現実的になったSAPのクラウド活用

 2018.09.14  リアルテックジャパン株式会社

クラウドはすでにあらゆる組織において現実的な選択肢となっています。これはSAPの導入においても例外ではなく、すでにSAPを導入している企業も、これからSAPを導入する企業も、現在は“クラウドファースト”でクラウド活用を優先的に検討すべき時代になったと言えるでしょう。その背景にはSAPのクラウド活用が現実的になったというだけでなく、SAP ERP 6.0(SAP Business Suite 7)が2025年のメインストリーム・メンテナンス終了に向かっているという理由もあります。

そこで今回はSAPのクラウド活用や、クラウドへの移行およびクラウドでの構築において検討すべきポイントをご紹介します。

SAP、3つの流行

今までのSAPのプラットフォームについて振り返ると、大きく3つの流行があったように思われます。それがIAサーバー化、サーバー仮想化、それとクラウド化です。

IAサーバー化

IAサーバーとは通常のパソコンと同様のアーキテクチャをベースに、IntelのIA-32またはIA-64系のCPUや、AMDなどのインテル互換CPUを搭載したサーバーを指します。このIAサーバーへのSAP移行が進むまで、企業はUNIXの大型サーバーを活用していました。このIAサーバーへの移行がSAPの一次ブームと言えます。

サーバー仮想化

その後2000年頃から進んだのがサーバー仮想化によるSAP運用です。サーバー仮想化をすることで、古いハードウェアを活用できたりサーバーリソースを柔軟に構成したり、集約管理を可能にするなど様々なメリットがありました。サーバー仮想化はSAPの展開においても例外ではありませんでしたが、多くのコンピュータリソースを必要とするERPでは必ずしも成功していない場合もありました。

クラウド化

クラウド化はSAPの3次ブームです。クラウドといえば2006年頃から少しずつ注目されるようになったキーワードです。それからすでに10年以上が経過していますが実はSAPクラウド化が現実的になったのはごく最近のことです。2011年から2013年頃にはAWSのようなハイパースケールのパブリッククラウドがSAPから認定されましたが、当時はアップグレードなどの一時作業目的や、災害対策として使用するのが通常でした。その後2015年頃から、SAPの基幹システムをクラウドへ移行する企業が徐々に増えています。

SAP ERPのメインストリーム・メンテナンス終了

現在、最も広く使用されているSAP ERP 6.0は2025年にそのメインストリーム・メンテナンスが終了します。もともとは2020年での終了を予定していましたが、ユーザー企業の事情を考慮して2025年まで延長されています。

では、SAP ERPのメインストリーム・メンテナンスが終了するとなると企業は次のどのプラットフォームへ移行すればよいのでしょうか?その選択肢がSAPとSAP HANAを統合した“SAP S/4HANA”または“SAP S/4HANA Cloud”などです。

ちなみにSAP HANAとは、超高速なデータ処理を提供する“インメモリデータベース”です。一般的なデータベース(Oracle、Microsoft SQL Serverなど)は搭載されたハードディスク上にデータを保存して動作することを基本としています。それに対してインメモリデータベースは、すべてのデータをコンピューターのメインメモリ上に格納しながら動作するものです。

そのため従来のデータベースと比較して、データアクセスに最も時間がかかるディスクI/Oがほとんど発生しないことから、インメモリデータベースは高速に処理できるデータベースとして人気が高まっています。

SAP ERPはこれまで何度かのアップグレードを繰り返してきましたが、SAP S/4HANAはこれまでのSAP ERPと違ってそのアーキテクチャが大きく違います。そのため、これまで開発してきたアドオン資産をSAP S/4HANA向けに改修して使用するのか、あるいはこれを機に刷新して新しく作り直すのかを早めの段階で検討する必要があります。

2025年のメインストリーム・メンテナンス終了はまだまだ時間があるように思えますが、実際にはそう多くの余裕はありません。

SAPのクラウド移行で注意すべきポイント

移行先としてクラウドは非常に有力な選択肢です。しかし、現行のSAP環境をクラウドに移行したり、あるいはSAP S/4HANAをクラウド上に構築するにあたって注意していただきたいポイントがいくつかあります。

クラウドセキュリティ

近年ではパブリッククラウドを利用することのセキュリティへの不安は少なくなっています。むしろセキュリティ認証を得たパブリッククラウドを利用することで、オンプレミスでの運用に比べてセキュリティが向上するという認識が定着しつつあるでしょう。同時にインフラレイヤーへのセキュリティ投資も削減できるでしょう。しかし、忘れてはいけないのがアプリケーションレイヤーへのセキュリティです。クラウドベンダーが保護してくれるのはあくまでインフラに対してなので、アプリケーションレイヤーに関しては従来と同じようなセキュリティが必要です。ただし特別なセキュリティを検討するのではなく、従来通りのセキュリティを実施していれば問題ないでしょう。

クラウドでの運用コスト

SAPをパブリッククラウドに移行することのメリットとして“コスト削減”に期待している企業も多いでしょう。しかし、SAPをパブリッククラウドに移行することが必ずしもコスト削減に繋がるわけではありません。ハードウェアやソフトウェアの費用を償却期間で計算すると、ある一定の期間を過ぎるとオンプレミス環境のほうがコストが低くなることも少なくありません。

しかし、ここには含まれていない運用管理のコストやセキュリティ対策のコストなどを含め、総合的に判断することでクラウド環境のメリットが明確になってきます。クラウド化による期待効果を適切に見極めることが重要です。

障害を前提に設計する

多くのクラウドベンダーは“Design for failure”といって、インフラには障害が発生することを前提に設計することを推奨しています。オンプレミス環境でもインフラに障害が発生することは多々ありますが、それはパブリッククラウドでも同じです。クラウドベンダーはSLAによって一定以上の可用性を確保していますが、裏を返すとSLA以上の可用性を求めるのは不可能です。そのため「インフラが落ちても障害が発生しないような設計」にすることが大切です。ただしどこまで可用性について自社で担保するかについては、コストと機能の両方に都度考慮しなくてはコストがかさんでしまいます。

ミラーリングやレプリケーションを要検討

SAPのクラウド移行にあたって避けるべき点は“データが壊れること”でしょう。前述のようにクラウドではSLA以上の可用性を期待することは適切ではありませんので、それ以上の可用性は自社で担保しなければいけません。そのための対策の例が“ミラーリング”や“レプリケーション”です。

ミラーリングとはコンピューターでデータを保存する際に、同時に複数のデータベースに保存することです。メインとして運用しているパブリッククラウドに障害が発生していても、ミラーリングを実施していることで広範囲にデータを保護できます。

一方レプリケーションとは、データベースを別のデータベースに複製して同期することです。マスターであるデータベースに障害が発生した場合でも、すぐに複製してあるデータベースに対して処理を要求することができるため高可用性が期待できます。

パブリッククラウドはインフラ部分が目に見えない分、オンプレミスに比べていつ何が起こるか分かりません。そのため、どんな状況でもデータを保護したりシステム稼働を維持するような対策を常に検討しましょう。

まとめ

SAPのクラウド移行は年々そのニーズが増しています。クラウド技術が発展したことで、オンプレミスとほぼ変わらない環境を構築でき、かつクラウド特有のメリットを享受することも可能です。しかし、導入時や運用時にはクラウド特有のポイントがあることも注意しなければなりません。コストとのバランスの中で、合理的な導入と運用を実現するための設計が重要です。

リアルテックではグローバルでの豊富な経験とノウハウをもとに、SAPのクラウド環境での活用のご支援をしております。ご検討の際にはぜひご相談ください。

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