セキュリティフレームワークとは?
NIST CSF 2.0の改訂内容から学ぶ重要性と導入ガイド

 公開日: 2026.01.13  更新日: 2026.01.28 

サイバー攻撃が巧妙化する中、「自社のセキュリティ対策は、本当にこれで十分なのだろうか?」と不安に感じていませんか?場当たり的な対策に終始し、どこから手をつければ良いか分からない…そんな悩みを解決する羅針盤となるのが『セキュリティフレームワーク』です。一見難しく感じるかもしれませんが、ご安心ください。この記事では、セキュリティフレームワークの基本から、最新のNIST CSF 2.0の動向、そして自社に導入するための具体的なステップまでを、専門家が分かりやすく解説します。

この記事でわかること

  • セキュリティフレームワークの基本的な意味と重要性
  • NIST CSFやISMSなど主要なフレームワークの特徴と比較
  • 最新のNIST CSF 2.0で何が変わったのかという改訂ポイント
  • 自社の状況に最適なフレームワークの選び方
  • セキュリティフレームワークを導入するための具体的な4つのフェーズ

この記事を最後まで読めば、属人的なセキュリティ対策から脱却し、組織全体で体系的かつ継続的にセキュリティレベルを向上させるための、具体的で実践的な知識が身につきます。では、さっそく基本から見ていきましょう。

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セキュリティフレームワークの基本を理解する

セキュリティフレームワークとは何か?

セキュリティフレームワークとは、組織が情報セキュリティやサイバーセキュリティのリスクを管理し、対策を体系的に実施するための指針やベストプラクティスをまとめた「枠組み」のことです。一見難しく感じるかもしれませんが、これは家を建てる際の「設計図」や、航海における「羅針盤」のようなものだと考えると分かりやすいでしょう。どこにどのようなリスクがあり、何から手をつけるべきか、そしてどのような状態を目指すべきかを示してくれます。

このフレームワークを活用することで、組織は場当たり的な対策ではなく、自社の状況に合わせて計画的かつ網羅的にセキュリティレベルを向上させることが可能になります。

なぜ今セキュリティフレームワークが重要視されるのか?

では、なぜ今、これほどまでにセキュリティフレームワークの重要性が叫ばれているのでしょうか。その背景には、「外部環境の劇的な変化」と「内部体制の課題」という、避けては通れない2つの大きな要因が存在します。

サイバー攻撃の高度化とビジネス環境の変化

第一に、企業を取り巻く脅威と環境が大きく変化している点が挙げられます。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2024」においても、ランサムウェアによる被害やサプライチェーンの弱点を悪用した攻撃が組織にとって深刻な脅威として上位に挙げられています。

  • サイバー攻撃の巧妙化:ランサムウェア攻撃や標的型攻撃、そして取引先などを経由して侵入するサプライチェーン攻撃など、攻撃手法はますます巧妙かつ悪質になっています。
  • ビジネス環境の変化:DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、クラウドサービスの利用拡大、そしてテレワークの定着により、守るべき情報資産の場所や働き方が多様化し、従来の「社内と社外」という境界線で区切る防御モデルが通用しなくなりました。

このような状況下で、一部分だけを強化する「点」の対策では、複雑化したリスク全体をカバーしきれなくなっているのです。

属人的なセキュリティ対策からの脱却

第二の理由は、セキュリティ対策が特定の担当者の知識や経験に依存してしまう「属人化」からの脱却が急務となっている点です。優秀なセキュリティ担当者がいる間は問題ないかもしれませんが、その担当者が異動や退職をしてしまうと、途端に組織のセキュリティレベルが低下するリスクを抱えています。
セキュリティフレームワークは、組織全体で取り組むべき共通の基準やプロセスを明確に示します。これにより、担当者が変わっても一貫性のある対策を継続でき、組織としてのセキュリティ対応能力を安定して維持・向上させることが可能になります。これは、持続可能なセキュリティ体制を構築する上で不可欠な要素と言えるでしょう。

セキュリティフレームワークを導入するメリット

セキュリティフレームワークを導入することは、単にセキュリティが強化されるだけでなく、企業経営全体に多くのメリットをもたらします。具体的なメリットを下の表に整理しました。

