら3つの活動を単一のプラットフォームで管理することで、組織全体の透明性を高め、リスクへの対応力を強化します。

GRCによるセキュリティ強化のメリット

では、GRCソリューションを導入することで、具体的にどのようなセキュリティ上のメリットが得られるのでしょうか。主なメリットは次の4つです。

  1. リスクの可視化と全社的な状況把握
    最大のメリットは、組織内に分散しているセキュリティリスクを一元的に可視化できる点です。 従来、各部門がExcelなどで個別に管理していたリスク情報をGRCソリューションに集約することで、経営層はリアルタイムで全社的なリスク状況を把握し、迅速かつ的確な意思決定を下せるようになります。これにより、サイバー攻撃の予兆や内部不正の兆候といった脅威への早期対応が可能になります。

  2. コンプライアンス遵守と監査対応の効率化
    J-SOX法や個人情報保護法、さらにはGDPR(EU一般データ保護規則)など、企業が遵守すべき法規制は年々増加し、その内容は複雑化しています。GRCソリューションは、これらの規制要件と社内統制を紐づけて管理し、遵守状況を継続的にモニタリングする機能を提供します。 これにより、監査対応の工数を大幅に削減し、コンプライアンス違反のリスクを低減できます。

  3. アクセス管理の最適化と内部不正の防止
    内部不正のリスクを低減するためには、職務分掌(SoD:Segregation of Duties)の徹底と、従業員の権限を必要最小限にする「最小権限の原則」が重要です。SAP GRC Access Controlは、利益相反につながるような権限の組み合わせ(例:発注担当者と支払承認者が同一人物であるなど)を自動で検出し、不正行為を未然に防ぎます。 また、人事異動に伴う権限の棚卸しや、特権IDの貸与といったプロセスもシステム上で厳格に管理できます。 あるグローバル企業では、SAP GRC Access Controlの導入により、アクセス管理プロセスを世界規模で標準化し、統制環境を強化した結果、プロセスの効率性が20〜30%改善されたという事例もあります。

  4. セキュリティインシデントへの迅速な対応
    万が一セキュリティインシデントが発生した場合でも、GRCソリューションは迅速な対応を支援します。リスクシナリオと対応策をあらかじめ定義しておくことで、インシデント発生時に影響範囲を即座に特定し、定められたワークフローに従って対応を進めることが可能です。これにより、インシデントによる事業への影響を最小限に抑えることができます。

SAP GRCソリューションの主要機能

SAP GRCソリューションは、企業の統合的なリスク管理を支援するための様々な機能モジュールで構成されています。ここでは、特にセキュリティ強化において重要な役割を果たす4つの主要なソリューションを紹介します。

ソリューション名 主な機能と役割
SAP Access Control ユーザーのアクセス権限管理と職務分掌(SoD)の徹底に特化したソリューションです。 アクセスリスクの分析・評価、権限申請プロセスの自動化、特権IDの利用監視など、内部不正防止の要となる機能を提供します。
SAP Process Control 業務プロセスにおける統制活動の有効性を継続的に監視・評価するためのソリューションです。 設定値の変更ログや承認履歴などを自動で収集・分析し、統制上の不備やコンプライアンス違反のリスクを早期に検知します。
SAP Risk Management サイバー攻撃、システム障害、内部不正といった様々なリスクを一元的に管理するためのソリューションです。 リスクの識別、評価、対応、モニタリングといった一連のプロセスを標準化し、全社的なリスク管理体制の高度化を支援します。
SAP Enterprise Threat Detection SAPシステムに対するサイバー攻撃の脅威をリアルタイムで検知・分析するソリューションです。 システムのログを継続的に監視し、不審なアクティビティや攻撃のパターンを検出することで、セキュリティインシデントの未然防止や迅速な対応を可能にします。

これらのソリューションを組み合わせることで、企業は技術的なセキュリティ対策だけでなく、業務プロセスや従業員の権限管理といった組織的な側面からもセキュリティを強化し、多層的な防御体制を構築することが可能になります。

よくある質問(FAQ)

SAPセキュリティ対策で、まず何から始めるべきですか?

まずは現状の把握から始めることが重要です。具体的には、ユーザー権限の棚卸しを行い、不要な権限が付与されていないかを確認することから着手しましょう。特に強力な権限を持つ特権ユーザー(SAP_ALLなど)の管理は最優先事項です。誰が、なぜその権限を必要としているのかを明確にすることが第一歩となります。

SAPの標準機能だけでセキュリティは十分ですか?

