(続)・SAP ERPのサポート終了問題 と 2020(2021年)にサポート終了を迎えた(迎える)製品

 2021.03.17  リアルテックジャパン

昨年は、SAP ERPの2027年までのサポート延長の発表を受けて、SAP ERPのサポート問題が大きく注目されました。弊社も投稿SAPサポート延長と「2025年の崖」問題SAP移行時に考慮すべきポイントを解説で、SAP ERPのサポート終了によって多数の企業が対応を迫られる問題を紹介しました。このようにSAP ERPのサポート問題は度々目にしますが、延長サポートの内容やサポート終了後どうなるのかなどの詳しい情報についてはあまり触れられていません。

そこで本稿では前回からの続編として、SAP ERPのサポート終了についてさらに詳しく言及し、SAP ERPを利用するお客様に役立つ情報を届けたいと思います。またSAP ERPの影に隠れていますが、2020年にサポート終了を迎えた製品・今年にサポート終了を迎える製品は少なくありませんので、そちらも整理してお伝えします。

(続)・SAP ERPのサポート終了問題

昨年の2020年2月にSAPより発表されたサポート延長の内容がどのようなものか、改めて整理したいと思います。

  • SAP ERPを含むSAP Business Suite 7のコアアプリケーションのメインストリームメンテナンス(主流保守)を2027年末まで延長、オプションの延長保守サービスを2030年末まで延長する
  • SAP Business Suite 7のコアアプリケーションは、SAP ERP 6.0、SAP CRM 7.0、SAP SCM 7.0、SAP SRM 7.0と、SAP Business Suite powered by SAP HANAを含む
  • 延長の対象はコアアプリケーションの最新の3つの拡張パッケージのみ。 ERPはEHP6~8が対象とする
  • 2027年末まで契約上の変更はなく追加料金も発生しない
  • 2028年以降の延長保守サービスは現行の保守基準料金に2%の追加料金を支払うことで同様の保守サービス範囲を受けることができる

SAP ERPユーザは少なくとも2年、最大で5年の猶予期間を与えられたことになります。では延長保守サービスを選択しない場合(2028年以降)、または延長保守サービスの期間が終了したあと(2031年以降)はどのようになるのでしょうか。それは今回のSAP Business Suite 7に限らず、カスタマ・スペシフィック・メンテナンス(顧客固有保守)期間に移ることになります。

カスタマ・スペシフィック・メンテナンス(顧客固有保守)とは、主流保守や延長保守の終了後に、一部の製品を除くすべてのSAPアプリケーションに対して自動的に切り替わる有効期限のない保守サービスです。保守契約(Enterprise SupportやStandard Support)に基づき同等の保守料金を支払うことで、引き続き一部のサービス範囲をSAPから受けることができるようになるため、すぐにSAP ERPが利用できなくなるわけではありません。では顧客固有保守期間に切り替わると、現在使用中のSAP ERPがどのくらいサービス範囲が制限されるのでしょうか。主な制限を以下に紹介します。

  • 法改正の変更が提供されない
  • サポートパッケージが提供されない
  • 技術的な更新が保証されない(JAVAやGUIなどのパッチや新しいDB/OS用のカーネルがない)
  • 顧客固有保守開始以降に提供される新しいアップグレードパスが利用できない(ターゲットバージョンへの直接アップグレードが保証されない)
  • 既知ではない問題解決には追加の料金が必要(顧客固有保守の開始以降にリリースされるノートやソリューションは有料のコンサルティングサービス範囲)

逆に以下のようなサービスは引き続き利用することができます。

  • SAPへのインシデント解決依頼
  • SAP Support Portalなどのサポートツールの全機能使用
  • SAP Solution ManagerによるEWAレポート発行
  • 顧客固有保守の開始前に提供されたアップグレードパスを利用したバージョンアップ
  • 既知の問題の解決(顧客固有保守の開始前にリリースされたノートやソリューション)

このように顧客固有保守期間に移ると、SAPより完全にサポートを受けることができなくなります。会計や人事など法改正の対応が必要となるSAP ERPユーザにとってはサポートは必須とも言えます。そのため、SAP ERPユーザには積極的にSAP S/4HANAへの移行を進めることをおすすめします。一方で、移行に慎重なSAP ERPユーザは他のERP製品に切り替えない限り、次の2つの選択肢が考えられます。

  1. 主流保守期間の終了後にSAP S/4HANAへの移行を前提としている場合、延長保守サービスを選択して3年以内にSAP S/4HANAへ移行する
  2. 主流保守期間の終了後も今のSAP ERPを使い続けることを前提としている場合、顧客固有保守を選択してSAP ERPを延命する

