
SAP on Azureの導入を検討中のご担当者様へ。
この記事で分かること
- Microsoft Azureの基本的な特徴
- SAPをAzureへ移行する4つのメリット
- オンプレミスからの具体的な移行手法
- 移行を失敗させないための重要ポイント
- 価値を最大化するSAP on Azureのアプローチ
企業の基幹システムであるSAPのクラウド移行において、有力な選択肢となるのが「SAP on Azure」です。オンプレミス環境から移行することで、コスト最適化や拡張性の確保といったメリットが得られます。本記事では、Azureの基本から具体的な移行手法、成功に導くポイントまでを徹底解説します。SAPシステムをモダナイズし、ビジネスの競争力を高めるためのステップを確認しましょう。
Microsoft Azure(アジュール)とは?提供されるサービスの特徴
Microsoft Azure(アジュール)は、Microsoft社が提供するパブリッククラウドサービスです。世界中に展開されたデータセンターを基盤とし、企業がシステムを構築・運用するための多様なサービスを提供しています。SAPシステムをクラウド化する際にも、強力なインフラ基盤と高い信頼性を持つAzureは、有力な選択肢として多くの企業に採用されています。
Microsoft Azureの主なサービスモデル
Azureでは、企業のニーズに合わせてさまざまなクラウドサービスモデルが提供されています。代表的なサービスモデルは下表のとおりです。
| サービスモデル | 概要 | 特徴と主な用途 |
|---|---|---|
| IaaS(Infrastructure as a Service) | サーバー、ストレージ、ネットワークなどのインフラ環境をインターネット経由で提供するサービス | OSやミドルウェアの自由度が高く、既存システムの移行やカスタマイズが容易 |
| PaaS(Platform as a Service) | アプリケーションの開発・実行に必要なプラットフォームを提供するサービス | インフラの管理が不要で、開発者がアプリケーション開発に専念できる |
| SaaS(Software as a Service) | ソフトウェアをインターネット経由で提供するサービス | ユーザー側でのインストールや保守が不要で、すぐに利用開始できる |
エンタープライズ企業に選ばれるAzureの特徴
多くの企業が基幹システムにAzureを採用する背景には、エンタープライズ向けに最適化されたいくつかの重要な特徴があります。
グローバル規模のインフラストラクチャと高可用性
Azureは世界中に多数のリージョン(データセンター群)を展開しており、広範なグローバルネットワークを持っています。これにより、災害対策(DR)や事業継続計画(BCP)の観点からも、極めて高い可用性と冗長性を確保することが可能です。
最高レベルのセキュリティとコンプライアンス
基幹システムをクラウドに移行する際、最も懸念されるのがセキュリティです。Azureは、Microsoft社が多額の投資を行って構築した強固なセキュリティ基盤を備えています。また、国内外の多数のコンプライアンス認証を取得しており、Microsoft Azureのコンプライアンスに準拠した安全なシステム運用が実現できます。
ハイブリッドクラウド環境の構築が容易
既存のオンプレミス環境とクラウド環境を組み合わせたハイブリッドクラウドの構築が容易であることも、Azureの大きな特徴です。特に以下のようなMicrosoft製品との親和性が高く、シームレスな連携が可能です。
- Windows ServerなどのサーバーOS
- Active Directoryによる統合認証基盤
- Microsoft 365などの各種クラウドサービス
これにより、段階的なクラウド移行を検討している企業にとっても、スムーズなシステム統合を実現できます。
豊富なSAP認定インフラ
AzureはSAPシステムの稼働に最適化されており、SAP社から認定された仮想マシンやストレージが豊富に用意されています。インフラのサイジングや拡張が柔軟に行えるため、将来的なビジネスの成長にも迅速に対応できるプラットフォームとして機能します。
SAPシステムをAzureに移行・運用する4つのメリット
SAPシステムをオンプレミス環境からMicrosoft Azureへ移行することで、企業はビジネスの俊敏性向上やコスト削減など、多くの恩恵を受けることができます。ここでは、SAPをAzure上で運用する4つの主なメリットについて詳しく解説します。
