クラウド移行を考えてみる

 2019.05.29  リアルテックジャパン株式会社

社内システムの設置環境としてクラウド(クラウドコンピューティング)を敬遠している経営者はまだ多いでしょう。社内ではなく社外にデータを置いたり、インターネットインフラを使用したシステム環境に不安を感じている、というのが大半の理由なのではないかと思います。

確かに、閉じられたネットワークの中でシステム環境を構築すればセキュリティリスクは低減できるかもしれません。しかしながら、そうした認識もすでに昔の話です。現行のシステム環境の一部または全部をクラウドに移行する利点は非常に多く、今後のクラウドサービスとしては、既存システムをそのままクラウドへ移行するJust Lift思想、クラウドネイティブアプリと既存アプリの連携である(オンプレミス環境にも対応できる)Hybrid環境が利用できるクラウドベンダーも増えてきています。ITシステムを検討していく中で、無視はできないでしょう。

本稿では、クラウド移行の基本としてクラウドの概要をご紹介します。

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クラウドって何?

そもそもクラウドとは何でしょうか?我々は普段、何気なくインターネットとそこで提供されているサービスを利用していますが、それこそがまさにクラウドです。この言葉は2006年にGoogleの当時CEOエリック・シュミットの発言が最初とされており、その年にはGoogle EngineやAmazon EC2といった現在の大手クラウドサービスが誕生しています。

アメリカ国立標準技術研究所(NIST)によれば、クラウド(クラウドコンピューティング)は次のように定義されています。

“クラウドコンピューティングとは、ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション、サービスなどの構成可能なコンピューティングリソースの共用プールに対して、便利かつオンデマンドにアクセスでき、最小の管理労力またはサービスプロバイダ間の相互動作によって迅速に提供され利用できるという、モデルのひとつである。このクラウドモデルは可用性を促進し、5つの基本特性と、3つのサービスモデルと、4つの配置モデルによって構成される”

出典:Wikipedia 「クラウドコンピューティング

また、クラウドサービスは世界市場的にも、クラウド利用する傾向が増えてきており、調査会社のIDC Japanでは2022年には約2兆円強と予測しています。

情報通信白書

出典:総務省「平成30年版 情報通信白書:クラウドサービスの利用状況

ここにある「3つのサービスモデル」とは「IaaS」「PaaS」「SaaS」を指しています。

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クラウドの種類

クラウドは大きく分類すると「IaaS」「PaaS」「SaaS」という3つのサービスモデルで提供されています。それぞれの特徴を以下に説明します。

IaaS(Infrastructure as a Service)

「as a Service」というのは「サービスとしての~」という意味なので、IaaSはサービスとして提供されているインフラということになります。IaaSが提供するモノはシステム構築に欠かせない基本的なインフラ(サーバーリソース)です。ユーザーはIaaSの上に自由なシステムを構築でき、インターネットを通じてそれを自由に使用できます。コストは従量課金が基本なので「使った分の料金を支払う」というのが一般的です。

PaaS(Platform as a Service)

PaaSはインフラに加えてミドルウェアやOSを搭載した総合的なシステム環境を提供するというものです。アプリケーション開発のための環境が整えられたサービスもあれば、ソフトウェアをインストールするだけでシステムとして稼働できるというサービスもあります。

SaaS(Software as a Service)

SaaSはさらにソフトウェアそのものをサービスとして提供するというクラウドサービスです。たとえばS/4HANA Cloudといった大型ERPソリューションも、GoogleのGmailといった無料サービスもSaaSに分類されます。インターネット経由で提供されるソフトウェアはすべてSaaSと考えてよいでしょうはさらにソフトウェアそのものをサービスとして提供するというクラウドサービスです。たとえばS/4HANA Cloudといった大型ERPソリューションも、GoogleのGmailといった無料サービスもSaaSに分類されます。インターネット経由で提供されるソフトウェアはすべてSaaSと考えてよいでしょう。

この他にもVDI(デスクトップ仮想化)環境を素早く構築するためのDaaS(Desktop as a Service)や、クラウドでデータベースを提供するDBaaS(DataBase as a Service)などカテゴリが多様化していますが、基本となるのが上記3つのクラウドサービスです。

