SAP Cloud Identity Access Governance
(SAP IAG)とは?機能やメリットを徹底解説

 2026.01.29  リアルテックジャパン株式会社 技術チーム

SAP Cloud Identity Access Governance(SAP IAG)とは?機能やメリットを徹底解説

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、システム環境がクラウドへと急速にシフトする中で、「IAG(Identity Access Governance)」というキーワードに注目が集まっています。特にSAPシステムを利用する企業において、従来のオンプレミス中心のアクセス管理だけでは、複雑化するハイブリッド環境のガバナンスを維持することが難しくなってきました。

本記事で解説するSAP Cloud Identity Access Governance(SAP IAG)は、クラウド時代のアクセス管理と内部統制を効率化するために設計された、SAPのSaaS(Software as a Service)型ソリューションです。多くの企業が直面する「職務分掌(SoD:Segregation of Duties)リスクの可視化」や「監査対応の工数削減」といった課題に対し、SAP IAGは強力な解決策を提供します。

この記事では、SAP IAGの基本的な定義から、具体的な機能、導入によって得られるメリット、そして既存のSAP Access Controlとの違いや使い分けについて徹底的に解説します。結論として、SAP IAGを適切に活用することは、コンプライアンス遵守と業務効率化を両立させ、持続可能なガバナンス体制を構築するための鍵となります。これからSAP IAGの導入を検討されている方や、クラウド環境でのセキュリティ強化を目指す担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

この記事で分かること

  • SAP Cloud Identity Access Governance(SAP IAG)の概要と重要性が高まる背景
  • 職務分掌(SoD)リスク分析や特権ID管理など、SAP IAGが提供する5つの主要機能
  • 内部統制の自動化や監査対応コストの削減といった具体的な導入メリット
  • 従来のSAP Access ControlとSAP IAGの違い、およびハイブリッド環境での共存シナリオ
  • 自社のシステム環境に合わせた最適なガバナンス製品の選定ポイント
SAP GRCインプリメンテーションサービス

SAP IAGの概要と重要性が高まる背景

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、システム環境は急速に変化しています。特に、複数のクラウドサービスと既存のオンプレミスシステムが共存する環境下では、セキュリティとガバナンスの維持が経営上の重要課題となっています。本章では、SAP Cloud Identity Access Governance(以下、SAP IAG)の定義と、なぜ今このソリューションが必要とされているのか、その背景を解説します。

SAP Cloud Identity Access Governance(SAP IAG)の定義

SAP Cloud Identity Access Governance(SAP IAG)は、SAP社が提供するクラウドベースのGRCソリューションです。GRCとは、Governance(ガバナンス)、Risk(リスク管理)、Compliance(法令遵守)を統合的に管理する手法を指します。SAP IAGは、従来のオンプレミス型ソリューションであるSAP Access Controlの概念を踏襲しつつ、クラウドサービス(SaaS)として設計されています。これにより、インフラ管理の負荷を抑えながら、最新のアクセスガバナンス機能を利用することが可能です。

SAP IAGの最大の特徴は、ハイブリッド環境におけるアクセス管理の一元化を実現する点にあります。SAP S/4HANAなどの基幹システムに加え、SAP AribaやSAP SuccessFactorsといったクラウドソリューション、さらには他社製システムを含めた広範なアプリケーションに対して、アクセスリスクの分析や権限付与の自動化を提供します。

現代の企業システムにおけるアクセス管理の課題

クラウドシステムの利用拡大やリモートワークの定着を背景に、企業のシステムにおけるアクセス権限管理はこれまで以上に重要となっています。かつてのように、社内ネットワークと単一のERPシステムを守ればよいという単純な境界防御モデルは通用しなくなりました。現代の企業システムが直面している主な課題は、アクセス経路の多様化と権限構造の複雑化です。

特に、職務分掌(SoD)リスクの管理は年々難易度を増しています。例えば、購買担当者が支払承認権限も同時に持ってしまうような不適切な権限付与は、不正会計や横領のリスクに直結します。システムが分散することで、誰がどのシステムでどのような権限を持っているかを把握することが困難になり、手作業による管理では限界を迎えています。

