はじめに
前投稿「【S/4 HANA】プレスリリースからそのコンセプトに迫る」ではプレスリリース内容からS/4 HANAのコンセプトについてをお伝えしました。その中で「あらゆる内容の実績、予測データをリアルタイムで分析し、シミュレーション、議論ができる姿を目指している」という部分が重要なポイントです。今回はコンセプトから一歩踏み込んだ形で、その実態について迫っていきます。
もっと読む:SAP S/4HANAで何が実現できるのか?
3つの形態
S/4 HANAは以下の3形態で使用可能です。
- オンプレミス
- プライベート・クラウド
- パブリック・クラウド
イベント内ではところどころにクラウドへのこだわりを強く感じる発言がありましたが、オンプレミスも可能だとしています。
S/4 HANAの主なメリット
S/4 HANAの主要メリットとして以下をあげています(日本語に訳しにくい言葉も多く、イベント内の原文のままのせています)。
- Built on SAP HANA
- New SAP Fiori UX for any device (mobile, desktop, tablet)
- Guided Configuration
- Subscription
- 1/10 of data footprint
- 3-7X higher throughput
- Up to 1800X faster analytics
- ERP, CRM, SRM, SCM, PLM in one system
- No lockoing, Paralletism for throughput
- Actual data(25%) and historical
- Unlimited workload capacity
- Predict, recommend, simulate
- HCP extensions
- HANA multi tenancy
- All data: social, text geo, graph, processing
最も目を引くのが"1. Built on SAP HANA"です。S/4 HANAはHANAを基盤として構築しており、HANA以外のDBでは動きません。ABAPでの処理をCode PushdownでHANA側に移し、HANA Liveで分析を容易にしたりと、今までもHANAを基盤とした機能拡張がありました。その点を加速することによって、"5. 1/10 of data footprint", "6. 3-7X higher throughput", "7. Up to 1800X faster analytics"のあたりを実現しているようです。
S/4 HANAの3つの革新
S/4 HANAでは以下の3分野に関しての革新を基軸としています。
- データモデル
- 画面(User Experience)
- システム設定
1. データモデル
イベント内で最も時間をかけて訴えていたのは"1. データモデル"です。下記の3ステップのデータモデル変革をしています。
No. | データモデル革新方法 | 内容 |
---|---|---|
1 | ERPとサテライトシステム*の統合 |
現在のERPとサテライトシステムでは多くのデータ連携をしてマスタやトランザクションを複製しています。イベント内では「データロードの40%をERPとCRMのデータ交換が占めている」と例示しており、1システムに集約することで多重データとデータ連携の冗長性を省くと力説していました。 |
2 | モジュール内でのデータの単純化 | モジュール内で使用するデータモデルを単純化することで、データサイズ圧縮を図ります。会計モジュールの例では、「1つの会計処理で、DBに対して15回更新処理を行っていたのを4回更新まで単純化した」と発表しています。 |
3 | 実績データと過去データの分離 | データを実績データと過去データに分け、実績データをインメモリのアクセスが早い領域に展開することで最適化を図るようです。 |
※耳慣れない言葉でしたが、Hasso Plattner氏はCRMやSRM等のBusiness Suite群を「サテライトシステム」と呼んでいるそうです。
上記の1と2についてが、S/4 HANAの最も革新的な部分と考えています。画面変更と比べてデータモデル変更は広範囲かつコア部分のプログラム書換を伴います。ましてはSAPのアプリケーションは多機能なので、書換の規模は想像がつかない程です。それにもかかわらず刷新をやり遂げた点は、素晴らしい!、としか言いようがありません。
上記の2と3についてですが、会計モジュールのデータサイズ圧縮例として下図のようになるようです。"Traditional DB"と"on HANA"のデータサイズの差は集計データの削除、インデックス削除、データ圧縮に起因しています。
2. 画面(User Experience)
「過去10年間、画面が大きな弱点だった」とイベント内で告白していました。画面は"Completely Fiori"として、マルチデバイス対応のFioriを軸としています。既存のデスクトップを対象としたGUI画面がHTML5ベースのマルチデバイス対応画面に変わる大きな変革です!"Completly"という言葉を使っていますが、プライベート・クラウドについて話している時に「既存のGUI画面はある程度の期間サポートを続ける」と明言していました。パブリック・クラウドはわかりませんが、プライベート・クラウドとオンプレミスではGUI画面を引き続き使うことが可能なようです。
3. システム設定
"Guided Configuration"と呼ばれるWeb画面を使ってシステム設定をするようです。"Guided Configuration"は「完全に新しいアプリケーション」と表現しており、既存のGUI画面とは全く違うもののようです。イベント内のデモでは、設定方法を見せながら「1つの設定で1000以上のIMGステップを実行する」、「設定に関わるコストを最適化する」と解説しています。
最後に
以上が2/4(水)に行われたプレスリリースの解説です。
総括すると「S/4 HANAはあらゆる情報の実績分析、予測、シュミレーションを行うOne Platformとして設計され、既存のシステムとはデータモデル、画面、設定方法が刷新されている」です。
プレスリリースの後にさまざまな情報が出ていますので、今後、その辺についても情報発信する予定です。
- カテゴリ: S/4HANA
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