SAPデータコピーの用途とそのポイントを解説

 2022.10.25  リアルテックジャパン

SAPの特徴のひとつに、同一システム内に、使用用途によって別のクライアントをつくる標準機能があります。しかし標準クライアントコピーでは、色々カスタマイズできないなど制限があり、お客様のニーズに対応できない部分があります。この際に必要となるのがSAPクライアントデータコピーツールです。

本記事では、データコピーの目的、データ移行や機密情報の匿名化ができる多機能コピーツール「Data Sync Manager」の特徴やポイントを解説します。

SAPのデータ構造とデータコピーの用途

SAPでは、同一システム内に使用用途によって別のクライアント(仮想環境)をコピーする機能があります。SAP ERPシステム内で論理的に独立したデータ管理が可能な機能とその環境「クライアント」を指します。

SAPシステムは、土台にリポジトリがあり、その上にクライアント非保存カスタマイズがあります。「クライアント非保存」とは、すべてのクライアントに共通する設定です。プログラムは基本的にクライアント非保存です。仮に100・200・300の3つのクライアントがある場合、クライアント100でクライアント非保存を変更すればクライアント200と300も変更されます。

一方「クライアント依存」とは、そのクライアントでのみ変更が反映される設定です。

構造的にはリポジトリ、クライアント非保存カスタマイズの上に、クライアントが存在します。クライアントは単一ではなく、開発環境、カスタマイズマスタ環境、単体テスト環境、ユーザトレーニング環境など、複数が存在し、さらに目的によって増やせます。

もしクライアントの概念がなければ、目的に応じて複数のサーバを用意し、それぞれにSAPをインストールしなければなりません。クライアントの概念があることで、単一のシステム上に目的に応じて複数の環境を設定できます。そのため複数のサーバをもつ必要がなく、運用コストが抑えられます。

SAP標準クライアントコピーではできない、様々な切口で新しくクライアントを構築する際に必要なのが、SAPクライアントデータコピーツールです。Data Sync Managerは、本番環境からテストや開発などの非本番環境に高速でデータ移行や機密情報の匿名化ができるデータコピーのパッケージです。非本番環境のデータ精度を向上させるだけでなく、コストも削減できます。

Data Sync Manager は多機能で高性能なクライアントコピーを実施するClient Sync、任意のタイミングで必要なテストデータのオブジェクトコピーが可能なObject Sync、機密情報のマスキング作業を行うData Secure、新しいシェルシステムを作成するSystem Builderの4機能で構成されます。それぞれの機能は単独でも利用できますが、プロジェクトに応じて複数の機能を組み合わせれば、より強力なパフォーマンスを発揮します。Data Sync Managerが行うデータコピーは、開発環境構築、データ分析、目的別データ提供に優れています。

SAPデータコピーツール Data Sync Manager
SAPユーザー必見!テスト・トレーニング・データ移行時に機密データを守る方法は?

新しいシェルシステムを作成【開発環境構築】

ソースシステムからデータをコピーして新しいクライアントを構築するData Sync Managerは、完全クライアントコピーはもちろん、最小データあるいは選択したデータだけをコピーして新しいシェルシステムを作り上げます。

本番環境でのリポジトリと、クライアント非依存のデータという、システムの基盤部分のみを完全コピーする機能がSystem Builderです。具体的には、本番環境でのアドオンレポートやプログラムを含んだリポジトリとクライアント非依存データに限った新しいクライアントを作成します。伝票やマスタデータを含まない最小データで構築された非本番環境なので、ディスク容量が抑えられ、本番環境と同レベルの容量は必要ありません。

System Builderで構築した環境に、後述のClient SyncやObject Syncを使ってデータを移行すれば、短期間かつ安全にテスト環境を準備できます。たとえばClient Syncと組み合わせれば、不要なデータを一切排除した非本番環境を作成できます。

クライアント全体ではなく、業務上の項目で移行データを選択して非本番環境にコピーするのが、Object Syncです。Object Syncは最新マスタや価格情報のデータの一部のみをコピーしますが、関連データも同時にコピーできます。

たとえば販売管理における伝票種類に関連するトランザクションデータを選べます。また、マスタでは価格、税率、得意先や仕入先といったさまざまな切り口が用意されているので、細かな設定が可能です。コピーするデータは一件から選択可能ですし、テンプレートを作成すれば、同じオブジェクトを繰り返しコピーできます。

Object Syncは、ピンポイントで有効性の高いデータのみコピーするので、より本番環境に近いユーザトレーニングやテスト環境を整えることができます。

マスタデータのみコピーしデータ削減【データ分析】

Data Sync Managerでは特定のデータのみをコピーして、データ分析にも使えます。Client Syncは完全なクライアントデータコピーのほかに、移行データをさまざまな切り口で選択できる高性能クライアントコピーツールです。たとえばトランザクションデータのみ、マスタデータのみ、特定の会社コードのみといった切り口で範囲を指定できます。

さらに1ヶ月や半年のように、コピーするデータの期間も区切れます。データ間の関連性を考慮したうえでワークフローやログなどの不要なデータは除外し、必要なものだけカスタムします。必要なデータだけをコピーするので、軽量なテスト環境を構築できるほか、作業時間の削減も可能です。

マスキング機能で安全性を確保【目的別データ提供】

マスキング機能で非本番環境における安全性を確保するツールがData Secureです。機密情報や個人情報などのセンシティブな実データを架空のデータに変換し、機密情報をマスキングします。

たとえばターゲットシステムの得意先会社の住所を別の企業に移し、実際には存在しないマスタを自動で作成します。また、得意先マスタの銀行口座情報といった特定情報の削除も可能です。

Data Secureは非本番環境に存在するデータに対して単独で利用できますが、他の機能と組み合わせて使用すれば、さらに利便性が向上します。

たとえば、Client SyncやObject SyncをData Secureに組み合わせる場合、得意先マスタをコピーするタイミングで、得意先会社名がマスキングされます。つまりマスキングデータベースからランダムな会社名に変換され、コピー完了時にはマスキング済みの環境が用意できるのです。

マスキング範囲は、クライアント全体やマスタの一部のみなど、柔軟に対応できます。

まとめ

SAPクライアントデータコピーをする際には、高速かつ精度の高い環境構築が求められます。ユーザーのニーズに合った精度の高いデータを高速で準備できるのがData Sync Managerです。
Data Sync Managerには4つの機能があり、単体もしくは複数の機能を組みあわせて使うことで、開発環境構築、データ分析、目的別データ提供などを可能にします。コピーの際、目的によってデータや対象期間を選定することで移行データ量や作業時間を抑えられるほか、検証環境のためのディスクスペースも削減できます。
SAPクライアントデータコピーには安全で簡単に、高速で新しい環境を整えられるData Sync Managerをぜひご検討ください。

SAPデータコピーツール Data Sync Manager

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