1. インフラコストの最適化と柔軟なスケーラビリティ
Azureに移行する最大のメリットの一つは、インフラストラクチャにかかるコストの最適化と柔軟なリソース管理が可能になることです。オンプレミス環境では、将来のピーク時の負荷に合わせてハードウェアを過剰に準備する必要がありましたが、Azureであれば必要なときに必要な分のリソースを割り当てることができます。
オンプレミスとAzure環境での運用体制の違いは、下表のとおりです。
| 比較項目 | オンプレミス環境 | Microsoft Azure |
|---|---|---|
| 初期費用 | ハードウェア調達やデータセンター確保による高額な投資が必要 | 初期費用なし(利用した分だけの従量課金制) |
| 拡張性(スケーラビリティ) | 機器の追加購入や物理的な設置・設定作業が必要 | 管理画面から数分でリソースの増減が可能 |
| 保守・運用負荷 | 自社でハードウェアの保守や老朽化対応を実施 | 物理インフラの保守・更新はMicrosoftが実施 |
このように、Azureを活用することで無駄なIT投資を抑えつつ、ビジネスの成長に合わせた柔軟なシステム拡張が実現します。
2. 高度なセキュリティとコンプライアンス要件への対応
企業の基幹システムであるSAPには、極めて高いセキュリティ水準とデータの保護が求められます。Azureは、多層的なセキュリティ機能を提供しており、サイバー攻撃やデータ漏えいのリスクを大幅に低減します。
Azureが提供する代表的なセキュリティ上の利点は以下のとおりです。
- 脅威の早期発見と対応を支援する統合セキュリティ管理機能
- 保存データおよび通信中データの強力な暗号化
- 厳格なアクセス制御と多要素認証による不正アクセスの防止
また、Azureは世界各国の政府機関や業界固有の厳しいコンプライアンス基準を満たしています。詳細なコンプライアンス認証の取得状況については、Microsoftのコンプライアンスに関する公式情報で確認することができ、企業は安心して重要な業務データをクラウド上に預けることが可能です。
3. Microsoft製品とのシームレスな連携による業務効率化
SAPシステムと他の業務アプリケーションとの連携は、企業のデジタルトランスフォーメーションを推進するうえで不可欠な要素です。Azure上でSAPを稼働させることで、Microsoft 365やPower BIといった使い慣れたMicrosoft製品群とシームレスに連携できるという大きな強みがあります。
具体的な連携によるメリットとして、以下のような活用方法が挙げられます。
- SAPのデータをPower BIでリアルタイムに可視化し、経営層の迅速な意思決定を支援
- Microsoft Teamsと連携し、承認フローや業務通知をチャットツール上で完結
- ExcelとSAPデータを直接連携させ、使い慣れたインターフェースでデータ入力や分析を実施
これにより、エンドユーザーの利便性が向上し、組織全体の生産性を飛躍的に高めることができます。
4. 高い可用性と強固なディザスタリカバリ(DR)の実現
基幹システムであるSAPの停止は、企業の事業活動に致命的な影響を与えます。Azureは、世界中に展開されたデータセンター群を活用し、高い可用性と事業継続性を担保する仕組みを提供しています。
Azureの可用性ゾーン(Availability Zones)をまたいでクラスタ構成を組むことで、データセンターレベルの障害が発生した場合でも、独立した別のデータセンターでシステムを継続稼働させることが可能です。さらに、アプリケーションサーバーなどにはAzure Site Recovery、データベースにはSAP HANAシステムレプリケーションなどのデータベース固有のレプリケーション機能を組み合わせることで、オンプレミス環境で構築するよりも低コストかつ容易に強固なディザスタリカバリ(災害対策)環境を構築できます。
万が一の自然災害やシステム障害時にも、ダウンタイムを最小限に抑え、ビジネスの継続性を確実に保護できる点は、基幹システムをAzureへ移行するうえで非常に重要なメリットとなります。
SAPをAzure上に移行する具体的な方法とアプローチ
SAPシステムをオンプレミス環境からMicrosoft Azureへ移行するにあたっては、既存のシステム環境や将来のビジネス要件に応じて、適切な移行手法を選択することが重要です。ここでは、代表的な移行アプローチや具体的な手順について解説します。
代表的な移行アプローチ