メリット 具体的な内容
対策の網羅性と体系化 取り組むべき対策が体系的に整理されているため、セキュリティ対策の抜け漏れを防ぎ、どこから手をつけるべきかが明確になります。
客観的な評価と継続的な改善 自社のセキュリティレベルを客観的な基準で評価し、目標(あるべき姿)とのギャップを可視化できます。これにより、具体的な改善計画を立てやすくなります。
ステークホルダーへの説明責任 経営層や株主、監査機関といったステークホルダーに対し、どのような基準でセキュリティ対策に取り組んでいるかを具体的に説明でき、説明責任を果たしやすくなります。
信頼性の向上とビジネス機会の創出 国際標準などのフレームワークに準拠することで、顧客や取引先からの信頼を獲得できます。特に、サプライチェーン全体のセキュリティを重視する企業との取引において有利に働くことがあります。
投資対効果の最適化 リスクの大きさに応じて対策の優先順位を判断できるため、限られた予算やリソースを最も効果的な領域に集中させ、コストを最適化することが可能です。
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【比較】国内外の主要なセキュリティフレームワーク

セキュリティ対策を体系的に進める上で、フレームワークが羅針盤の役割を果たすことはご理解いただけたかと思います。しかし、世の中にはNIST CSF以外にも数多くのフレームワークが存在します。それぞれに目的や特徴があり、自社の状況に合わないものを選んでしまうと、かえって負担が増えたり、対策が形骸化してしまったりする可能性も少なくありません。
では、自社にとって最適なフレームワークを見つけるには、どうすればよいのでしょうか?ここでは、国内外で広く採用されている主要なセキュリティフレームワークを取り上げ、それぞれの特徴を比較しながら解説していきます。各フレームワークの違いを正しく理解し、自社のビジネス目標や規制要件、組織の成熟度に最も合致するものを選ぶことが成功の鍵となります。

フレームワーク名 主な目的 対象 特徴 認証制度
NIST CSF サイバーセキュリティリスクの管理と低減 政府機関、重要インフラ、あらゆる業種・規模の組織 汎用性・網羅性が高い。攻撃の予防から復旧までをカバー。 なし
ISMS (ISO/IEC 27001) 情報資産の保護とマネジメントシステムの確立 あらゆる業種・規模の組織 国際標準規格であり、組織の信頼性向上に繋がる。 あり
CIS Controls サイバー攻撃に対する実践的な防御策の実施 あらゆる業種・規模の組織 具体的かつ優先順位付けされた対策リストが提供される。 なし
PCI DSS カード会員データの保護 クレジットカード情報を扱うすべての事業者 クレジットカード業界に特化した具体的で厳格な要件。 準拠証明が必要

NIST Cybersecurity Framework (CSF) - 米国標準の汎用モデル

NIST CSFは、米国立標準技術研究所(NIST)によって策定された、サイバーセキュリティ対策の国際的なデファクトスタンダードです。 もともとは米国の重要インフラ防護を目的としていましたが、その汎用性と網羅性の高さから、現在では業種や規模を問わず世界中の多くの組織で活用されています。 特徴は、「特定」「防御」「検知」「対応」「復旧」そして最新の2.0で追加された「ガバナンス」の6つの機能(コア)を軸に、リスクマネジメントのサイクルを回す点にあります。 攻撃を受ける前の「予防」だけでなく、攻撃を受けることを前提とした「検知」や「復旧」といった事後対応までをカバーしており、組織のサイバーレジリエンス(回復力)向上に大きく貢献します。

ISMS (ISO/IEC 27001) - 国際標準の情報セキュリティマネジメント

ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)は、情報セキュリティ管理の仕組みを構築・運用するための国際規格「ISO/IEC 27001」に基づいています。 このフレームワークの最大の特徴は、第三者機関による認証制度が存在する点です。認証を取得することで、顧客や取引先に対して、情報セキュリティを適切に管理していることを客観的に証明でき、組織の信頼性向上に直結します。 NIST CSFがサイバーセキュリティに重点を置いているのに対し、ISMSは情報の「機密性・完全性・可用性」を維持するため、技術的な対策だけでなく、組織のルール策定や従業員教育、物理的な対策といったマネジメントシステム全体の構築を要求します。

