SAPシステムのデータ連携時のポイント

 2019.08.22  リアルテックジャパン株式会社

グローバルシェアNo.1のSAP ERPソリューション。1992年7月に最初のERPソリューションとなる「SAP R/3」がリリースされて以降、SAPは世界の先進企業の統合的ITシステム環境の構築を支援し続けてきました。近年では「SAP S/4HANA」や「SAP Business by Design」などERPソリューションも多様化し、大企業はもちろん中小企業にとっても有効的なシステムを提供しています。

本稿では、そんなSAPシステムのデータ連携についてお話します。SAP ERPを導入して統合的ITシステム環境を構築しても、既存システムの必要性が消えるわけではなく、むしろSAP ERPと連携することでより高い効果を得られることもあります。

さらには、ビジネスモバイルの活用によってSAP ERPを適用できるシーンも拡大しているため、SAP ERP導入とデータ連携はセットと考えてよいでしょう。そのポイントについて確認していきます。

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SAPシステムのデータ連携例

まずは、SAP ERPがどういったシステムとよく連携されているのかをご紹介します。

フロントシステム

スマートフォンやタブレットといったモバイル端末は、従来単なる連絡手段のためのツールとして使用されてきましたが、現在ではあらゆるシーンでビジネスに深くかかわっています。

たとえば営業部門ではSAP ERPの在庫情報と連携し、商品やカラーバリエーションごとの在庫状況や納期回答などをその場で行うことができます。製造現場では生産ラインにSAP ERPと連携したタブレットを設置することで、出庫確認をリアルタイムに実施できるでしょう。

電子帳票システム

日々の業務の中で基幹システムから出力される帳票類は法令によって保存期間が定められており、さらに帳票類の控え等を含めるとその量は膨大になります。そのため電子帳票システムによって大量の帳票データを保存するニーズが増えています。SAP ERPから日々生成される大量の帳票類を電子帳票システムに保存されるようにデータ連携すれば、帳票を適切に保管しながらライフサイクルを管理することも可能です。

ワークフローシステム

SAP ERPにもワークフローを実現するアプリケーションは備わっていますが、すでに使用しているワークフローシステムがあればそれを流用することで開発コストを低減し、工数も削減できます。そのためワークフローシステムをSAP ERPとデータ連携し、SAP ERP上でワークフローが構築できるようにする事例も多いでしょう。

SAPのワークフロー機能について」もご参考にしてください。

BI(Business Intelligence)

SAP ERPなどのERPソリューションを運用するメリットの1つが「社内のあらゆる情報を一元的に管理し、分析して情報活用を促進できる」ということです。そのためには高度なBIツールと連携し、社内のあらゆる情報を分析することが大切です。

EDI(Electronic Data Interchange)

企業にとって受発注業務を電子化するEDIシステムは最重要インフラの1つであり、SAP ERP導入後もその環境を変えることはできません。そこでSAP ERPと連携することで受発注データをもとに様々な業務アプリケーションと連携して、顧客との取引を大幅に効率化できます。

この他にもSAP ERPとデータ連携することでその利便性が向上したり、ビジネス課題を解決できるシステムはたくさんあります。

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SAPシステムのデータ連携のポイント

では、SAP ERPと他のアプリケーションでデータ連携を行う際はどういったポイントに注意すればよいのでしょうか?まず注意すべきことが「連携データを絞る」ということです。たとえばSAP ERPとBIツールを連携するにあたって、SAP ERPから生成されるすべてのデータを連携することは現実的な話ではありません。

BIツールによって情報資産を分析するということは、特定のビジネスニーズがありそれを満たすためにBIツールを使用します。そのため、分析に必要なデータの種類や量はある程度決まっており、それに応じて適切なデータのみをSAP ERPから抽出することが大切です。

もう一つの重要なポイントは「2025年SAPサポート期限終了問題」を考慮することです。SAP ERP各ソリューションは2025年にサポート期限が完全に終了するため、それに伴ってSAP S/4HANAに移行するか既存のSAP ERPを延命するかなどの処置を取る必要があります。

SAP S/4HANAは、従来のSAP ERP各ソリューションとは大きく異なったアーキテクチャを持っており、データ連携についても既存の方法が、そのままでは適用できない可能性があります。従って、2025年のサポート期限終了を考えると、これからのデータ連携の方法を慎重に検討する必要があります。

SAP S/4HANAとはどんなERPソリューションなのか?

SAP S/4 HANAとは、SAP HANAを構築プラットフォームとして稼働するSAP ERPソリューションを指します。インメモリデータベースを全面的に採用するため、データ処理が高速になるのはもちろんこと、従来のSAP ERPソリューションに比べて次のような違いを持っています。

SAP HANAに合わせてアーキテクチャを再構築している

SAP S/4 HANAはデータベースにSAP HANAを採用することだけで性能向上を図ったわけではありません。それならば、他のERPソリューションをSAP HANAで構築するのと同じことです。SAP S/4 HANAではその能力を最大限に引き出すためにSAP ERPソリューションのアーキテクチャを全面的に再構築し、データモデルは大幅にシンプル化されています。

ユーザーエクスペリエンス設計の応答性が向上している

従来のSAP ERPソリューションは機能別にまとまった画面で設計されており、業務処理を行うにあたって多くの画面を行き来きする場合も多くありました。その点SAP S/4 HANAでは業務を行うユーザーとその役割ごとに画面インターフェスが再設計されているため、画面の行き来が大幅に少なくなっています。たとえば特定の業務においては、10画面から4画面で業務が完了できるよう設計されています。

コアに機能を統合している

もう一つのポイントはPrinciple of Oneという原則にもとづいて、SCMやCRMなどのシステム間での重複をなくしながらコア範囲を再定義している点です。たとえば従来のSAP ERPソリューションでは品目コードは最長18桁でしたが製造業では桁が足りなくなる場面も多く、40桁の品目コードをサポートしている機能を業種別ソリューションとして別途提供していました。これがSAP S/4 HANAでは標準機能として提供されます。

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