SAPの標準機能は非常に堅牢ですが、それだけで万全とは言えません。企業のポリシーに合わせた詳細な権限設定、定期的なセキュリティパッチの適用、監査ログの監視といった運用面での対策を組み合わせることで、初めてセキュリティレベルを最大限に高めることができます。ツールと運用の両輪で対策を考えることが重要です。

SAPの監査ログはなぜ重要なのでしょうか?

監査ログは、システム内で「誰が、いつ、何をしたか」を記録する、いわばシステムの防犯カメラのようなものです。不正アクセスの試みや不正操作を検知するだけでなく、万が一インシデントが発生した際に原因を究明するための決定的な証拠となります。コンプライアンスや内部統制の観点からも、監査ログの適切な設定と定期的なレビューは不可欠です。

特権ユーザー(SAP_ALLなど)のリスクと管理方法を教えてください。

特権ユーザーは、システムのあらゆる操作が可能なため、アカウントが乗っ取られたり、悪用されたりした場合の被害が甚大になります。このリスクを低減するためには、利用を日常的な業務から切り離し、本当に必要な場合にのみ申請・承認を経て一時的に利用する、という運用が理想です。また、特権ユーザーによる操作はすべて監視し、ログを記録・レビューする体制を構築することが求められます。

カスタムコード(アドオン)のセキュリティリスクとは何ですか?

自社で開発したカスタムコードには、意図しない脆弱性が潜んでいる可能性があります。例えば、権限チェックのロジックが不十分であったり、外部からの不正な入力を許してしまったりするケースです。SAP標準のプログラムと異なり、これらの脆弱性は自社で責任を持って対処しなければなりません。定期的な脆弱性診断を実施し、潜在的なリスクを洗い出すことが重要です。

GRCソリューションを導入するメリットは何ですか?

GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)ソリューションは、アクセス権限管理、リスク分析、コンプライアンス遵守などを統合的に管理・自動化するツールです。手動での権限管理や職務分掌(SoD)違反のチェックには限界がありますが、GRCを導入することで、リスクを効率的に可視化・防止し、監査対応の工数を大幅に削減できる点が大きなメリットです。

まとめ

本記事では、企業の基幹システムであるSAPをサイバー攻撃や内部不正から守るためのセキュリティ対策について、その重要性から基本概念、具体的な実践方法、そして監査までを網羅的に解説しました。
なぜ今、SAPセキュリティが重要なのでしょうか?その答えは、事業継続に直結するリスクを管理するためです。企業の重要データが集約されたSAPシステムが停止したり、情報が漏洩したりすれば、その影響は計り知れません。技術的な対策、組織的なルール作り、そして継続的な監視という多層的なアプローチで、堅牢なセキュリティ体制を構築することが不可欠です。
ユーザー権限の最小化、特権IDの厳格な管理、通信の暗号化、定期的な脆弱性診断とパッチ適用、そしてセキュリティ監査ログの活用。これらは、SAPセキュリティを維持するための根幹をなす要素です。皆様の会社では、これらの対策は十分に行えているでしょうか?
一見難しく感じるSAPセキュリティですが、一つひとつステップを踏んでいけば、着実に強化することが可能です。しかし、専門的な知識やノウハウが必要となる場面も少なくありません。自社のリソースだけで対策を進めることに不安を感じていたり、どこから手をつければよいか分からなかったりする場合には、専門家の知見を活用することが成功への近道です。
当社はSAPのスペシャリストとして、SAP S/4HANAアプリケーション効果測定やインメモリーデータベース設計、マルチテナントデータ活用など、豊富な知見と実績をもとに、最適なソリューションをご提案します。
SAPに関するご相談やお見積りのご依頼は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

【本記事の監修体制について】

執筆:リードプラス株式会社

監修:リアルテックジャパン株式会社SAPソリューション事業

この記事は、SAP導入プロジェクトの豊富な経験を持つ当社の専門部門が内容を精査し、 以下の最終承認プロセスを経て公開しています。

最終監修責任者:リアルテックジャパン株式会社 代表取締役社長 松浦 一哉

企業の代表として、お客様の課題解決に繋がる有益で正確な情報発信に責任を持って取り組んでまいります。

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