CIS Controls - 実践的なサイバー防御策の集合体

CIS Controlsは、米国の非営利団体CIS(Center for Internet Security)が発行する、サイバー攻撃対策に特化したガイドラインです。 このフレームワークの核心は、「今そこにある脅威」に対して最も効果的な対策は何か、という観点から、実施すべき防御策が優先順位付けされてリストアップされている点にあります。 例えば、バージョン8では18のコントロール(対策項目)が定義されており、さらに組織の規模やリソースに応じて「実装グループ(IG1, IG2, IG3)」が設定されています。 これにより、セキュリティ対策に多くのリソースを割けない中小企業でも、まずは最低限実施すべき基本的な対策(IG1)から着手することが可能です。具体的かつ実践的なため、どこから手をつければよいか分からない組織にとって、非常に有用な手引きとなります。

PCI DSS - クレジットカード業界のデータセキュリティ基準

PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)は、国際カードブランド5社(American Express, Discover, JCB, MasterCard, Visa)が共同で策定した、クレジットカード情報を保護するためのセキュリティ基準です。 このフレームワークは、カード会員データを「保存、処理、伝送する」すべての事業者に対して適用され、準拠することが取引継続の条件となる、事実上の「義務」である点が他のフレームワークと大きく異なります。 安全なネットワークの構築、カード会員データの保護、脆弱性管理プログラムの維持など、具体的で詳細な12の要件が定められており、準拠するためには年1回の訪問審査や四半期ごとのネットワークスキャンなどが求められます。

その他のフレームワーク

上記以外にも、特定の目的や業界に特化したフレームワークが存在します。

  • サイバーセキュリティ経営ガイドライン: 日本の経済産業省とIPA(情報処理推進機構)が策定した、経営者がリーダーシップを発揮してサイバーセキュリティ対策に取り組むためのガイドラインです。 経営者が認識すべき3原則と、情報セキュリティ担当役員(CISO等)に指示すべき重要10項目が示されています。
  • FISC安全対策基準: 日本の金融情報システムセンター(FISC)が策定した、金融機関向けの情報システムに関する安全対策基準です。金融機関や関連サービス事業者が遵守すべき詳細な基準が定められています。

これらのフレームワークは、どれか一つだけを選べばよいというものではなく、目的に応じて複数を組み合わせて活用することも有効です。例えば、ISMSで組織全体のマネジメント基盤を構築し、NIST CSFでサイバーリスク管理を強化、そしてCIS Controlsで具体的な技術的対策を実践するといったアプローチが考えられます。

最新動向!NIST CSF 2.0の重要改訂ポイントを解説

2024年2月26日、米国国立標準技術研究所(NIST)は、世界中の多くの組織でサイバーセキュリティ対策の指針とされている「NIST Cybersecurity Framework (CSF)」のメジャーアップデート版である「CSF 2.0」を公開しました。 初版の公開から約10年ぶりの大幅改訂となり、現代のビジネス環境や脅威動向に合わせて、より実践的かつ包括的な内容へと進化しています。
一見難しく感じるかもしれませんが、今回の改訂の要点はシンプルです。では、具体的に何が、どのように変わったのでしょうか?主なポイントは次の3つです。

  • 適用範囲の拡大:重要インフラだけでなく、あらゆる規模・業種の組織へ
  • 新機能の追加:セキュリティ対策の根幹をなす「ガバナンス」
  • 重点項目の強化:巧妙化する攻撃に対応するための「サプライチェーンリスクマネジメント」

本章では、これらの重要改訂ポイントを一つひとつ掘り下げ、なぜ今この変更が必要だったのかを分かりやすく解説します。

適用範囲の拡大と正式名称の変更

今回の改訂で最も象徴的な変更点が、フレームワークの対象が「重要インフラ」から「あらゆる組織」へと正式に拡大されたことです。 これに伴い、文書の正式名称も変更されました。
この変更の背景には、初版公開以降、CSFが重要インフラ関連組織だけでなく、世界中の民間企業や政府機関、さらには中小企業に至るまで、規模や業種を問わず幅広く活用されてきた実績があります。 CSF 2.0は、その実態を追認し、より多くの組織が自らの状況に合わせて活用しやすくするために、表現の一般化や、中小企業向けのガイドなどが整備されました。

バージョン 正式名称 主な対象
CSF 1.1 Framework for Improving Critical Infrastructure Cybersecurity
(重要インフラのサイバーセキュリティを向上させるためのフレームワーク)
米国の重要インフラ事業者
CSF 2.0 The Cybersecurity Framework
(サイバーセキュリティフレームワーク)
すべてのセクター・規模の組織