環境の変化に伴うアクセス管理の課題は、下表のとおりです。

環境の変化 アクセス管理における具体的な課題
SaaS利用の拡大 IDや権限が各クラウドサービスに散在し、統制が効かなくなる(IDのサイロ化)。
リモートワークの定着 場所を問わないアクセスが増加し、認証強化や厳格な特権ID管理が求められる。
法規制の厳格化 内部統制報告制度(J-SOX)などへの対応において、監査証跡の確保や定期的な棚卸し工数が増大する。

ハイブリッド環境におけるガバナンス強化の必要性

オンプレミスとクラウドが混在するハイブリッド環境では、アクセス管理の一元化が難しく、内部統制の維持も大きな課題です。多くの企業では、オンプレミスのERPには既存のガバナンスツールを適用しているものの、クラウドサービスについては個別の管理画面で権限設定を行っているケースが散見されます。このような管理の分断は、セキュリティホールを生むだけでなく、監査対応時の工数を大幅に増加させる要因となります。

こうした課題を解決するためには、異なる環境を横断してリスクを可視化できる仕組みが必要です。SAP IAGは、オンプレミスとクラウドの双方に対応し、ID統合管理と内部統制強化を一元的に実現します。ハイブリッド環境が主流となる現代において、SAP IAGはセキュリティリスクを低減させつつ、運用効率を向上させるための必須ソリューションとして注目されています。

  • オンプレミスとクラウドを横断した職務分掌(SoD)リスクの自動検知
  • 申請から承認、プロビジョニング(権限付与)までのプロセス自動化
  • ユーザへの権限割当の定期的な棚卸し(レビュー)の効率化
SAPデータコピーツール Data Sync Manager
One Identity Manager(OIM)で可能にする効率的なID管理

SAP IAGが提供する5つの主要機能

図:SAP IAGの主な機能
SAP IAGが提供する5つの主要機能

SAP Cloud Identity Access Governance(SAP IAG)は、クラウドとオンプレミスが混在するハイブリッド環境において、包括的なアクセスガバナンスを実現するための5つの主要機能を提供しています。

これらの機能は相互に連携し、職務分掌(SoD)リスクの管理から特権IDの統制まで、企業のセキュリティコンプライアンスを強力に支援します。各機能の概要は下表のとおりです。

機能名称(サービス名) 概要と主な役割
アクセス分析
(Access Analysis)
ユーザの権限状況を可視化し、職務分掌(SoD)リスクやコンプライアンス違反を特定・分析します。
ロール設計
(Role Design)
職務内容に基づいた適切なビジネスロールを設計し、権限付与の最適化と管理効率化を図ります。
アクセスリクエスト
(Access Request)
権限申請から承認、システムへの反映(プロビジョニング)までの一連のプロセスを自動化します。
アクセス認証
(Access Certification)
ユーザへの権限割当の定期的な棚卸し(レビュー)を実施し、不要な権限の削除や監査証跡の確保を行います。
特権アクセス管理
(Privileged Access Management)
システムへの強力な権限を持つ特権IDの利用を監視・管理し、不正操作のリスクを低減します。

アクセス分析による職務分掌(SoD)リスクの可視化

アクセス分析(Access Analysis Service)は、ユーザやロールに付与された権限を分析し、潜在的な職務分掌(SoD)リスクや重要アクセスリスクを即座に検出する機能です。

企業システムにおいて、一人の担当者が「購買発注」と「支払い承認」の両方の権限を持つような状態は、不正行為の温床となりかねません。アクセス分析機能を利用することで、こうしたリスクの高い権限の組み合わせを事前に特定し、是正措置を講じることが可能になります。

また、SAPが提供する標準のリスクルールセットを利用できるほか、各企業のポリシーに応じた独自ルールの定義にも対応しています。ダッシュボード上でリスク状況をリアルタイムに把握できるため、監査前の一時的な対応ではなく、継続的なコンプライアンス維持を実現できます。

