S/4HANAの勘所:HANAの歴史と概要

 2015.02.19  リアルテックジャパン

はじめに

「【S/4HANA】プレスリリースからそのコンセプトに迫る」と「【S/4HANA】プレスリリースからその実態に迫る」という記事で、S/4HANAの発表内容について解説しました。S/4HANAは、その名前の一部にもある通りHANAを基盤とした仕組です。Business SuiteからS/4HANAへの概念の違いを下図で示しました。下図右側に示されているようにHANAはS/4HANAの土台にあたります。本記事は、そのHANAの誕生からの歴史と概要についてクローズアップしていきます。

S4HANA_ONE_SYSTEM.jpg

なお本記事は、下記シリーズ記事の概要で、他記事も参照されることをお勧めします。
第1回 S/4HANAの勘所:HANAの歴史と概要 【本記事】

SAPデータコピーツール Data Sync Manager
SAPユーザー必見!テスト・トレーニング・データ移行時に機密データを守る方法は?

第2回 S/4HANAの勘所:HANA Viewを使った分析高速化

第3回 S/4HANAの勘所:HANA AFMとAFLを使った統計解析

第4回 S/4HANAの勘所:HANA XSエンジンを使ったWebアプリケーション開発

第5回 S/4HANAの勘所:HANA基本実践編(PALとLumiraを使った顧客分析)

第6回 S/4HANAの勘所:HANA応用実践編(PALとUI5を使った顧客分析)

HANA概要

SAP社公式サイトでは「次世代アプリケーションおよび分析のプラットフォーム」とHANAについて定義しています。さらに「HANAはリアルタイムビジネスを支えることができるようインメモリのデータベースとアプリケーションプラットフォームを兼ね備えている*」としています。平たく言えば、HANA単体で何でも対応できる基盤、です。

※訳はわかりやすくするために、多少内容を省略していますので、正確な記述は原文を参照ください。

HANAの歴史

HANAは初期には"High-Performance ANalytic Appliance"と呼ばれており、分析に特化したDBとしての位置づけでした。SAP社はHANA以前に存在したTRex、MaxDB(Live Cache)等のインメモリDBの技術を参考にして2011年にHANAをリリースしました。その後、1年ごとにHANAをベースとしたソリューションのリリースを続け、S/4HANAに至ります(下図参照)。リリース速度の早さからもSAP社が力を入れていることが伺えます。

S4HANA_History.jpg

データベースとしてのコアな技術要素

HANAのデータベースとしてのコアな技術要素は、以下の4つです。

  1. インメモリDB
  2. カラムストア
  3. 並列化
  4. データ圧縮

このうち、1から3については、前に投稿した内容と重複しますので「S/4HANA構成要素について データモデル編(OLAP統合)」を参照ください。
「4. データ圧縮」についてですが、カラムストアに対応した効率的な圧縮アルゴリズムを使ってデータを保持しています。カラムストア型データは行ストアに比べて同一情報の出現頻度が高いため圧縮率が高くなります。DBの種類こそ違いますが、「【SAP BWで最新SQLServer活用】第2部 カラムストアインデックスを活用したBIバックエンド」の解説内容と共通する部分が多いです。

こちらの「SAP S/4HANAで何が実現できるのか?」についてもっとご覧ください/4HANAで何が実現できるのか?」についてもっとご覧ください。

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代表的なアプリケーション機能

HANAはデータベースとしてだけでなく、統合プラットフォームとしてさまざまなアプリケーション機能を具備しています。以下に代表的な機能を示します。他にも「グラフサービス」等の機能があり、SPごとに機能拡充しています(本記事はSPS09時の機能です)。

機能 概要 使用例
HANA View 高速な分析処理を実現するためのデータベースビュー。Excel等外部アプリケーションへのデータ公開可能。
※詳細は次記事参照
社員がExcelでダウンロードできるように営業所ごとの当日売上データをビューを公開する。
Application Function Modeler(通称AFM) ノーコーディングでプロシージャを定義できるモデリングツール。PAL(統計分析ライブラリ)、BFL(ビジネス機能ライブラリ)を呼び出すことができる。
※詳細は他記事参照
データサイエンティストが自社の売上データを使って来年度の売上予測のシミュレーションをする。
XSエンジン Webベースのアプリケーションを提供するエンジン。
※詳細は他記事参照
企業のKPIをダッシュボード形式で表示し、ブラウザでモニタリングを行う。
全文テキスト検索 テキストの全文検索機能です。SAPがABAPスタック上で苦手としていた分野で従来はTRexに任せていた機能です。さらに、日本語サポートはまだですが英語ではテキストマイニングも可能です。 コールセンターオペレーターが自社の製品FAQをテキストで検索する。
地理空間情報処理 距離、面積を扱えるようになります。Google Mapのような地図アプリケーションとの連携に使用します。 サービス員が顧客納入商品の保守サービスで移動距離を勘案してどう訪問していくかを提案する。
ビジネスルールエンジン エンドユーザがノーコーディングでビジネスルールを定義する。 営業員が季節、販売商品、顧客属性などからクロスセルをする商品を提案する。
系列データ処理 連続するデータ(時系列データ等)を最適な形で保持、活用する。 客先設置機械の時系列温度データから異常値の検出をし、予防保全に役立てる。

最後に

今回はS/4HANAの基盤となっているHANA誕生からの歴史と機能概要を解説をしました。データベースアプリケーションから、HANA単体で完結する次世代の統合的プラットフォームとして進化しているのがポイントです。次回は「S4/HANAの勘所:HANA Viewを使った分析高速化」というテーマで「HANA View」という機能について解説していきます。

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