クラウド環境の構築形態

クラウドでシステム環境を構築するにあたって3つの異なる形態があります。環境やニーズに応じて適切な構築形態を選ぶことで、より快適なシステム環境に仕上がるでしょう。

パブリック

クラウド環境を構築する最も一般的な方法です。クラウドベンダーが提供するサーバーを、ほかのユーザーと共有するという形で利用します。もちろんそれぞれは閉じられた空間で利用することになるので、他のユーザーの干渉を受けることはありません。パブリッククラウドの主な特長は、①必要なときに必要な量だけ利用できる、②使用分に応じて料金が発生する従量課金制の2つであり、サーバーやストレージなどの必要なリソースを素早く揃え、サービスのスケールに応じて拡張したいケースがポイントです。「オーバーコストにならないように低コストからスタートできること」がメリットなので、クラウド移行の最初の手段として検討してみましょう。

プライベート

クラウドベンダーが提供する1つのリソースをユーザーが完全に占有するタイプの構築形態です。オンプレミス型かホスティング型の2種類に分けられ、どちらにおいても、ハードウェアやOS、DB、ソフトウェア、セキュリティ環境、回線などを自由に設計することができるメリットがある反面、パブリッククラウドと比べ、初期投資などのコスト増大やシステム設計から導入までの期間が長くなる傾向があります。パブリッククラウドを利用する場合、データをクラウドベンダーに委ねることになるうえ、提供サービス範囲内でしかカスタマイズできません。また、ハードウェアやクラウド基盤の状態を利用者が監視・管理できないので、障害リスクを把握できないのでコンプライアンスや規則に合わないこともあるでしょう。その場合は、プライベートクラウドを検討に加えてはどうでしょうか。

ハイブリッド

パブリックとプライベート、時にはオンプレミスを混合させた構築形態がハイブリッドです。それぞれの環境の利点を生かすことで複雑なニーズにも対応できます。

もっと読む:現実的になったSAPのクラウド活用

クラウドに対する3つの誤解

クラウドを検討しているけれど移行には踏み切っていない、あるいはクラウドを信用していないという企業経営者の多くは、いくつかの誤解をしています。ここでその誤解について解決したいと思います。

クラウドはセキュリティに脆弱性がある

これがクラウドに対して最もよくある誤解でしょう。クラウドはインターネット経由で提供されているサービス故に、セキュリティ面で不安があるという経営者が多いでしょう。確かに、クラウド黎明期ではセキュリティ面の弱さが懸念されていましたが、最近ではむしろ「クラウドを利用する方がセキュリティが高くなる」という認識が広がっています。

なぜクラウドの方が高いセキュリティを確保できるのか?それはクラウドベンダーの努力に他なりません。クラウドサービスを提供するということは、お客様の大切なデータを預かるということです。なので、そのデータを流出したり損失するような事態は、絶対にあってはならないことです。

だからこそ多くのクラウドベンダーは提供する基盤に強力なセキュリティ体制を敷いており、外部からの不正アクセスやデータ流出を防いでいます。

また、企業独自に強固なセキュリティ体制を敷くには莫大なコストがかかるということもあるため、セキュリティに柔軟に対応ができ、調達コスト含め安価になるクラウドが利用されているのもあります。とはいえ、利用者側にも提供をうけるサービスモデルによりますが、セキュリティ対策を施す責任はありますので、対策検討は必要です。

また、1つの判断材料として「クラウドサービス事業者及び当該サービスの信頼性が十分であることを総合的に判断するためには参考となる認証には、ISO/IEC 27017によるクラウドサービス分野におけるISMS認証の国際規格取得していること」を内閣から提示されていますので選定の材料にしてはいかがでしょうか。

参考サイト

クラウドには専門技術が必要になる

クラウドに移行するにあたって、そのアーキテクチャを理解することは大切です。しかしながら、クラウドへ移行することで運用負担が重くなるというのは1つの誤解です。クラウドではリソースの管理をクラウドベンダーが行っているので、100%負担はないわけではないですが、ユーザーとしてはハードウェア側の運用負荷の低減は可能です。また、OSレイヤ以降に構築・運用人員を回すことができるので、実作業に専念することができます。

クラウドでシステムコストを下げられる

既存のシステム環境にかかっているコストと、クラウドのコスト、どちらの方が低いかといったら利用する環境によります。そのため必ずしもクラウドに移行するとシステムコストを避けられるわけではありません。ただし、しっかりと運用計画を立ててクラウド移行を検討すれば、既存環境に比べてコストを下げられることもあります。例えばハードウェア機器、保守といった固定資産を、クラウドを利用することで、変動費にすることができるため、初期費用と計画次第ではランニングも抑えることも可能です。その点についてはクラウド移行をサポートするパートナーに相談するのが良いでしょう。

いかがでしょうか?これを機に、既存システム環境のクラウド移行を検討してみましょう。クラウドの利点に気づけば、より良い環境を作るための基盤が整います。

Archive Migration Service (アーカイブ移行リモートサービス)

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