このアクセス分析機能では、主に以下のような分析・可視化が可能です。

  • ユーザ、ロール、グループ単位での詳細なリスク分析
  • シミュレーション機能による権限変更時のリスク予測
  • グラフィカルなダッシュボードによるリスク状況の可視化

コンプライアンスを遵守したロール設計

ロール設計(Role Design Service)は、業務に必要な権限を束ねた「ビジネスロール」を構築し、その構造を最適化するための機能です。

本機能を活用することで、ロールの作成段階から職務分掌(SoD)リスクの有無を確認し、リスクを排除したクリーンなロール設計が可能になります。さらに、技術的な権限(テクニカルロール)を業務視点で整理したビジネスロールとして定義・管理することで、現場の管理者にとっても理解しやすい権限構造を実現できます。その結果、申請や承認時の認識齟齬や設定ミスの削減にもつながります。

こうしたロール設計を支援するために、以下のような機能が提供されています。

  • ボトムアップおよびトップダウンアプローチによるロール定義
  • ロール作成時におけるSoDリスク分析と承認ワークフロー
  • ビジネスロールとテクニカルロールの階層的な管理

アクセスリクエストの自動化と承認フロー

アクセスリクエスト(Access Request Service)は、ユーザによる権限申請から上長・管理者による承認、そして対象システムへの権限付与(プロビジョニング)までを自動化する機能です。

従来、紙やメールで行われていた申請業務は、承認履歴の散逸や手作業による設定ミスといった課題を抱えていました。SAP IAGのアクセスリクエスト機能は、申請時に自動でリスク分析を行い、リスクがある場合には警告を表示したり、追加の承認ステップを設けたりすることで、統制の効いたプロセスを確立します。

さらに、承認完了後は、連携しているクラウドシステムやオンプレミスシステムに対して、自動的にアカウント作成や権限割り当てが行われます。これにより、申請から利用開始までのリードタイムを短縮するとともに、IT部門の運用負荷を大幅に軽減できます。

こうした一連のプロセスを支える主な機能は、以下のとおりです。

  • セルフサービスポータルによる直感的な申請画面
  • リスクレベルに応じた柔軟な承認ワークフローの設定
  • 承認後の自動プロビジョニングによるタイムラグの解消

ユーザへの権限割当の定期的な棚卸しを実現するアクセス認証

アクセス認証(Access Certification)は、ユーザが現在保有しているアクセス権限が業務上適切かどうかを、定期的に見直す「棚卸し(レビュー)」業務を支援する機能です。

人事異動や組織変更が発生した際に、不要となった保有権限が削除されずに残存してしまうケースは少なくありません。こうした権限の放置は、不正利用や情報漏えいにつながるセキュリティリスクとなります。

アクセス認証機能では、レビューの計画から実行までを一元的に管理し、各部門の責任者へ確認タスクを自動的に配信します。レビュー担当者は、オンライン上で対象権限を確認し、「維持」または「削除」を判断するだけでよく、レビュー業務の負荷を大幅に軽減できます。

このプロセスにより、不要になった保有権限を精査するとともに、「誰が・いつ・どの権限を承認したか」という監査証跡を確実に残すことが可能になります。これは、内部統制報告制度(J-SOX)をはじめとした各種監査対応において、重要な統制要素となります。

このアクセス認証を支える主な機能は、以下のとおりです。

  • 定期レビュー(四半期、年次など)のスケジュール自動実行
  • レビュー結果のレポート出力
  • レビュー結果に基づく権限削除の自動実行

特権アクセス管理による高権限ユーザの統制

特権アクセス管理(Privileged Access Management service)は、システム設定の変更や緊急対応などを行える強力な権限(特権ID)の利用を厳格に管理する機能です。

特権IDを個人に恒常的に貸与したまま運用すると、ユーザの操作可能な範囲が広がり、誤操作や不正が発生した場合の影響が大きくなります。
また、特権IDが適切に管理されていない場合、インシデント発生時の原因特定・責任所在の明確化が困難になるといった課題につながります。