ただし、1の場合はSAP S/4HANAの移行計画はそれなりに時間がかかるため、現行のビジネスプロセスへの影響を最小限に抑えるためには早めに移行計画を開始されることをおすすめします。

最後に、SAP ERPのサポート問題はSAP部分のみがフォーカスされていますが、その基盤となるDBやOSのサポートについてはあまり議論されていません。一般的に、SAPはOracleなどのデータベースベンダと契約を結び、SAPユーザはデータベースのランタイムライセンスをSAPより取得しています。しかしSAPがERPのサポート延長を発表しましたが、それはSAPのみであり、つまりデータベースのランタイムライセンスの延長についてはSAPノート2881788にあるとおり現時点では確定していません。2026年以降も同様の契約範囲でデータベースのランタイムライセンスを維持できるのかは、今後SAPより発表を待たなければいけません。

2020年にサポート終了を迎えた製品

昨年にサポートが終了した主要な製品は以下になります*。既にカスタマ・スペシフィック・メンテナンス(顧客固有保守)の期間に移っており、SAPより完全にサポートを受けることができないため、新しいバージョンにアップグレードすることをおすすめします。

*個別の保守方針など詳しくは製品可用性マトリックス参照

BW 7.0X、7.3、7.31、7.4

BW 7.0~7.4は、2020年末に主流保守が終了しており、延長保守サービスは提供されません。そのため、最新のBW 7.5にアップグレードするか、又はSAP BW/4HANAの移行が推奨されます。BW 7.5はSAP Business Suite 7のサポート延長の流れを受けており、主流保守は 2027 年末(延長保守は2030年末)までの予定です。BW/4HANAの製品ラインは、S/4HANAと同様に少なくとも2040 年まで保証される予定です。

※BWはバックエンド層(BW ABAP)とフロントエンド層(BW JAVA)がありますが、当期限はバックエンド層(BW ABAP)が対象です。またSAP Business Suite 7に組み込まれたBW(Embedded BW)は、SAP Business Suite 7の保守期間と同じです。

PI 7.3、7.31、7.4

PI 7.3、7.31、7.4は、2020年末に主流保守が終了しており、延長保守サービスは提供されません。そのため、最新のPI 7.5にアップグレードするか、又はSAP Process Orchestrationの移行が推奨されます。PI 7.5とSAP Process Orchestrationはともに、主流保守は 2027 年末(延長保守は2030年末)までの予定です。注意点として、NW7.5よりデュアルスタックと呼ばれるABAP+JAVAの1インスタンス構成がサポートされなくなったため、PI 7.5にアップグレードするにはABAPとJAVAの2インスタンス構成に分割する作業が追加で必要です。またSAP Process Orchestrationの移行はJAVAの1インスタンス構成となり、ABAPの機能やインタフェースをJAVAに変換する作業が必要となるため、慎重な移行計画が必要です。

EP 7.3、7.31、7.4

EP 7.3、7.31、7.4は、2020年末に主流保守が終了しており、延長保守サービスは提供されません。そのため、最新のEP 7.5のアップグレードが推奨されます。EP 7.5の主流保守は 2027 年末(延長保守は2030年末)までの予定です。

GRC 10.0、10.1

GRC 10.0、10.1は、2020年末に主流保守が終了しており、延長保守サービスは提供されません。そのため、最新のGRC 12.0にアップグレードが推奨されます。GRC 12.0の主流保守は 2025 年末までの予定です。GRC 12.0では大幅に機能が強化されており、最大の特徴は、クラウドアプリケーション(SAP S/4HANA CloudやAriba,、Fieldglass、Concurなど)と統合できるようになった点です。これにより、オンプレミスのGRCからクラウドアプリケーションのアクセス制御や統治/分析ができるようになります。詳細については今後あらためて紹介したいと思います10.0、10.1は、2020年末に主流保守が終了しており、延長保守サービスは提供されません。そのため、最新のGRC 12.0にアップグレードが推奨されます。GRC 12.0の主流保守は 2025 年末までの予定です。GRC 12.0では大幅に機能が強化されており、最大の特徴は、クラウドアプリケーション(SAP S/4HANA CloudやAriba,、Fieldglass、Concurなど)と統合できるようになった点です。これにより、オンプレミスのGRCからクラウドアプリケーションのアクセス制御や統治/分析ができるようになります。詳細については今後あらためて紹介したいと思います。

