はじめに
「【S/4HANA】プレスリリースからそのコンセプトに迫る」と「【S/4HANA】プレスリリースからその実態に迫る」という記事で、S/4 HANAの発表内容について解説しました。
記事の中で、以下の3分野が革新の基軸であると書きました。
- 画面(User Experience)
- データモデル
- システム設定
今回は「 画面(User Experience)」について、その構成技術であるFioriを解説していきます。
Fioriとは
Fiori自体は2013年に発表されたアプリケーションで、真新しいものではありません。百聞は一見にしかずということで、こちらのデモサイトで実際に触ってみた方が理解が簡単です。
S/4 HANAでは"Reimagined User Experience"としてFioriを位置づけています。そもそもユーザがシステムを通じて体験するプロセスを想像しなおしたということです(平たく言えば画面再設計です)。旧来のGUI画面と比較すると以下の違いがあります。
項目 | GUI画面 | Fiori |
---|---|---|
設計方法 | 機能をベースに設計(例:受注伝票を登録する機能の画面) | ユーザの役割をベースに設計(例:営業マネージャーが使用する画面) |
画面 | 既存GUI画面に次々と機能追加をして現在に至る | 再設計されたシンプルで使いやすい画面 |
動作環境 | デスクトップ上のSAP GUIで動作 | マルチデバイス、マルチブラウザで動作(S/4 HANA Launch Eventでは腕時計型のウェアラブルデバイスを使用してデモをしていました) |
*昔はUI(User Interface)と呼んでいたものは、今はUX(User eXperience)と呼ぶことが多いです。概念の違いはこちらの記事等で確認ください。
Fioriの種類
Fioriはその役割ごとに、以下の4種類に分類されます。
- Transactional apps:伝票等を更新、参照するアプリケーション
- Fact sheets:さまざまな情報を検索、閲覧するアプリケーション
- Analytical apps:グラフィカルに分析をするアプリケーション
- Smart Business:KPIを分析、評価するアプリケーション
Fioriは、リリースされた当時は"Transactional apps"しかなかったのですが、種類はもちろん、その数が爆発的な勢いで増えています。"Transactional apps"はHANA以外のBusiness Suiteでも使用可能です。
アプリケーションライブラリが公開されているので、どんなアプリケーションがあるか、それらの簡単な画面などを見ることができます。
Fioriの技術構成要素
FioriはWebブラウザ上で動作するWebアプリケーションです(AndroidとiOSのアプリからも動きます)。基盤となる技術はSAP UI5を使用しています(SAP UI5は「SAPUI5とSAP NetWeaver Gatewayによるマッシュアップ開発入門」を見るとイメージが湧きやすいと思います)。SAP UI5はABAPスタック上にもHANA上にもデプロイでき、Fioriの種類に応じてデプロイ先が変わります。
Fioriの重要な点として拡張性の担保があります。従来のGUI画面で項目やボタン追加がモディフィケーションとなってしまうことが多かったです。しかし、Fioriではその点を考慮して設計されているためアドオン扱いで拡張可能となり、保守が容易になります。
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Fioriの効果
承認系のアプリケーションがFioriで威力を発揮することが多いです。忙しいマネージャー等、承認者が移動時間や会議の合間をぬってモバイルからワークフローの承認/否認をすることで業務効率化が達成できます。
また、分析系に関してもタブレット上で情報を映しながら関係者とディスカッションをするなども効果を発揮します。
使い方や効果はビジネスケースに依るので枚挙の暇がないですが、従来のデスクトップPCに限られたGUI画面と比べてさまざまな場面で役に立つはずです。
最後に
ここまでFioriについて解説してきましたが、S/4 HANA Launch Eventでは、「GUI画面も一定期間サポートを続ける」としています。ユーザの再トレーニングがほとんど不要になる等GUIを使うメリットもあります。GUIを使い続けるという選択肢を含めて業務遂行する方法(画面)を"Reimagine"する、というのがS/4 HANAの大事な要素のうちの一つです。
- カテゴリ: S/4HANA
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