SAP IAGの特権アクセス管理では、事前に登録されたユーザに対し、必要なタイミングに限定して特権IDを利用できる仕組みを提供します。いわゆる「Firefighter(ファイアファイター)」の考え方を取り入れ、ユーザは作業内容や利用時間を明示したうえで申請し、承認された範囲内でのみ特権操作を行うことが可能です。

さらに、特権利用中の操作ログや設定変更の履歴はすべて記録され、利用終了後には管理者によるレビューが行われます。これにより、特権IDの不正利用を抑止するとともに、高度なセキュリティガバナンスを継続的に維持できます。

こうした特権ID管理を実現するために、以下のような機能が提供されています。

  • 特権IDの申請・承認に基づく一時的な貸与
  • 特権利用時における操作ログおよび変更履歴の記録
  • 利用終了後のログレビュープロセスの統合

企業がSAP IAGを導入する具体的なメリット

SAP Cloud Identity Access Governance(SAP IAG)を導入することで、企業は従来のアクセス管理における手作業の負担を大幅に軽減し、セキュリティレベルを向上させることができます。特に、複雑化するハイブリッド環境下において、ガバナンスの維持と業務効率の両立は経営課題そのものです。

ここでは、企業がSAP IAGを導入することで得られる具体的なメリットについて、3つの観点から解説します。

内部統制プロセスの自動化と効率化

SAP IAG導入の最大のメリットは、権限付与や削除に関わる一連のプロセスが自動化され、業務効率が飛躍的に向上することです。

従来の手動による管理では、申請内容と職務分掌(SoD)ルールの照合を目視で行う必要があり、承認漏れや設定ミスといった人為的なリスクが避けられませんでした。SAP IAGを利用することで、申請からリスク分析、承認、そして対象システムへの権限反映(プロビジョニング)までをシームレスに連携させることが可能です。

具体的には、以下のようなプロセス改善が期待できます。

  • リスク検知の自動化:権限申請時にシステムが自動でSoDリスクを分析し、リスクがある場合は警告を表示します。
  • プロビジョニングの自動化:承認が完了した時点で、自動的に対象システムへ権限が付与されるため、IT部門の作業工数が削減されます。
  • 人事異動対応の迅速化:組織変更や退職に伴う権限変更・削除漏れを防ぎ、適切な権限状態を維持します。

このように、プロセス全体をシステム化することで、内部統制の強化と業務負荷の軽減を同時に実現できる点が大きな強みです。

監査対応工数の削減と証跡の確実な保全

定期的な監査対応にかかる膨大な工数を削減できる点も、SAP IAG導入の重要なメリットです。

内部監査や外部監査では、「誰が、いつ、どのような権限を持ち、誰が承認したのか」という証跡(ログ)の提示が求められます。複数のシステムが混在する環境では、これらの情報を収集・整理するだけで多大な時間を要していました。SAP IAGは、すべてのアクセスリクエスト、承認履歴、リスク分析結果を一元的に記録・保管します。

また、定期的な棚卸し業務(アクセスレビュー)においても、以下の表のとおり効率化が図れます。

業務プロセス 従来の手法(手動・Excel等) SAP IAG導入後
データ収集 各システムからデータを抽出し、手作業で突合 システムが自動で権限データを収集・リスト化
レビュー実施 Excelファイルをメールで回覧し、承認印を押印 Web画面上で各責任者が承認・削除を選択
結果の反映 レビュー結果を基に、IT部門が手動で権限削除 削除判定された権限は自動的にシステムから削除

これにより、監査準備の負担が軽減されるだけでなく、証跡の改ざんリスクを排除し、監査人に対して信頼性の高いデータを提供することが可能になります。

オンプレミスとクラウドの一元管理

オンプレミスとクラウドが混在する「ハイブリッド環境」におけるガバナンスを一元化できる点は、SAP IAGならではのメリットです。

多くの企業では、基幹システム(ERP)はオンプレミスに残しつつ、調達や人材管理などはクラウドサービス(SaaS)を利用するといった構成が増えています。従来のオンプレミス専用ツールではクラウド側の詳細な権限管理が難しく、管理基準が分断される「サイロ化」が課題となっていました。