例えば、これまで「自社には関係ない」と考えていた従業員数十名規模の中小企業でも、CSF 2.0を簡易的なチェックリストとして利用することで、自社のセキュリティ対策における基本的な抜け漏れを洗い出し、優先的に取り組むべき課題を特定することが可能になります。

新たな中核機能「ガバナンス (Govern)」の追加

CSF 2.0における最大の変更点として、6番目の新たな中核機能として「ガバナンス(Govern)」が追加されたことが挙げられます。 これまでのCSFは「特定」「防御」「検知」「対応」「復旧」の5つの機能で構成されていましたが、ガバナンスはこれらの活動全体の土台となり、方向性を示す中心的な役割を担います。
なぜ今、ガバナンスが追加されたのでしょうか?それは、サイバーセキュリティがもはやIT部門だけの問題ではなく、組織全体の戦略やリスク管理と不可分な「経営課題」であるという認識が世界的に高まっているためです。 ガバナンス機能の追加は、セキュリティ対策が経営層のリーダーシップのもとで、組織の目標と整合性をとりながら、トップダウンで推進されるべきであることを明確に示しています。
具体的に「ガバナンス」機能は、以下の6つのカテゴリで構成されています。

  • 組織の状況(GV.OC): 組織のミッションや利害関係者の期待を理解する。
  • リスクマネジメント戦略(GV.RM): 組織のリスク許容度を定め、戦略を策定・伝達する。
  • 役割、責任、権限(GV.RR): サイバーセキュリティに関する役割と責任を明確にする。
  • 方針(GV.PO): 組織の方針を策定し、実行を監督する。
  • 監督(GV.OV): 対策の成果を監視し、改善活動を推進する。
  • サイバーセキュリティ・サプライチェーンリスクマネジメント(GV.SC): サプライチェーンに関するリスク管理プロセスを確立する。

例えば、経営会議でサイバーリスクに関する報告が定期的に行われ、事業計画と連動したセキュリティ投資の意思決定がなされるプロセスは、この「ガバナンス」機能の実践例と言えます。

サプライチェーンリスクマネジメント (C-SCRM) の強化

近年、セキュリティ対策が強固な大企業そのものを狙うのではなく、取引先や子会社など、セキュリティが比較的脆弱なサプライチェーン上の組織を踏み台にする「サプライチェーン攻撃」が世界的に急増しています。 国内でも、大手製造業が取引先のシステム障害によって工場の稼働停止に追い込まれるなど、深刻な被害事例が発生しています。
このような背景を受け、CSF 2.0ではサプライチェーンリスクマネジメント(Cybersecurity Supply Chain Risk Management: C-SCRM)の重要性がこれまで以上に強調されました。 具体的には、C-SCRMは前述の新たな「ガバナンス」機能の中の独立したカテゴリ(GV.SC)として明確に位置づけられ、関連する対策項目が大幅に拡充されています。
これは、自社のセキュリティ対策を完璧にしても、サプライヤーや外部委託先が攻撃されれば事業継続に致命的な影響が及ぶ可能性があるため、サプライチェーン全体を一つの共同体と捉え、一体となってリスク管理に取り組む必要性を示しています。 企業に求められる対策の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 委託先やサプライヤーに対するセキュリティ評価の実施
  • 契約書にセキュリティ対策に関する要件を明記
  • 製品やサービスのライフサイクル全体を通じた脆弱性管理
  • サプライチェーンを跨いだインシデント発生時の情報共有と連携体制の構築

CSF 2.0へのアップデートは、現代のサイバーセキュリティが直面する課題を的確に反映したものです。これらの変更点を正しく理解し、自社のセキュリティ戦略を見直すことが、将来の脅威に備えるための第一歩となります。

NIST CSFの6つの中核機能(コア)を理解する

NIST CSFの6つの中核機能(コア)を理解する

NIST Cybersecurity Framework (CSF) 2.0は、サイバーセキュリティ対策のライフサイクル全体を網羅する、6つの「中核機能(コア)」を定義しています。これらは、従来の「特定」「防御」「検知」「対応」「復旧」の5つの機能に加え、2024年2月に公開されたバージョン2.0で新たに「ガバナンス」が中心的な機能として追加されたものです。 この6つの機能は互いに関連し合っており、組織が体系的かつ継続的にセキュリティレベルを向上させるための道しるべとなります。一見難しく感じるかもしれませんが、一つひとつの機能の目的を理解すれば、自社に必要な対策が見えてくるはずです。では、具体的に各機能がどのような役割を担うのかを見ていきましょう。