SAPシステムのクラウド移行では、主に「リホスト」「リプラットフォーム」「リアーキテクト」というアプローチが用いられます。目的や既存システムの状況に合わせて、最適な手法を選択します。各アプローチの特徴は下表のとおりです。
| 移行アプローチ | 概要 | 特徴と適したケース |
|---|---|---|
| リホスト(Lift & Shift) | OSやデータベース、アプリケーションの構成を変更せずに、そのままAzure上の仮想マシンへ移行する手法です。 | 既存の資産を活かせるため、移行期間の短縮やコスト抑制が可能です。早期にクラウド化を実現したい場合に適しています。 |
| リプラットフォーム | SAPアプリケーション自体は維持しつつ、OSやデータベースを最新のものやクラウドに最適化されたもの(例:SAP HANA)に変更して移行する手法です。 | クラウドの恩恵を受けやすく、パフォーマンスの向上が見込めます。データベースの保守期限切れに対応するケースなどで有効です。 |
| リアーキテクト | システム全体のアーキテクチャを見直し、SAP S/4HANAの新規導入(グリーンフィールド)など、アプリケーションの再構築を伴う手法です。 | 最新のテクノロジーを活用して業務プロセスを根本から刷新したい場合に適していますが、移行期間やコストは大きくなります。 |
SAPをAzureに移行する具体的な手順
実際にSAPシステムをAzure環境へ移行する際の標準的なステップをご紹介します。移行プロジェクトを成功させるためには、各フェーズでの綿密な計画と検証が不可欠です。
ステップ1:アセスメントと計画策定
移行プロジェクトの最初のステップは、現状のシステム環境を正確に把握し、移行計画を策定することです。既存のハードウェアリソース、ネットワーク構成、インターフェースなどを調査し、Azure上での適切なサイジングを行います。マイクロソフト社が提供するSAP on Azure の計画と実装のガイドなどの公式ドキュメントも参考にしながら、セキュリティ要件や可用性の設計を固めます。具体的には以下のような項目を実施します。
- 既存システムのインベントリ収集と依存関係の分析
- Azure環境におけるアーキテクチャ設計とサイジング
- ダウンタイムの許容範囲に基づく移行スケジュールの策定
ステップ2:PoC(概念実証)の実施
本格的な移行を開始する前に、PoCを実施して技術的な課題やリスクを洗い出します。Azure上に小規模なテスト環境を構築し、実際のSAPデータを用いてパフォーマンスや運用プロセスを検証します。この段階で、想定通りの処理速度が出ているか、ネットワークの遅延に問題はないかをしっかりと確認することが重要です。
ステップ3:システム構築とデータ移行
検証結果をもとに、本番環境となるAzureインフラストラクチャを構築します。仮想マシン、ストレージ、ネットワークなどのリソースをデプロイし、SAPシステムをインストールします。その後、オンプレミス環境からAzureへデータを移行します。データ移行の手法は、選択した移行アプローチによって異なります。OSやデータベースを変更しないリホストでは、バックアップ/リストアや、データベースのレプリケーション機能(SAP HANAシステムレプリケーションなど)を用いてダウンタイムを抑えた移行が可能です。一方、データベースをSAP HANAへ変更するリプラットフォームでは、SUMのDMO(Database Migration Option)などSAPが提供する移行ツールを用いた、データ変換を伴う移行が必要となります。
ステップ4:テストと切り替え(カットオーバー)
データ移行が完了した後は、システム全体が正常に稼働するかどうかの総合テストを実施します。機能テスト、パフォーマンステスト、インターフェーステストなどを経て、問題がないことを確認します。最後に、事前に計画した移行リハーサルに従って本番環境への切り替え(カットオーバー)を行います。切り替え時のダウンタイムを最小化するためには、事前の綿密なリハーサルが鍵となります。
SAPのAzure移行を成功に導くための重要ポイント
SAPシステムをMicrosoft Azureへ移行するプロジェクトは、企業の中核業務に関わるため、非常に難易度が高く慎重な進め方が求められます。移行プロジェクトをトラブルなく成功に導くためには、以下の重要なポイントを押さえておく必要があります。
事前アセスメントと綿密な計画の策定