SAP IAGは、SAP S/4HANAなどのオンプレミス製品に加え、SAP Ariba、SAP SuccessFactorsといったクラウドソリューションも統合的に管理対象とします。これにより、システムごとの管理ルールのばらつきを解消し、企業全体で統一されたセキュリティポリシーを適用できます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に伴いクラウド利用が拡大する中で、将来にわたって持続可能なガバナンス基盤を構築できる点は、経営視点でも大きな投資対効果を生み出します。

SAP Access ControlとSAP IAGの違い

SAP Cloud Identity Access Governance(SAP IAG)とSAP Access Controlは、いずれもSAP社が提供するGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)ソリューションですが、その設計思想や適用範囲には明確な違いがあります。

導入を検討する際は、どちらか一方を選ぶだけでなく、現在のシステム環境や将来のクラウド移行計画に合わせて、両者を組み合わせる選択肢も視野に入れる必要があります。ここでは、両製品の違いと共存シナリオ、選定のポイントについて解説します。

SAP Access ControlとSAP IAGの比較

SAP Access Controlはオンプレミス環境での運用を前提としており、長年にわたりSAP ERPやS/4HANAの詳細な権限管理に対応してきました。一方、SAP IAGはクラウドネイティブなSaaSとして提供され、SAP AribaやSAP SuccessFactorsといったクラウドアプリケーションとの連携を容易に実現します。

両製品の主な違いは下表のとおりです。

比較項目 SAP Access Control SAP IAG
環境 オンプレミス クラウド
主な管理対象 SAP ERP、S/4HANA(オンプレミス) S/4HANA Cloud、Ariba、SuccessFactorsなどのクラウド製品およびオンプレミス
カスタマイズ性 カスタマイズが必要な為、IAGと比較すると長期間を要する傾向 要件が標準テンプレートにマッチすれば、比較的短期間で導入可能
メンテナンス 顧客により実施 SAPにより実施

SAP Access Controlは複雑な業務要件に合わせて細部まで作り込むことが可能ですが、インフラの維持管理コストが発生します。対してSAP IAGは、インフラ管理不要で常に最新の機能を利用できる点が大きな利点です。

SAP IAGとSAP Access Controlの導入シナリオ

SAP IAGはSAP Access Controlの単純な後継製品ではなく、相互に補完し合う関係にあります。

特に、すでにSAP Access Controlを導入している企業がクラウドシステム(SAP Aribaなど)を新規導入する場合、既存のSAP Access Controlを廃止してSAP IAGへ全面移行する必要はありません。SAP IAGが提供する「Bridge機能」を利用することで、オンプレミスの詳細な管理はSAP Access Controlに残しつつ、クラウド側のガバナンスをSAP IAGで担うハイブリッド構成が可能です。

具体的な導入・共存のシナリオは以下の3パターンが挙げられます。

  • SAP IAG単独
    新規でS/4HANA Cloudなどを導入する場合や、複雑なアドオン開発が不要な場合に適しています。システム構成がシンプルになり、運用負荷を最小限に抑えられます。
  • SAP Access Control単独
    厳格な業界規制や独自の業務プロセスにより、高度なカスタマイズが必須となる場合です。オンプレミスの利用がメインであれば、SAP Access Control単独利用が合理的です。
  • SAP IAG + SAP Access Control併用
    SAP Access Controlで既存のオンプレミス環境を守りながら、SAP IAGを追加してクラウド領域をカバーします。SAP IAGを統合インターフェースとして利用し、申請や承認の入り口をSAP IAGに一本化するといった運用も可能です。

今後のロードマップと製品選定のポイント

製品選定においては、現在の要件だけでなく、メーカーのロードマップと自社のIT戦略を照らし合わせることが重要です。

SAP IAGはSaaSであるため、四半期ごとのアップデートで機能拡張が継続的に行われます。一方、SAP Access Controlについては、現行のバージョン(12.0)の後継として、2026年第1四半期に「SAP GRC FOR HANA 2026」のリリースが予定されています。

