1/6 概要編:S/4HANA, Vora & Spark on AWSから生まれる価値

 2016.07.29  リアルテックジャパン

現実世界のデジタル化の先

「Pokemon GO」の爆発的人気で世界中を騒がせています。「Pokemon GO が、米国の夕方の公園の風景を一変させていた」の風景は信じがたいほどです。スマホを通じてシステムと現実世界とがリンクしており、古いゲームの経験しかない筆者には時代の進化を感じさせます。
現実世界の情報をデジタル化するとデータが膨大な量に増えます。それらビッグデータを扱う基盤としてデファクトスタンダードともいえるSparkがあり、Sparkと連携するHANA Voraがあります。今回は、それらを活用して、ERPだけではできない新しい価値を生み出すことにフォーカスしました。本記事および以下の記事で「S/4HANA, VoraとSparkから生まれる価値」として検証内容について解説します。

1/6 概要編:S/4HANA, Vora & Spark on AWSから生まれる価値【本記事】

2/6 収集・蓄積:S/4HANA, Vora & Spark on AWSから生まれる価値

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3/6 抽出・統合:S/4HANA, Vora & Spark on AWSから生まれる価値

4/6 機械学習:S/4HANA, Vora & Spark on AWSから生まれる価値

5/6 見える化:S/4HANA, Vora & Spark on AWSから生まれる価値

6/6 SNS連携:S/4HANA, Vora & Spark on AWSから生まれる価値

※弊社は 「SAP on AWS の CoE」パートナーとして「共同検証プログラム」に参加しました。今回の内容は「共同検証プログラム」として実施した結果です。このような貴重な機会を賜りましたこと、アマゾンウェブサービスジャパン株式会社様にはこの場を借りてお礼申し上げます。

新しい価値追求の背景

SAP社がERP(R/3)を日本で販売してから20年以上が経ちました。ERP導入は、基幹情報見える化や業務効率化などに一定の役割を果たしてきました。導入当初と比べ運用改善によって、やれることや組織への貢献度が多かれ少なかれ増えているはずです。ERPを代表とする業務システムが成熟期を向かえ改善余地が少なくなる一方で、黎明期にある「ビッグデータ」と呼ばれる分野があります。「企業IT動向調査報告書2016」によると日本のビッグデータ活用企業は6.8%と、先進的な企業のみに普及している状況です。
センサー等の技術進歩によりヒトやモノの様々な現実世界の情報をデジタルに管理することが容易になりました。それらビッグデータと呼ばれる情報は、多様性・情報量の多さ・変化の早さといった特徴から、管理方法が既存システムとは大きく異なります。その上、相対的に歴史が浅いため必要なノウハウや人材育成など様々な点で発展途上にあります。これらは、既存のシステム・技術では、活用できなかった分野だからこそ、新たな発見・難しかった業務(処理全自動化等)の実現等の価値・可能性が眠り、他社との差別化の源泉となり得ます。このような状況を鑑みて「S/4HANA, VoraとSparkから生まれる価値」をテーマに以下の評価を行いました。

1. 現実世界の情報を収集・蓄積・分析・フィードバックという管理サイクルがシームレスに実施できること。

2. ERPおよびビッグデータを併せてリアルタイムに分析・機械学習が可能なこと。

3. 基盤およびサービス構築の早さおよび、その柔軟性・拡張性が担保されていること。

検証シナリオ

検証シナリオとして心臓ペースメーカーを取り扱う医療機器商社をモデルとしました。

心臓ペースメーカーの医療機器商社は一般的に以下の商流です。

厚生労働省のサイトに詳しい医療機器流通に関する情報がありますので参考にして頂ければと思います。

Medical WholeSale.jpg

心臓ペースメーカーは単価が高いため、在庫のコントロールが難しいです。過剰在庫による廃却ロスと在庫不足による機会損失の狭間で、精度の高い需要予測が求められます。一方で、患者までの距離が遠く、患者や埋め込まれたペースメーカーの情報管理が難しいです。

そのような状況でIoT等を活用して、患者に埋め込まれた心臓ペースメーカーから得られる不整脈イベント、心不全に関する診断情報、バッテリー情報などをクラウド上で蓄積し、患者・医療機関・医療機器商社がそれぞれ活用できるようにします。そして、最終的に患者のQOL(Quality of Life)向上を目指します。

IoT Medical.jpg

処理の流れ

心臓ペースメーカーから不整脈イベント、心不全に関する診断情報、地理情報、バッテリー情報などを収集して、ERPの情報と併せて分析をします。分析の結果をSNSで患者へとフィードバックします。詳しくは、以下の流れです。

Process0 All.jpg

実装アーキテクチャ

実装アーキテクチャとして以下のシステム構成にしました。個々の機能をマイクロサービスとして、AWSとSAPのサービス、HDFS系ソリューションで設計・実装しています。

「マイクロサービス」は簡単に言うと小さなサービスでSAP社も「これからはマイクロサービス」と公言し、製品戦略を組み立ています。「マイクロサービス」について詳しくはリンク先を参照ください。

AWS Architecture.jpg

システムと現実世界の壁が薄くなった

今回の検証を通じて感じたのは、システムと現実世界の壁が非常に薄くなったという点です。クラウドの登場などにより、技術水準が現実世界の情報量を扱えるレベルに追いついてきています。

本記事では概要レベルに留めましたが、次回以降で現実世界の情報を具体的にどうデジタル化・処理して、新しい価値に結びつけていくかを説明していきます。ご期待ください。


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