
企業の基幹システムとして広く導入されているSAPですが、真価を発揮するには周辺システムとの連携が不可欠です。本記事では、SAPとデータ連携を行う重要性や成功のポイント、具体的な連携システムの例を解説します。システム間をシームレスに連携させることで、業務効率化やデータの一元管理が実現できます。
この記事で分かること
- SAPと既存システムをデータ連携する重要性
- フロントシステムなど具体的な連携システムの例
- データ連携を成功に導くための最適化のポイント
- 次世代SAPアーキテクチャが連携に与える影響
- 円滑に連携を進めるための専門家の活用方法
連携に課題を感じている方や、次世代SAPへの移行を検討している方はぜひ参考にしてください。
SAPシステムにおけるデータ連携の重要性
グローバルで高いシェアを誇るSAP ERPソリューションは、1992年に最初のERPソリューションとなる「SAP R/3」がリリースされて以降、世界の先進企業の統合的ITシステム環境の構築を支援し続けてきました。近年では「SAP S/4HANA」などERPソリューションも多様化し、大企業はもちろん中小企業にとっても有効なシステムを提供しています。
SAP ERPを導入して統合的なITシステム環境を構築したとしても、既存システムの必要性が消えるわけではなく、むしろSAPシステムと連携することでより高い効果を得られることも少なくありません。ここでは、SAPシステムにおけるデータ連携がなぜ重要視されているのか、その背景について詳しく解説します。
なぜ既存システムとの連携が必要なのか
企業がSAPシステムを導入する際、すべての業務をSAPの標準機能だけで完全に網羅することは現実的ではありません。企業には独自の商習慣や長年培ってきた業務プロセスが存在し、それらを支える周辺システムやレガシーシステムがすでに稼働しています。そのため、SAPシステムと既存システムを適切にデータ連携させることが、業務の連続性を保ちながら全体最適化を図るための鍵となります。
既存システムと連携すべき主な理由は、下表のとおりです。
| 連携の目的 | 詳細とメリット |
|---|---|
| 専門システムの強みの活用 | 各部門に最適化された既存の専門システム(生産管理や人事管理など)の利便性を維持しつつ、中核となる財務やリソース情報をSAPに集約できます。 |
| データ入力の二度手間防止 | システム間でデータを自動連携させることで、手作業による二重入力のミスを防ぎ、現場の業務負荷を大幅に削減します。 |
| リアルタイムな経営状況の可視化 | 周辺システムで発生した受発注データなどを即座にSAPへ反映させることで、精度の高い情報に基づいた迅速な経営判断を支援します。 |
このように、SAPシステムの導入効果を最大化するためには、既存のIT資産を有効に活かしながら、各システム間でシームレスなデータ連携基盤を構築することが不可欠です。
ビジネスモバイル活用による適用シーンの拡大
近年、スマートフォンやタブレットといったモバイル端末は、単なる連絡手段のためのツールではなく、あらゆるビジネスシーンに深くかかわっています。ビジネスモバイルの活用によってSAPシステムの適用シーンが大きく拡大しているため、SAPシステムの導入とモバイル端末へのデータ連携はセットで検討すべき重要な要素となっています。
モバイル活用によって広がるSAPシステムの適用シーンには、以下のようなものがあります。
- 営業部門におけるリアルタイムな在庫確認と顧客への納期回答
- 製造現場や倉庫でのタブレットを用いた迅速な出庫確認や検品作業
- 外出先や移動中からのワークフロー承認や経費精算の申請
たとえば営業担当者が外出先からモバイル端末を通じてSAPシステムの最新データにアクセスできれば、商品やカラーバリエーションごとの在庫状況をその場で確認でき、顧客満足度の向上に直結します。また、現場の作業員がモバイル端末から直接データを入力してSAPシステムと連携させることで、情報のタイムラグがなくなり、業務全体のスピードと正確性が飛躍的に向上します。
SAPシステムと連携すべき主なシステム例
まずは、SAPシステムがどういったシステムとよく連携されているのかをご紹介します。各システムと連携する主な目的やメリットは、下表のとおりです。
| 連携システム | 主な連携目的とメリット |
|---|---|
| フロントシステム | モバイル端末からリアルタイムに在庫確認や入力作業を行い、業務効率化を実現します。 |
| 電子帳票システム | 膨大な帳票データを適切に保管し、ペーパーレス化とコンプライアンス強化を推進します。 |
| ワークフローシステム | 既存の承認ルートを活かし、開発コストを抑えながらシームレスな業務プロセスを構築します。 |
| BIツール | 蓄積されたデータを多角的に分析・可視化し、迅速な経営の意思決定を支援します。 |
