SAP S/4 HANA Enterprise Managementリリースとその目的

 2015.12.08  リアルテックジャパン

はじめに

2015年12月1日にSAPジャパンはSaaS型クラウド分析ソリューション「SAP Cloud for Analytics」の提供を開始しました。先月11月には「S/4 HANA」の最新版「SAP S/4 HANA Enterprise Management」をリリースしました。この2つのニュースを聞いて、S/4 HANAプレスリリースイベントでSAP社創業メンバーであるハッソ・プラットナー氏が語った企業の情報システム理想像を想起しました。まさに、その理想像を構成するパズルのピースがピッタリ埋まったように見えました。
今投稿では、まず「SAP S/4 HANA Enterprise Management」について解説します。今年の2月にリリースされた「S/4 HANA」と何が違うのか、以前の記事の「Simple Logistics」はどうなったのか、S/4 HANAのそもそもの目的を掘り下げていきます。
また、次の投稿では「SAP Cloud for Analytics」について解説しまAP Cloud for Analytics」について解説しますloud for Analytics」について解説します。

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S/4 HANAとは

まずはS/4 HANA概要を説明します。
S/4 HANAは基幹システムの名称です。SAP Business Suite for HANAの略で、SはSimple、4は第4世代を表しています。
11月にリリースされた「SAP S/4 HANA Enterprise Management」は第4世代「S/4 HANA」の最新バージョンです。2015年11月にリリースされたことから「SAP S/4HANA 1511」と呼んでいる資料も多いです(最初のバージョンは「SAP S/4HANA 1503」と呼ばれていることもあります)。
S/4 HANAの目玉は大きく以下の3つです。

  1. データモデル
  2. 画面(User Experience)
  3. システム設定

S/4 HANA詳細に関しては、以下の過去の記事を参照ください。

こちらの「SAP S/4HANAで何が実現できるのか?」もぜひご覧ください。

SAP S/4 HANA Enterprise Management全体像

リンク先にS/4 HANA Enterprise Managementの全体像があります。
中央の青い部分を「SAP S/4HANA Enterprise Management solution」と呼び、組織のミッションクリティカルを担う業務処理のコアソリューションです(いわゆる基幹システムです)。具体的には、会計/人事/調達/サプライチェーン/製造/マーケティング/販売/サービス/資産管理/研究開発の計10種類の業務処理をカバーします。
周辺の灰色部分を「SAP S/4HANA LoB solution」と呼び、「SAP S/4HANA Enterprise Management solution」とシームレスに連携可能な個別ソリューション群です(「LoB」は「Line of Business」の略です)。人材管理の「Success Factors」や、経費管理、経費精算の「Concur」などがその実態です。

前バージョンからの変更点

前バージョンからの変更点で最も大きいのはロジスティクス分野です。前バージョンで実装されていた会計モジュールへのSimplificationがロジスティクスにも導入されました。基本的なコンセプトは「S/4HANA構成要素について データモデル編(データ単純化)」で解説した内容と同じです。
"Simple Logistics"や"sLOG"、"sLogistics"という開発コードネームは、"Materials Management & Operations"と正式に呼ばれるようになりました。"Materials Management & Operations"は包括的な名称で、製造/サプライチェーン/調達/販売に分類されます。今回のリリースでは以下の機能が追加・拡充されています。

  • MRP:MRP高速化と新作業モデル(即時シミュレーションなど)導入
  • 在庫管理:データモデル単純化による分析柔軟性確保とスループット向上
  • 品目評価:品目評価の高速化により複数通貨使用や複数評価基準への対応

来年(2016年)には納期回答、受注・請求処理、購買などで機能追加や機能拡充が予定されています。

S/4 HANAの先にあるビジョン

S/4 HANAは「以前のERPよりシステム処理が早くなっただけ」という誤解にあうことがあります。実際には早くなることだけでなく、より大きなメリットがあります。

  • 情報精緻化と多様化:処理高速化に伴いスループットを向上することで、情報精緻化と多様化が可能です。今まで処理時間などの制約を理由に細かい粒度での情報管理を諦めていた場合には、そのボトルネックを解消します。その結果としてより精緻な管理が可能となります(管理会計の分析軸を細かくするなど)。また、基幹情報に加えてセンサー情報やソーシャルメディアのテキスト情報を管理し、ひとつのプラットフォームでの多角的な分析、管理が可能になります。
  • 情報処理の多様化:従来のERPではできなかった予測分析、テキストマイニング、空間処理(顧客に最も近い営業員検索など)がひとつのプラットフォームで可能です。
  • システムをシンプルに:上記2つの結果として、システム集約の道が開けます(データウェアハウスやテキストマイニングシステム等の統合)。システムを集約することでシンプルで柔軟性・拡張性の高いプラットフォームを実現でき、データ連携処理、データ冗長化など様々な無駄を省くことができます。

最後に

今回は「SAP S/4 HANA Enterprise Management」の内容と、その先にあるビジョンについて解説しました。次回は「SAP Cloud for Analytics」について解説します。

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