移行プロジェクトにおいて最も重要なのは、現状のシステム環境を正確に把握し、綿密な計画を立てることです。既存のSAPシステムのデータ量、アドオンの数、連携している周辺システムなどを詳細に分析し、移行にかかる期間やコストを正確に見積もる必要があります。
また、システム移行に伴うダウンタイムの許容範囲を業務部門と合意し、通常業務への影響を最小限に抑える移行スケジュールを策定することが不可欠です。
適切なインスタンスとストレージの選定
Azure上でのパフォーマンスを最適化し、安定した稼働を実現するためには、SAPの要件に合致した仮想マシンやストレージを選択することが重要です。下表のとおり、用途や要件に応じて最適なリソースを選定します。
| リソースの種類 | 選定のポイント |
|---|---|
| 仮想マシン | SAP HANAのメモリ要件やCPU要件を満たす、SAP認定のAzure仮想マシンシリーズ(Mシリーズなど)を選択します。 |
| ストレージ | データベースの厳しいI/Oパフォーマンス要件を満たすため、Premium SSDやUltra Disk Storageなどを適切に組み合わせます。 |
| ネットワーク | オンプレミス環境や他拠点との安全で高速な通信を確保するため、専用線接続サービスの導入を検討します。 |
セキュリティとガバナンスの強化
クラウド環境へ移行するにあたり、セキュリティ対策の再評価と再設計は欠かせません。Azureが提供する高度なセキュリティ機能を活用し、ゼロトラストアーキテクチャに基づいたアクセス制御を実装します。
Microsoftの公式ドキュメントでも推奨されているように、Microsoft Entra ID(旧Azure Active Directory)を用いた認証基盤の統合や、脅威の継続的な監視を行う仕組みを導入することで、エンタープライズレベルの堅牢なセキュリティを担保できます。
経験豊富なパートナー企業の選定
SAPシステムのAzure移行は、インフラとアプリケーションの双方に関する高度な専門知識を要するため、自社の人材のみで完結させることが難しいケースが少なくありません。そのため、SAPとAzureの双方に深い知見を持ち、移行実績が豊富なパートナー企業を選定することが成功の鍵となります。
パートナー企業を選定する際は、以下のポイントを確認することをおすすめします。
- SAP on Azureの移行実績と専門的な認定資格の有無
- 移行後の運用保守や監視サービスの提供範囲
- トラブル発生時のサポート体制と対応スピード
信頼できるパートナー企業と強固な協力体制を築くことで、予期せぬトラブルを未然に防ぎ、クラウドのメリットを最大限に引き出すスムーズな移行を実現できます。
SAP on Azureに関するよくある質問
SAPをAzureに移行する期間はどのくらいかかりますか?
移行するシステムの規模や複雑さによりますが、一般的には数ヶ月から1年程度かかります。
Azureへの移行後、セキュリティは安全ですか?
Azureは高度なセキュリティ機能を提供しており、適切な設定を行うことで安全に運用できます。
既存のライセンスはAzureでも使用できますか?
条件を満たせば、既存のSAPライセンスをAzure環境に持ち込んで使用することが可能です。ただし、移行先の環境ではハードウェアキーが変わるため、ライセンスキーの再取得が必要です。
まとめ:メリットを最大化するSAPのAzure移行を進めよう
SAPをAzureに移行することで、コスト削減や拡張性の向上、セキュリティの強化といった多くのメリットを得られます。移行を成功させるためには、事前の綿密な計画と適切なアプローチの選択が重要です。
当社はSAPのスペシャリストとして、豊富な知見と実績をもとに、最適なソリューションをご提案します。SAPに関するご相談やお見積りのご依頼は、ぜひお気軽にリアルテックジャパンにお問い合わせください。
【本記事の監修体制について】
執筆:リードプラス株式会社
監修:リアルテックジャパン株式会社SAPソリューション事業
この記事は、SAP導入プロジェクトの豊富な経験を持つ当社の専門部門が内容を精査し、 以下の最終承認プロセスを経て公開しています。
最終監修責任者:リアルテックジャパン株式会社 代表取締役社長 松浦 一哉
企業の代表として、お客様の課題解決に繋がる有益で正確な情報発信に責任を持って取り組んでまいります。
- カテゴリ: SAP BTP・クラウド基盤
- キーワード:SAP BTP・クラウド基盤
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