洞察と知恵
「猫が顔を洗うと雨が降る」という言い伝え、現代ではある程度合理的に因果関係が説明できます。以下のように関連するようです。
- 低気圧が近づいて湿度が高まる→低気圧で雨が降りやすい
- 猫のひげに張りがなくなる
- 猫のひげは風向きなどを認識するために湿気が邪魔なので、湿気をとるために顔を洗う
天気予報の精度が高くない時代に、ある程度の確率でも天気を予報できたら便利ですよね。天気予報に慣れた現代人である筆者からすると、「猫が顔を洗うと雨が降る」を発見した昔の人の洞察と知恵に敬服します。
天気を予測できれば、日常生活をする上で非常に役に立ちます。同様にビジネスにおいて売上・コストなど予測したい情報はたくさんあるはずです。ただ、過去の情報を蓄積するだけなく、「予測分析」によってシステムの価値が一層高まるかもしれません。
今回は予測分析について解説していきます。
なお本記事は、下記シリーズ記事の一部で、他記事も参照されることをお勧めします。
分析の段階
ERPシステムは運用コストが大きい割に効果が少ない「お荷物」と非難されていることもあるのではないでしょうか。このような批判の一因として情報を埋もれさせたまま活用できていないことも多いです。ERPに限らないことですが、「分析」を改善することで、システムの価値が高まる可能性が大きいです。PDCAサイクルの一角を担う「分析」処理の重要性は高いですが、その成熟度は企業によって十人十色かと思います。
一般的に分析の段階として下図のように分類できます。
- 定型レポート:財務諸表、売上レポートなど定型的なフォーマットのレポート
- 柔軟なレポート:様々な分析軸でドリルダウン、グラフィカルな出力ができるレポート
- 将来予測:過去の情報を元にした将来予測(需要予測、費用予測など)
- 最適化提案:将来予測にもとづいた最適な提案(顧客への最適商品提案、故障予測と自動点検予定など)
新しい気付き
有名な例では「おむつとビール」があります。スーパーでおむつを買った人はビールを買う傾向があるというバスケット分析結果(受注伝票明細の関連性分析)から発見されました。赤ちゃんのいる家庭で父親がおむつを買い、ついでに缶ビールを購入していたという調査結果があったようです。その法則から、利益率の高いおむつとビールを並べて陳列したところ、業績が伸びたという話です。
従来のERPでは、そのような分析は基本的にできませんでした。しかし、HANAを使えばバスケット分析をするための関数がPAL(Predictive Analysys Library)と呼ばれるライブラリにあるので手軽にできます。PAL上にはバスケット分析以外の用関数も多数あります。PALに加えて統計処理に強いオープンソースのR言語を使うこともできます。
今季の費用を予測する、何が売上の大きな誘因になっているかを調べる、納入品の故障予測と予防保全をするなど、様々な活用例があります。
予測分析により今までとはまるで違った業務方法の確立もできると思います(下図参照)。
眠っている大きな可能性
正直、この分野は発展途中で確立された方法論(決められた分析方法、組織の作り方など)というものもまだありません。ですが、大きな効果を得ている活用事例も出ています。
有名なのはGE社の事例です。"The Power of 1%"という言葉を使い、パフォーマンスが1%でも改善すれば大きな成果を生み出すと説明しています(詳細は総務省の資料を参照ください)。特に大規模な組織では1%程度の小さな改善率であっても大きな効果を生み出します。そのためにも、従来と異なる分析アプローチで眠っている可能性を発見することが重要です。
エリート社員だけではない
「猫が顔を洗うと雨が降る」はただの猫好きの人が発見したのか、生活上、天候を気にする農家の方が発見したのか、今となってはわかりません。ただ、名高い天才が発見したわけではないのでしょう。
予測分析が普及することで、みなさんの会社にとっての「猫が顔を洗うと雨が降る」が見つかり、雨に濡れない行動がとりやすくなるかもしれません。
次回記事では予測分析を実践しやすいように、HANAでの実例を説明をします。ご期待ください。
- カテゴリ: SAP情報