SAP BTP(Business Technology Platform)とは?
概要・機能・実際の活用例について紹介

 2023.12.20  リアルテックジャパン

SAPソリューションは多くの企業で導入・活用されていますが、その価値を最大限に引き出し、サービス群の中核となっているのがSAP BTPです。本記事ではSAP BTPの概要や代表的な機能、SAP CPとの違いについてくわしく解説します。さらに活用例や独・Uniper社における実際の導入事例と成果も紹介します。

SAP BTPとは?

SAP BTP(Business Technology Platform)とは、独・SAP社が提供する、クラウドベースの「ビジネステクノロジープラットフォーム」です。SAPジャパン社によれば、「先進的な技術をベースにした、ローコードまたはノーコードでビジネスアプリケーションを拡張・融合できるプラットフォーム」となります。

SAP BTPは、アプリケーションの開発・実行・統合、データベースやデータ管理、データ分析、自動化、機械学習やAIなど、個々のシステムでは対応できない、さまざまな機能を提供します。提供されている機能の総数は2023年11月現在、90以上に上ります。

SAP BTPの原形は、2013年にリリースされたSAP HANA Cloud Platform(SCP)です。その後、2017年のSAP Cloud Platform(SAP CP)を経て、2021年からSAP BTPへと発展してきました。SAP CPまではアプリケーション開発・統合プラットフォームという色合いの濃いサービスでしたが、SAP BTPではより広範囲な「ビジネス」に領域を広げ、テクノロジー(技術)プラットフォームにとどまらない、文字通りの「ビジネステクノロジープラットフォーム」と位置付けられています。

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SAP BTPが持つ役割

SAP BTPの役割は「顧客のSAPシステム導入による効果を最大化する」ことです。SAP BTPが提供する機能数が90以上であることは上述した通りですが、これらは大きく5カテゴリーに分類できます(ただし2022年中頃までは、SAP社ではSAP BTPの機能を下記とは異なる4カテゴリーに分類していました)。

  • アプリケーション開発と自動化
  • 拡張計画と分析
  • データとアナリティクス(分析)
  • インテグレーション(統合)
  • AI

アプリケーション開発の領域では、顧客はSAP BTPを使用して、たとえば業務アプリケーションをカスタマイズし、個々のビジネスニーズにあわせて拡張できます。

データとアナリティクス(分析)機能を利用すれば、SAPのデータはもちろん、他社ソリューションのデータも含め、総合的な分析を行えます。これにより多様なデータをソースにして、ビジネスのベネフィットを最大化させる、最適な分析結果を得ることが可能です。

さらに、インテグレーションでは、SAP BTPを活用してSAPシステムとサードパーティのCRMや他の業務アプリケーションとを統合できます。これにより、たとえばサプライチェーンとECのような異なるビジネス領域間で発生する齟齬に対して、システムが柔軟に吸収・対応できるようになります。

AIや機械学習、チャットBotなどの機能は、ビジネスのパフォーマンスを劇的に向上させ、新たな価値を創出します。

そのほかにも、たとえば事前に構築されたテンプレートコンテンツでは、複雑なコーディングを要さずにシステムを開発できるように支援します。開発時間およびコストを削減し、ビジネスの迅速性を高めます。

SAPの「BTP」と「CP」の違い

SAP BTPの源泉がSAP HANA Cloud Platform(SCP)であり、SAP Cloud Platform(SAP CP)を経て現在に至ることは上述した通りです。このような流れで発展し、そのたびにリブランディングされてきたことは間違いではありませんが、SAP BTPを単にSAP CPの発展形・進化形として捉えると、SAP社の位置付けるBTPのイメージとはやや異なってきます。

SAP BTPとは、SAP CPの持つ機能を、アプリケーション開発と自動化、統合、AI(インテリジェンtのテクノロジー)の各カテゴリーとして取り込みつつ、SAP社が提供しているそのほかの拡張計画と分析、データおよびアナリティクスといった機能をも包含した、SAP社のテクノロジーレイヤサービス群の総称です。SAP社の提供するサービスは、ビジネスプロセスレイヤの「SAP Signavio(旧Business Process Intelligence)」およびアプリケーションレイヤの「Intelligence Suite」「Industry Cloud」で構成されますが、これらのうちSAP BTPが最も広い領域を占めており、SAP社のサービスの中核と考えて間違いありません。SAP社では「SAP BTPは、DXのためのビジネステクノロジープラットフォームのブランドである」としています。

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SAP BTPの代表的な機能

SAP BTPは、企業が直面する複雑なビジネス課題を解決するための包括的な機能を提供します。以下では、SAP社の分類する5カテゴリーに沿って代表的な機能(サービス)を紹介します。

アプリケーション開発と自動化

アプリケーション開発とプロセスの自動化は、SAP BTPの代表的な機能のひとつであり、顧客はこれらを利用してビジネスサイトの構築やアプリケーションの開発を行えます。特に「SAP Build」は、ドラッグ&ドロップの簡易操作によるアプリケーション開発を可能にするローコード開発サービスで、開発を迅速化・容易化します。