| EDIシステム | 受発注業務を自動化し、ヒューマンエラーの防止とリードタイムの短縮を図ります。 |
フロントシステム
スマートフォンやタブレットといったモバイル端末は、従来単なる連絡手段のためのツールとして使用されてきましたが、現在ではあらゆるシーンでビジネスに深くかかわっています。
たとえば営業部門ではSAPシステムの在庫情報と連携し、商品やカラーバリエーションごとの在庫状況や納期回答などをその場で行うことができます。製造現場では生産ラインにSAPシステムと連携したタブレットを設置することで、出庫確認をリアルタイムに実施できるでしょう。
フロントシステムと連携する主な適用シーンは、以下のとおりです。
- 営業担当者による外出先からのリアルタイムな在庫確認や見積作成
- 製造現場におけるタブレットを活用した実績入力や出庫確認
- 保守点検業務での現場からの直接データ入力やマニュアル参照
このように、モバイル端末から直接SAPシステムへアクセスできる環境を整えることで、業務効率化とデータ入力のタイムラグ解消が期待できます。
電子帳票システム
日々の業務の中で基幹システムから出力される帳票類は法令によって保存期間が定められており、さらに帳票類の控え等を含めるとその量は膨大になります。そのため電子帳票システムによって大量の帳票データを保存するニーズが増えています。
SAPシステムから日々生成される大量の帳票類を電子帳票システムに保存されるようにデータ連携すれば、帳票を適切に保管しながらライフサイクルを管理することも可能です。ペーパーレス化を推進し、監査対応や検索性の向上といったコンプライアンス強化にも大きく貢献します。
ワークフローシステム
SAPシステムにもワークフローを実現するアプリケーションは備わっていますが、すでに社内で使用しているワークフローシステムがあればそれを流用することで開発コストを低減し、工数も削減できます。そのためワークフローシステムをSAPシステムとデータ連携し、SAPシステム上でシームレスに承認プロセスが回るように構築する事例も多いでしょう。
既存のワークフローシステムと連携することで得られるメリットは、下表のとおりです。
| メリット | 詳細 |
|---|---|
| ユーザー教育コストの削減 | 従業員が使い慣れた既存のインターフェースをそのまま利用できるため、新たな操作教育が不要になります。 |
| 導入期間の短縮 | SAPシステム側で複雑な承認ルートを再構築する必要がなく、既存の仕組みを活かして短期間で連携が可能です。 |
このように、自社の業務プロセスに適した既存システムを活かすことは、システム定着化の観点でも非常に有効です。
BI(ビジネスインテリジェンス)ツール
SAPシステムなどのERPソリューションを運用するメリットの1つが、社内のあらゆる情報を一元的に管理し、分析して情報活用を促進できるということです。そのためには高度なBIツールと連携し、社内のあらゆるデータを多角的に分析することが大切です。
BIツールとの連携により、経営層から現場の担当者まで、それぞれの視点で必要なレポートをリアルタイムに可視化できるようになります。蓄積されたデータを迅速に経営の意思決定に活かすことができるため、企業の競争力強化に直結します。
EDI(電子データ交換)システム
企業にとって受発注業務を電子化するEDIシステムは最重要インフラの1つであり、SAPシステム導入後もその環境を変えることは容易ではありません。そこでSAPシステムと連携することで受発注データをもとに様々な業務アプリケーションと連携して、顧客や取引先との取引を大幅に効率化できます。
EDIシステムとSAPシステムをデータ連携する際の主なポイントは、以下のとおりです。
- 受注から出荷、請求までのプロセスを自動化し、手入力によるヒューマンエラーを防止する
- 取引先ごとの異なるデータフォーマットを吸収し、SAPシステムへスムーズに取り込む仕組みを構築する
- リアルタイムなデータ連携により、サプライチェーン全体の可視性を高める
受発注業務の自動化は、業務の正確性向上だけでなく、大幅なコスト削減とリードタイムの短縮をもたらします。この他にもSAPシステムとデータ連携することでその利便性が向上したり、ビジネス課題を解決できるシステムはたくさんあります。
SAPシステムのデータ連携を成功に導くポイント
SAP ERPと他のアプリケーションでデータ連携を行う際は、いくつか注意すべきポイントがあります。システム間の連携をスムーズにし、ビジネスへの効果を最大化するための重要な要素を確認していきましょう。
連携するデータの種類と量を最適化する
まず注意すべきことが連携データを絞るということです。たとえばSAP ERPとBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを連携するにあたって、SAP ERPから生成されるすべてのデータを連携することは現実的な話ではありません。