ガバナンス (Govern) - 組織統治

「ガバナンス」は、CSF 2.0で新たに追加された、他の5つの機能すべてを支える最も重要な土台となる機能です。 これは、サイバーセキュリティ対策がもはやIT部門だけの課題ではなく、経営層が主導すべき経営課題であるという認識が世界的に高まっていることを反映しています。 この機能は、組織のセキュリティ戦略や方針を策定し、リスク管理体制を構築・監督することを目的とします。
具体的には、以下のような活動が含まれます。

  • 組織的なセキュリティ方針の策定: 組織全体の情報セキュリティポリシーや関連規程を定め、全従業員に周知徹底します。
  • 役割と責任の明確化: CISO(最高情報セキュリティ責任者)などの責任者を任命し、セキュリティに関する役割分担と責任の所在を明らかにします。
  • リスクマネジメント戦略の確立: 組織が許容できるリスクのレベルを定義し、リスク評価の基準や優先順位付けの方法を定めます。
  • サプライチェーンリスク管理 (C-SCRM): 近年増加しているサプライチェーン攻撃に対応するため、委託先や取引先企業のセキュリティリスクを評価し、管理する体制を構築します。

導入事例: ある製造業では、経営会議でサイバーセキュリティを定期的な議題として取り上げ、事業部門ごとにリスク評価を実施。その結果に基づき、CISOが主導して全社的なセキュリティ投資計画を策定し、取締役会の承認を得て実行しています。これにより、場当たり的な対策ではなく、経営戦略と連動したセキュリティガバナンスを実現しました。

特定 (Identify) - リスクの理解

「特定」は、自組織が何を保護すべきで、どのようなサイバーセキュリティリスクに晒されているかを正確に理解するための活動です。効果的な対策を講じるためには、まず敵と自分を知る必要があります。このフェーズでは、組織の資産やビジネス環境、そして潜在的な脅威を洗い出します。
この機能は、主に以下のカテゴリに分類されます。

カテゴリ 主な活動内容の例
資産管理 社内で利用しているサーバー、PC、ソフトウェア、クラウドサービスなどのIT資産を台帳にまとめ、重要度を分類する。
ビジネス環境の理解 自社の事業内容やサプライチェーン、データの流れを把握し、事業継続における重要業務を特定する。
リスクアセスメント 特定した資産や業務に対する脅威(例:マルウェア感染、不正アクセス)と脆弱性を分析し、リスクの発生可能性と影響度を評価する。
リスク管理戦略 評価したリスクに対し、「低減」「受容」「回避」「移転(保険加入など)」といった対応方針を決定する。

具体例: 金融機関A社では、半年に一度、全社的なリスクアセスメントを実施しています。顧客情報データベースを最重要資産と特定し、外部からの不正アクセスや内部関係者による情報漏洩などの脅威シナリオを複数想定。それぞれのシナリオについて、発生確率と想定される被害額(顧客への補償、信用の失墜など)を算出し、対策の優先順位を決定しています。

防御 (Protect) - 保護策の実装

「防御」は、「特定」フェーズで明らかになったリスクに対して、具体的な保護策を導入し、インシデントの発生を未然に防ぐことを目的とします。 これは、サイバー攻撃の影響を制限し、重要なサービスやインフラの機能を維持するための重要なステップです。

具体的な対策には、技術的なものから人的・物理的なものまで幅広く含まれます。

  • アクセス制御: 従業員の役職や職務に応じて、システムやデータへのアクセス権限を必要最小限に絞る「最小権限の原則」を適用します。
  • ID管理と認証: 多要素認証(MFA)を導入し、IDとパスワードの使い回しを禁止するなど、なりすましによる不正アクセスを防止します。
  • データセキュリティ: 保管中および通信中の重要データを暗号化し、万が一漏洩した場合でも内容を読み取られないようにします。
  • 従業員教育: 標的型攻撃メール訓練やセキュリティ研修を定期的に実施し、従業員のセキュリティ意識を向上させます。
  • 情報保護プロセスと手順: バックアップの取得とテスト、システムの脆弱性管理などを定常的に行うプロセスを確立します。
  • 数値例: ある調査によると、多要素認証を有効にすることで、アカウント乗っ取り攻撃の99.9%を防ぐことができると報告されています。これは、防御策がいかに効果的かを示す一例です。