一方、より本格的な開発には、高度なカスタマイズ性と拡張性を有する「SAP Business Application Studio(BAS)」が適しています。プロセスの自動化は「SAP Build Process Automation」が機能を提供し、煩雑なワークフローを効率化します。これらのサービスは、SAPソリューションを利用してSide by Sideでアプローチするため、既存システムに干渉することなく、新しい機能を追加できるようになっています。

拡張計画および分析

企業の意思決定を支援するための拡張計画および分析も、SAP BTPが提供する重要な機能のひとつです。SAP BTPは財務計画、サプライチェーン計画、販売計画などの業務に不可欠なデータ駆動型の分析と評価を行い、戦略的な計画の立案を補助します。たとえば企業の収益性などのパフォーマンス分析には「SAP Profitability and Performance Management」が、またサプライチェーン計画には「SAP Integrated Business Planning for Supply Chain」が対応します。

統合

SAP BTPは、異なるアプリケーションをスムーズに統合し、業務プロセスを最適化します。ローコード/ノーコード開発が可能で、誰でも容易に機能を開発したり、拡張したりできます。SAP BTPを活用することで、組織内の多様なアプリケーションやデータを連携させ、業務効率を大幅に向上させることが可能です。

データおよびアナリティクス

データの管理・分析もSAP BTPの核となる機能のひとつです。「SAP Datasphere」は、組織内のビジネスデータにシームレスにアクセスし、包括的なデータ管理サービスを提供します。「SAP Analytics Cloud」は、データ分析によって予測や計画を自動作成し、企業がデータ駆動型の意思決定を行う際に強力に支援してくれます。

人工知能

人工知能(AI)はSAP BTPにおける重要な柱です。SAPのAIカテゴリーには、ビジネス文書処理の自動化を支援する「SAP AI Business Services」や、AIモデルの開発と統合を行う「SAP AI Core」、多言語対応のチャットボットシステムを提供し、顧客サービスの自動化や改善に貢献する「SAP Conversational AI」などが含まれています。これらのAIソリューションを活用することで、定型作業を自動化し、業務プロセスを最適化できます。

SAP BTPの活用例

SAP BTPは、企業のDXを実現するためのさまざまなサービスを提供します。ここでは、SAP BTPの具体的な活用例を示し、ビジネスにどのように貢献しているのかを紹介します。

PDFの請求書を自動登録

請求書の処理は日常的な業務でありながら、時間がかかり、ヒューマンエラーも生じがちです。SAP BTPを利用すれば、PDF形式の請求書からOCR(光学文字認識)でテキストデータを抽出し、S/4 HANAに自動登録するまでのプロセスを実装できます。顧客による手動でのデータ入力の必要がなくなり、承認プロセスの効率化と精度の向上を促進します。

IoTで収集したデータをもとにした対処プロセスの自動化

製造業界では、IoTデバイスから収集されるデータを活用して、機器の故障や不具合の予測、対処プロセスの自動化に取り組む企業が増えています。SAP BTPのIoTサービスを使用すれば、リアルタイムでデータを受信し、故障の予兆を検出して即座に対応できます。故障の予測や監視だけでなく、必要な部品の自動発注なども可能にし、ダウンタイムを最小限に抑えて、生産性を向上させます。

これらの活用例からもわかるように、SAP BTPは業務の自動化や効率化などを推進する強力なソリューションです。もちろん、ここで紹介したのはあくまで一例です。ビジネスニーズに応じて、さらに多種多様な活用ができます。

SAP BTPの実際の導入事例

SAP BTPの導入によって大きな成功を収めている企業の代表例がドイツのエネルギー大手であるUniper社です。同社はSAP BTPによって業務プロセスを効率化し、リモートワークの管理や人事コンプライアンスの課題に取り組んでいます。SAP BTPの導入により、リモートワーク申請の処理に対する生産性が70%向上し、人事コンプライアンスや二重課税に関連するリスクは25%低減しました。その結果、企業全体の業務が迅速化し、同時にコンプライアンスの強化も図れています。

同社ではSAPのサポートプログラムを活用し、SAP ERP、SAP Ariba、SAP SuccessFactorsといった既存アプリケーションの拡張・統合も実現しています。特に、モバイルアプリを導入したことによって、プラント技術者は外出先でもレポートを管理できるようになり、検査時間が半減しました。調達プロセスも大幅に高速化し、購入申請の処理時間が80%短縮、エラー率は5%にまで減少しました。

Uniper社の成功事例は、SAP BTPがいかに多様なビジネス課題に対応し、企業が競争力を高めるための変革を促進できるかを示しています。

まとめ

SAP BTPは、アプリケーションの開発と自動化、データ分析、統合、さらには人工知能など、さまざまなサービスを包含したプラットフォームです。導入することで、企業はビジネスプロセスの合理化やDXの加速を図れます。しかし、新しいテクノロジーを導入する際には、疑問やトラブルが生じたり、うまく使いこなせずに想定した導入効果を出せなかったりすることはめずらしくありません。

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