したがって、これからGRCソリューションを選定する場合は、以下の基準を参考にすることをおすすめします。

  • 「クラウドシフト」を推進し、標準プロセスへの適合(Fit to Standard)を目指すならSAP IAG
  • 既存の複雑な権限ルールを維持し、オンプレミス中心の運用が続くならSAP Access Control(または次期GRC)
  • 過渡期として両方の要件が混在するならハイブリッド構成

システム環境や顧客要件によって最適な解は異なります。「SAP IAGかSAP Access Controlか」の二者択一ではなく、自社のセキュリティポリシーと運用効率のバランスを考慮し、最適な組み合わせを選択してください。

SAP IAGに関するよくある質問

SAP IAGはオンプレミスのSAPシステムにも対応していますか?

はい、対応しています。SAP IAGはクラウドコネクタを利用することで、SAP S/4HANAやSAP ERP(ECC)などのオンプレミスシステムとも安全に連携し、アクセス分析や権限管理を行うことが可能です。

SAP Access ControlからSAP IAGへの移行は必須ですか?

現時点ですぐに移行が必須というわけではありません。しかし、SAPの戦略としてクラウドソリューションへのシフトが進んでおり、将来的にはSAP IAGが主流となります。現在は両製品を連携させるBridgeシナリオを利用し、段階的に移行する企業が増えています。

導入期間はどの程度かかりますか?

SAP IAGはSaaSとして提供されるため、ハードウェアの調達やセットアップが不要であり、従来のオンプレミス製品と比較して導入期間を短縮できます。標準的な機能を利用する場合、数ヶ月程度での導入が可能ですが、対象システムの数やルールの複雑さによって期間は変動します。

SAP以外のクラウドサービスのアクセス管理も可能ですか?

はい、可能です。SAP AribaやSAP SuccessFactorsなどのSAP製品だけでなく、主要なサードパーティ製クラウドアプリケーションについても、SCIMなどの標準プロトコルや専用のアダプタを通じてガバナンス管理を行うことができます。

職務分掌(SoD)ルールの策定支援機能はありますか?

SAP IAGには、SAPが長年の知見に基づいて作成した標準のSoDルールセットがプリセットされています。これをベースに自社のポリシーに合わせてカスタマイズすることで、ゼロからルールを策定する手間を省き、迅速に運用を開始できます。

まとめ

本記事では、SAP Cloud Identity Access Governance(SAP IAG)の機能やメリット、従来のSAP Access Controlとの違いについて解説しました。

DXの推進によりシステム環境が複雑化する現代において、クラウドとオンプレミスを横断したアクセス管理とガバナンス強化は、企業の信頼性を守るために不可欠な要素です。Excelなどを用いた手作業での管理には限界があり、リスクの見落としや監査対応の負荷増大を招く恐れがあります。

SAP IAGを導入することで、職務分掌(SoD)リスクの可視化やアクセスリクエストの自動化が可能となり、内部統制の効率化と監査対応工数の大幅な削減が実現します。また、既存のSAP Access Control環境を活かしつつ、段階的にクラウドへ移行する「Bridgeシナリオ」を選択できる点も、多くの企業にとって現実的な解となるでしょう。

セキュリティリスクを未然に防ぎ、持続可能なガバナンス体制を構築するために、ぜひSAP IAGの活用をご検討ください。導入にあたっては、自社のシステム環境や将来のロードマップに合わせた最適な設計が重要です。

【本記事の監修体制について】

執筆:Professional Service 部

監修:リアルテックジャパン株式会社 SAPソリューション事業

この記事は、SAP導入プロジェクトの豊富な経験を持つ当社の専門部門が内容を精査し、 以下の最終承認プロセスを経て公開しています。

最終監修責任者:リアルテックジャパン株式会社 代表取締役社長 松浦 一哉

企業の代表として、お客様の課題解決に繋がる有益で正確な情報発信に責任を持って取り組んでまいります。

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