SAP移行時に考慮すべきポイントを解説

 2021.02.12  リアルテックジャパン株式会社

現地時間で2020年2月4日、独SAPはSAP S4/HANAの保守サービスに対する2040年末までのコミットメントを発表したのと同時に、SAP Business Suite 7のコアアプリケーションとなる、SAP ERP 6.0を含む製品のメインストリームサポートを2027年末まで延長すると発表しました。さらに、それに続くオプションとして延長保守サービスを2030年末まで提供します。※SAP Business Suite 7のコアアプリケーションには、SAP Customer Relationship Management 7.0、SAP Supply Chain Management 7.0、SAP Supplier Relationship Management 7.0と、SAP Business Suite powered by SAP HANAも含まれます。

これらのアプリケーションの保守サポートが延長されたことにより、ひとまずSAP 2025年問題は回避できました。しかしながら、現行のSAP環境を2030年まで運用するか、あるいは新しい基幹システムへ移行するかという議論が終わったわけではありません。延長保守サービスを考慮しなければ、猶予期間が延びたのはたった2年なのです。

そこで本記事では、SAP環境のデータ移行に向けた対策や準備、課題などについて解説します。悩めるSAPユーザー企業のIT管理者の方は、ぜひ参考にしてください。

SAPソリューション移行は上層部への説明が大きな問題

SAP 2025年問題とは、SAP Business Suite 7のメインストリームサポートが2025年末に終了することで、日本のSAPユーザー企業の中で起こり得る基幹システム移行に係わる諸問題を意味します。海外企業と比較すると、日本企業の中で稼働している基幹システムと業務プロセスの結びつきは非常に強く、おいそれと移行できるものではなく、SAPも例外ではありません。

メインストリームサポートの終了時期が2027年末に延長され安堵しているIT管理者は多いものの、2025年問題から2027年問題に切り替わったに過ぎず、油断ならない状況にあることは変わらないのです。では、SAPソリューション移行の果たして何が問題なのでしょうか?

以前ならば基幹システムの刷新に5年以上の期間を費やすケースはが少なくありませんでしたが、現在では1年間程度で移行を完了させることは技術的に難しくありません。にもかかわらず、多くの企業がSAP環境のデータ移行を問題視しているのは、IT管理者が上層部へその必要性を説明するための材料が少ないからです。

SAPは企業の基幹システムとして、全社的なマスタデータや業務データの中心に存在するシステムです。つまりは、企業の心臓部分を別のシステムに入れ替えることになるためその重要性は極めて高いと言えます。しかしながら、SAPのメインストリームサポートが終了するという単純明快な理由であっても、環境維持のためだけの投資では、上層部の理解を得ることが難しいのも事実です。

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一方で、SAPは基幹システムであり、業務プロセスの結びつきが非常に強く、データ移行には一定の業務改革が伴います。言い換えるとこれは、新しい企業体質へ生まれ変わるようなものなのです。

もちろん、SAPソリューションはこれまでも幾度とバージョンアップを繰り返してきました。その都度IT管理者は対応に追われ、想定外のコストに頭を抱える上層部も多かったかもしれません。SAPソリューションの完全移行となると、今までのバージョンアップの比ではない変化が伴います。これが、SAPを運用する企業のIT管理者を最も悩ませている問題というわけです。

SAPユーザー企業が乗り越えるべき5つの課題

上記に解説したSAP環境におけるデータ移行の問題点も踏まえて、SAPユーザー企業が今後乗り越えるべき課題をいくつかご紹介します。

課題1. SAP ERPからSAP S/4 HANAへ移行すべき理由の創出

SAP S/4 HANAへの移行が必要だとは誰もが理解しています。しかしながら、自社状況を踏まえた上で上層部を説得するような理由(ストーリー)を作る必要があります。多くのSAPユーザー企業は、会計機能中心に導入していることから不満が少なく、安定稼働していて社内の評判も良好、そのためこのタイミングで移行の理由を用意するのがなかなかに難しい課題です。

この状況下でSAP S/4 HANAへの移行を上申しても、上層部からはSAP都合に一方的に合わせなければいけないように映るため、説得が難しくなっています。

課題2. 既存の基幹システム機能をそのまま移行すべきか、刷新すべきか

SAPソリューション移行で理想なのは、可能な限り新ソリューションが備えている機能をフル活用し、業務プロセスのシステムへの依存性を解くことです。しかし、前述の課題があり、移行の理由とタイミングを明確にできないため、具体的な検討に入れないケースが多いでしょう。

課題3. IT部門にSAPソリューション移行体制を組む

昨今は、デジタルトランスフォーメーション(DX)対応によるAI・IoTといった新技術を採り入れ、仮説検証を繰り返している企業も多いでしょう。IT部門はDXに手いっぱいになり、SAPソリューション移行体制を上手く組めない現状にあります。

課題4. 移行に必要なSAPコンサルタントを確保する

IT業界は慢性的な人材不足にあり、SAP市場ではそれが顕著に表れていることかSAPコンサルタントの価格高騰をもたらしているもの事実です。ベンダー丸投げでSAPを導入した企業では、新たに環境移行の相談に乗ってくれるベンダーやコンサルタントを見つけることも困難です。

課題5. SAPを導入・移行した経験を持つ人材を確保する

多くのSAPユーザー企業は、10年以上前にシステムを導入したため、当時の経験を持つ人材が社内にいなくなっている点も課題とされています。そのため、データ移行のプロジェクトを推進する上でも、経験を持った人材の確保は非常に重要であり、プロジェクトを万全に進める上では不可欠な要素となります。

SAPソリューション移行を失敗しないためには?

やはりまず大切なことは、データ移行にあたり上層部の理解を得ることです。そのためにも、IT管理者自身がSAP S/4 HANAのビジネス面での有効性を十分に理解し、業務プロセスの改革や企業が進めるべきデジタルトランスフォーメーションの重要性とシステムの役割を説明しなければいけません。

その上で、信頼のおけるSAPコンサルタントを早急に見つけることが非常に重要です。自社が抱える課題を理解し、環境のアセスメントを適切に行い、最も効率的な移行プロセスを組める優秀なコンサルタントは非常に貴重です。

SAP環境のデータ移行を失敗させないためにも、経験豊富で優秀なコンサルタントを選定し、万全なプロジェクト体制の構築を目指してください。


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