BIツールによって情報資産を分析するということは、特定のビジネスニーズがありそれを満たすためにBIツールを使用します。そのため、分析に必要なデータの種類や量はある程度決まっており、それに応じて適切なデータのみをSAP ERPから抽出することが大切です。不要なデータまで連携してしまうと、処理速度の低下やシステム負荷の増大を招く恐れがあります。
システムのサポート期限と次世代アーキテクチャへの対応
もう1つの重要なポイントは、2027年のSAPサポート期限終了問題を考慮することです。これまで主流であった「SAP ERP 6.0」の標準サポートは2027年末に終了することが発表されています。それに伴って次世代システムである「SAP S/4HANA」に移行するか、既存のシステムを延命するかなどの処置を取る必要があります。
サポート期限終了に伴う今後の選択肢は、下表のとおりです。
| 選択肢 | 概要とデータ連携への影響 |
|---|---|
| SAP S/4HANAへの移行 | 次世代アーキテクチャに対応した新しい連携方式の再設計が必要となります。 |
| 延長サポートの利用 | 条件を満たせば2030年末まで延長可能ですが、あくまで一時的な延命措置となります。 |
| 他社ERP製品への切り替え | 連携先システムも含めた、全社的なデータ連携基盤の抜本的な見直しが求められます。 |
SAP S/4HANAは、従来のSAP ERP各ソリューションとは大きく異なったアーキテクチャを持っており、データ連携についても既存の方法がそのままでは適用できない可能性があります。従って、2027年のサポート期限終了を考えると、これからのデータ連携の方法を慎重に検討する必要があります。システム移行を見据え、事前に以下のような準備を進めておくことが推奨されます。
- 現状のデータ連携フローと対象データの棚卸し
- SAP S/4HANAの仕様に適合する連携ツールの選定
- 移行プロジェクトに向けた社内体制の構築と専門家の確保
サポート期限が近づくにつれて、移行支援を担う専門ベンダーやIT人材の確保が難しくなる傾向にあります。安定した運用を維持し、データ連携を途切れさせないためにも、十分な余裕をもって移行計画を策定することが重要です。
次世代SAPシステムの特徴とデータ連携への影響
SAP S/4HANAに代表される次世代のSAPシステムは、インメモリデータベースを構築プラットフォームとして全面的に採用しています。これによりデータ処理が高速化されるだけでなく、従来のSAP ERPソリューションと比較してアーキテクチャや機能面で大きな進化を遂げています。次世代SAPシステムへの移行は、既存システムとのデータ連携手法にも大きな影響を与えます。
データベースに合わせたアーキテクチャの再構築
次世代SAPシステムは、単にインメモリデータベースを採用して性能向上を図っただけではありません。その能力を最大限に引き出すために、SAP ERPソリューションのアーキテクチャを全面的に再構築しています。データモデルが大幅にシンプル化されたことで、外部システムとのデータ連携においても、より効率的なアプローチが求められます。
具体的には、従来のリレーショナルデータベースを前提としたバッチ処理中心の連携から、リアルタイム性を重視したAPI連携への移行が進んでいます。下表のとおり、アーキテクチャの変更に伴うデータ連携の特徴を整理しました。
| 比較項目 | 従来のSAP ERP | 次世代SAPシステム |
|---|---|---|
| データモデル | 複雑なテーブル構造 | シンプル化されたデータモデル |
| 主な連携方式 | ファイル連携、バッチ処理 | API連携、リアルタイム処理 |
| 処理スピード | ディスクI/Oに依存 | インメモリによる高速処理 |
ユーザーエクスペリエンスの向上と画面の最適化
従来のSAP ERPソリューションは機能別にまとまった画面で設計されており、業務処理を行うにあたって多くの画面を行き来する場合が多くありました。次世代SAPシステムでは、業務を行うユーザーとその役割ごとに画面インターフェースが再設計されており、ユーザーエクスペリエンスの応答性が飛躍的に向上しています。
たとえば特定の業務においては、10画面から4画面で業務が完了できるよう設計されています。このような画面の最適化は、フロントシステムとのデータ連携において、より直感的でシームレスな情報のやり取りを可能にします。
- 役割ベースの直感的な操作画面の採用
- マルチデバイス対応によるモバイル連携の強化
- 必要な情報を1画面に集約し、業務効率を向上
コア機能への統合とシンプル化
