IoT実現をサポートするERPシステムとは?

 2021.01.20  リアルテックジャパン株式会社

IoT(Internet of Things/物のインターネット)やAI(Artificial Intelligence/人工知能)の発展により、今ERP(Enterprise Resource Planning/統合基幹系システム)のあり方が大きく変化しています。企業システムの根幹を担い、経営の効率化や組織全体での生産性アップを実現してきたERPは、新しいテクノロジーとの融合により新たな付加価値の創出にチャレンジしています。本記事では、そんなERPのトレンドとも言える、IoT実現をサポートするERPシステムについてご紹介します。

従来のERPと次世代のERP、その役割の違いとは

ERPの導入が最初に盛んだったのは1990年台後半から2000年代にかけてのことです。BPR(Business Process Reーengineering/業務プロセス再設計)ブームの真っ只中でした。それまでの業務形態に生産性向上の限界を感じていた企業の多くが業務プロセスの変革へと乗り出し、その際に中心的役割を果たしたのがSAPやOracleのERPシステムでした。

当時、海外でERPを採用したBPRプロジェクトに成功した海外先進企業が多かったことから、日本企業(特に上場企業)では海外の成功企業のベストプラクティスを導入できると考え、ERPの導入に続々と乗り出します。その多くは開発費数億円、導入期間2年以上のビッグプロジェクトとなっています。

つまり、従来のERPの役割は組織全体での生産性向上やコスト削減だったわけです。ERPには経営に欠かせない基幹系システムが統合されていることから、部門間を跨いだデータ連携による業務プロセスの再設計と効率化を実現し、かつ生産性向上によって様々な運用コストを削減するという目的がありました。

一方で、次世代のERPはそれとは決定的に異なる役割を担うようになっています。それが、「顧客向けサービスを提供するためのプラットフォームとしてのERP」という側面です。ちなみにそうしたERPのことを「未来志向型ERP」ともいいます。

従来のERPはそれまで企業が築いてきた業務プロセスや組織文化を踏襲しながら、新しい機能と操作性を実現し、なおかつ導入費用を極力抑えるためのいわば「安定志向型ERP」でした。一方、「未来志向型ERP」では事業部門が主体となり、具体的なビジネス目標や理想を掲げながら、企業が築いてきた伝統に囚われない形でのシステム構築を目指します。

そんなERPの導入によって新しい成長戦略やビジネスモデルの創出に対応できるような「未来志向型ERP」では、従来の統合基幹系システムで実現してきた領域に留まらず、新しいテクノロジーと密接に関わっています。もちろん、IoTも例外ではありません。

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ERP×IoTで何が起こるのか?

では具体的に、従来から存在しているERPに新しいテクノロジーであるIoTが融合されると、どのような現象が起こるのでしょうか?その代表例が製造業における「先回りサービス」です。

製造業ではIoTを導入する際に2つのパターンがあります。1つは「工場内の生産ラインや生産ロボット、ネットワークカメラにIoTを導入するパターン」。そしてもう1つは「製品やサービスにIoTを組み込み、顧客に新しい付加価値を提供するためのプラットフォームとして導入するパターン」です。

これらはどちらも設備または製品にセンサーを搭載してIoT機器化することにより、そこから得られる大量のデータを収集し、IoTプラットフォームで分析した上でERPと連携します。これにより製造業における「先回りサービス」が可能です。

例えば、生産ラインに設置されている生産ロボットに組み込まれたセンサーからデータを収集し、それをIoTプラットフォームに蓄積してリアルタイム分析を行うことで、生産ロボットの稼働状況を常に監視できます。その情報を可視化できるようにERPの生産管理・保全管理システムと連携し、ダッシュボードに生産ロボットの稼働状況を反映すれば、故障の予兆となる情報をいち早く察知できます。

故障情報を察知した生産技術者や保全担当者がフィールドサービスエンジニアと素早く連携を取り、現場に駆けつけて生産ロボットの現状把握と問題箇所の修正を行い、生産途中でロボットを止めることなく高い安定性を維持できるというわけです。これが「先回りサービス」、いわゆる保全活動の「サービターゼーション」とも呼びます。

もう一つ、ERPとIoTを融合した事例を紹介しましょう。多くの建設現場で働く重機は、主にレンタルで利用されています。建設重機レンタルを展開する事業者の中にはすでにIoTを組み込み、サービタイゼーションを実現しているところがあります。

具体的に何をサービスとして提供するのか?それは建設重機の「類まれないパワー」です。サービタイゼーションを分かりやすく説明するにあたり、「ドリルを買う人はドリルが欲しいのではなく、欲しいのは”穴”だ」という有名な話があります。これを建設現場に置き換えるならば、建設重機をレンタルする人は重機そのものではなく、重機が生み出すパワーを欲しがっていると言い換えられます。

そこに着目したサービスがERPとIoTを掛け合わせて、建設重機の推進力データをセンサーから集約し、顧客が消費したパワーに応じて課金するサブスクリプションビジネスモデルです。建設重機に搭載したセンサーからエンジンの回転率や油圧データなど様々なデータを採集し、それらをIoTプラットフォームで蓄積・分析した上でERPダッシュボードに表示させ、情報を記録します。

従来、レンタルする企業は実際の建設重機の台数ごとに料金を支払っていましたが、サブスクリプションビジネスモデルであれば必要な時に必要なだけ重機を動かし、その分の料金だけを支払うのでコストが削減できます。この事例のように、ERPとIoTを掛け合わすことで新しいビジネスモデルが実現できるようになるわけです。

IoTサービスを実現するERPシステムとは

いかがでしょうか?次世代ERPは従来のERPからその役割を大きく変化させ、現在ではビジネス戦略を根底から支える存在ではなく、ビジネスそのものを推進するためのシステムとして進化しています、最後に、IoTサービスを実現するためにはどのようなシステムが必要なのかを考えてみましょう。

前提としてまず重要なのは、ERPが持つリアルタイム性を最大限に高めることです。特に保全活動におけるサービタイゼーションでは一分一秒を争うような現場であり、いかに素早く故障情報を検知できるかが鍵になります。そして、ERPのリアルタイム性を左右するのがデータベースです。情報の出し入れを行うデータベースが最適化されているかどうかが、リアルタイム性の高いERPを実現する鍵になります。

その点で言うと、SAPが新たに提供しているSAP S/4HANAは、SAP独自の超高速インメモリデータベースであPが新たに提供しているSAP S/4HANAは、SAP独自の超高速インメモリデータベースであるSAP HANAをベースにしていることから、他製品よりも圧倒的なリアルタイム性を実現できるERPとなっています。事実、SAP S/4HANAを活用してサービタイゼーションに成功している事例もあります。

また、豊富な連携先もIoTサービスを実現するERPシステムに欠かせない要件です。現在、IoTサービスの実現によるビジネスモデルの変革に少しでも興味を持っている場合は、それを可能にするERPシステムの存在と、SAP S/4HANAにぜひご注目ください。


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