BI(BusinessObjects) 4.1

BI 4.1は、2018年末に主流保守が終了しており、2020年末にPriority-Oneサポートも終了しました。そのため、後継のBI 4.2、又は最新のBI 4.3のアップグレードが推奨されます。BI 4.2の主流保守は 2022 年末(Priority-Oneサポート2024年末)まで、BI 4.3の主流保守は2025年末(Priority-Oneサポート2027年末)までの予定です。BIプラットフォーム製品は、主流保守が終了したあと、延長保守や顧客固有保守は提供されず、Priority-Oneサポートと呼ばれる追加料金のない制限されたサポート(2年間)に切り替わります。Priority-Oneサポートでは、新しいサポートパッケージやフィックスパックが限定的にしか提供されなくなります(既知のKBAやノートは対応可)。

SYBASE ASE 15.7

ASE 15.7は、2020年末に主流保守が終了しており、延長保守サービスは提供されません。そのため、最新のASE 16.0のアップグレードが推奨されます。ASE 16.0の主流保守は 2025年末までの予定です。また2022年Q4に後継のASE 16.1のリリースが予定されており、ASE 16.1の主流保守は2030年末までの予定です。

その他

これまでの製品と保守方針が異なりますが、SAP GUI 7.50の制限付きサポートが2020年3月末にサポートを終了しており、SAPカーネル 721/721_EXTが2020年末にサポートを終了しています。今後パッチを利用できないため、後継の新しいバージョンへの更新が推奨されます。

2021年にサポート終了を迎える製品

今年にサポートが終了する主要な製品は以下になります。まだこれらの製品を利用している場合、早い段階でバージョンアップの計画と対応を開始することをおすすめします。

SAP S/4HANA 1610

S/4HANA 1610は、2021年12月31日に主流保守が終了する予定です。S/4HANA(オンプレミス版)は1年に1回のペースで新バージョンがリリースされ、各年次バージョンのサポート期間は5年になります。バージョンアップのターゲットは昨年10月にリリースされた最新のS/4HANA 2020になります。バージョン名は従来のリリースされた年と月(YYMM)の形態ではなく、リリース年(YYYY)に変更されました。これはクラウド版のS/4HANAのバージョン名(YYMM)と区別するためと考えられます。またSAP Fiori フロントエンド サーバ(FES)も、従来のFES 2.0、3.0、4.0、5.0、6.0の流れから、昨年に最新のFES 2020の名称でリリースされています。S/4HANAの製品ラインは少なくとも2040年までサポートを保証するとSAPより発表されており、S/4HANAに移行後は、約20年の長期的なサポートのもとでバージョンアップを繰り返していくことが求められます。S/4HANAは進化が早いため、バージョンアップによって、新しい機能を活用して新しいビジネス要件を満たすことができるようになります。S/4HANAのアップグレードのポイントは、また別の機会に紹介したいと思います。

SAP HANA 1.0

HANA 1.0は、2021年6月30日に主流保守が終了する予定です。バージョンアップのターゲットは後継のHANA 2.0になり、最新のHANA 2.0 SPS05が昨年6月にリリースされています。HANA 2.0のサポート方針やアップグレード方法は、投稿【SAP HANAが10周年】HANA 1.0サポート終了まで1年を切るため、HANA 2.0の移行を考えるで詳しく解説しているため、そちらをご覧ください。

Oracle Database 18c

SAP製品ではありませんが、SAPアプリケーションで利用されるデータベースOracle 18cが、2021年6月8日に標準サポートが終了する予定です。Oracle 18cは短期間のサポートとなり、延長サポートは提供されません。そのため後継のOracle 19cがターゲットになります。Oracle 19cは長期サポート対象で、標準サポートが2024年4月まで、延長サポートが2027年4月まで予定されています。ちなみに、今年1月にリリースされた最新のOracle 21cは、現段階でSAPでサポートされる予定はありません。

リアルテックジャパンにご支援できること

SAP ERPからSAP S/4HANAの移行は、ここ数年の様子見から2021年は確実に増えると予想しています。リアルテックジャパンではそれを見据え、SAP S/4HANAに関する導入や移行サービスを拡充してきました。SAP ERPのサポート問題に直面しているお客様は、さまざまな解決シナリオを用意していますので、ぜひ弊社までお問合せください。またSAP製品ごとのサポートの期間や条件は複雑です。今回ご紹介した製品やそれ以外の製品の詳しいサポートに関するお問合せ、さらにバージョンアップ対応を至急必要とされている場合も、弊社までお気軽にご相談ください。

 

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