もう1つの重要なポイントは、「Principle of One」という原則にもとづいて、システム間での重複をなくしながらコア範囲を再定義している点です。従来のSAP ERPソリューションでは、品目コードは最長18桁でしたが、製造業などでは桁が足りなくなる場面も多く、40桁の品目コードをサポートする機能を業種別ソリューションとして別途提供していました。これが次世代SAPシステムでは標準機能として統合されています。
このようにコア機能が統合・シンプル化されることで、周辺システムとのデータ連携においてもマスターデータの同期やマッピングが容易になります。ただし、既存の連携プログラムをそのまま移行できないケースもあるため、システム刷新のタイミングでデータ連携基盤の見直しを行うことが重要です。
データ連携を円滑に進めるための専門家の活用
SAPシステムのデータ連携は、既存の業務プロセスや多様なシステム環境と複雑に絡み合うため、高度な技術力と深い業務理解が不可欠です。そのため、自社の人材だけで解決しようとするのではなく、専門的な知見を持つ外部パートナーを積極的に活用することをおすすめします。
データ連携プロジェクトにおける専門家の役割
専門家は、各システムとのデータ連携の基本設計から開発に至るまで、高い技術力をもとにお客様のプロジェクトを成功に導きます。SAP S/4HANAへのデータ移行をはじめとして、既存アプリケーションのパフォーマンスチューニングやインメモリーデータベース設計、マルチテナントデータの管理など、様々なお客様の利用環境に合わせた導入経験をもとに包括的な支援を提供します。
専門家を活用する具体的なメリット
データ連携において専門家のサポートを受けることで、以下のようなメリットが期待できます。
- データ連携設計や開発における手戻りの防止と開発工数の削減
- 最新のインメモリーデータベース設計に最適化されたパフォーマンスの実現
- マルチテナント環境下における安全なデータ管理とセキュリティの担保
- 既存アプリケーションの適切なパフォーマンスチューニング
実績豊富なパートナーの選定基準
データ連携を成功させるためには、移行プロジェクトの中で実際にお客様の課題を解決してきた実績を持つパートナーを選ぶことが重要です。パートナー選定の際に確認すべきポイントは下表のとおりです。
| 選定ポイント | 確認すべき内容 |
|---|---|
| プロジェクトの実績数 | 国内においてアップグレードに関して手がけたプロジェクトの数や、データ移行プロジェクトの実績が豊富にあるか |
| 技術力の高さ | データ連携の基本設計から開発、パフォーマンスチューニングまで一貫して対応できる専門的な技術を有しているか |
| 柔軟な対応力 | 様々なお客様の利用環境に合わせた導入経験を持ち、独自のビジネス課題に対して適切な解決策を提示できるか |
たとえば、アップグレードに関して手がけたプロジェクトの数が90件を超え、移行プロジェクトでも80件以上の実績を持つような専門ベンダーであれば、蓄積されたノウハウを活かした最適な提案が期待できます。確かな実績と高い技術力を持つ専門家をパートナーとして迎えることで、複雑なデータ連携プロジェクトにおいても確かな安心感を得ながら推進することが可能になります。
SAP連携に関するよくある質問
SAP連携はAPIで実装できますか?
SAP連携はAPIを利用して実装できます。
SAP連携はクラウド環境でも可能ですか?
SAP連携はクラウド環境でも可能です。
SAP連携はリアルタイムで行えますか?
SAP連携は要件に応じてリアルタイムで行えます。
SAP連携は既存システムと統合できますか?
SAP連携は既存のフロントシステムなどと統合できます。
SAP連携は開発コストを削減できますか?
SAP連携は適切なEAIツールの導入で削減できます。
まとめ
SAPシステムと他システムとのデータ連携は、業務効率化や迅速な意思決定において非常に重要です。連携するデータの最適化や次世代アーキテクチャへの対応を計画的に進めることが、連携を成功に導く結論となります。当社はSAPのスペシャリストとして、豊富な知見と実績をもとに、最適なソリューションをご提案します。SAPに関するご相談やお見積りのご依頼は、ぜひお気軽にリアルテックジャパンにお問い合わせください。
【本記事の監修体制について】
執筆:リードプラス株式会社
監修:リアルテックジャパン株式会社SAPソリューション事業
この記事は、SAP導入プロジェクトの豊富な経験を持つ当社の専門部門が内容を精査し、 以下の最終承認プロセスを経て公開しています。
最終監修責任者:リアルテックジャパン株式会社 代表取締役社長 松浦 一哉
企業の代表として、お客様の課題解決に繋がる有益で正確な情報発信に責任を持って取り組んでまいります。
- カテゴリ: SAP運用・保守
- キーワード:SAP運用・保守
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