検知 (Detect) - 脅威の早期発見

どれだけ強固な防御策を講じても、全ての攻撃を100%防ぐことは不可能です。 そこで重要になるのが「検知」です。この機能は、組織のネットワークやシステムへの侵入や異常な活動を、可能な限り迅速に発見することを目的とします。 攻撃を早期に発見できれば、被害が拡大する前に対処することが可能になります。
検知のための主な活動は以下の通りです。

  • 異常とイベントの監視: EDR(Endpoint Detection and Response)やIDS/IPS(不正侵入検知・防御システム)を導入し、PCやサーバー、ネットワーク上の不審な挙動を監視します。
  • 継続的なモニタリング: SIEM(Security Information and Event Management)などのツールを活用し、様々な機器から出力されるログを一元的に収集・分析することで、攻撃の兆候を早期に捉えます。
  • 検知プロセスの確立: アラートが発生した際の確認手順やエスカレーションルートをあらかじめ定めておきます。

具体例: 大手ECサイト運営会社では、24時間365日体制のSOC(Security Operation Center)を設置。世界中の脅威インテリジェンス(攻撃者の手法や脆弱性に関する情報)を常に収集し、SIEMで検知されたアラートと照合することで、未知の攻撃手法にも迅速に対応できる体制を整えています。

対応 (Respond) - インシデントへの対処

「対応」は、セキュリティインシデント(事故)が検知された後に、その影響を最小限に抑えるための行動計画を策定し、実行する機能です。 インシデント発生時の混乱を避け、迅速かつ的確に行動するためには、事前の準備が不可欠です。

この機能には、以下のような活動が含まれます。

  • 対応計画の策定: インシデントの種類(マルウェア感染、DDoS攻撃など)ごとに、具体的な対応手順、報告体制、関係者への連絡方法などを定めたインシデントレスポンスプランを準備します。
  • 分析: インシデントの原因や影響範囲を特定するため、ログの解析やフォレンジック調査を実施します。
  • 封じ込めと根絶: 被害の拡大を防ぐため、感染した端末をネットワークから隔離するなどの措置を講じます。その後、マルウェアの駆除など、インシデントの根本原因を取り除きます。
  • コミュニケーション: 経営層、法務部門、広報部門、そして必要に応じて外部の専門機関や監督官庁と連携し、情報共有を行います。

導入事例: あるサービスプロバイダーは、ランサムウェア攻撃を想定したインシデント対応訓練を年2回実施しています。訓練では、実際にシステムを隔離する手順や、顧客への通知文案の作成、記者会見のシミュレーションまで行い、いざという時に各担当者が冷静に行動できるよう備えています。

復旧 (Recover) - 回復力の確保

最後の機能である「復旧」は、インシデントによって停止または影響を受けたシステムやサービスを、正常な状態に回復させることを目的とします。 事業継続性を確保し、顧客や取引先からの信頼を維持するために極めて重要なプロセスです。
復旧フェーズの主な活動は以下の通りです。

  • 復旧計画の策定: 事業継続計画(BCP)と連携し、システムの復旧優先順位や目標復旧時間(RTO)を定めます。
  • 実行: 事前に取得しておいたバックアップデータを用いて、システムやデータをリストアします。
  • 改善: インシデント対応の全プロセスを振り返り、報告書を作成します。今回の対応における課題点を洗い出し、再発防止策を策定してセキュリティポリシーや対応計画に反映させることで、将来のインシデントへの対応能力を高めます。
  • コミュニケーション: 顧客や関係者に対して、復旧の進捗やサービス再開の見通しについて、適時適切な情報提供を行います。

具体例: 災害によりデータセンターが被災したケースを想定し、ある企業では遠隔地のクラウド環境に主要システムのバックアップをリアルタイムで複製しています。これにより、万が一メインサイトがダウンしても、数時間以内にクラウド上の待機系システムに切り替えて事業を継続できる体制(DR: ディザスタリカバリ)を構築しています。

自社に最適なセキュリティフレームワークの選び方

数あるセキュリティフレームワークの中から、自社にとって最適なものを選び出すことは、効果的なセキュリティ対策の第一歩です。一見難しく感じるかもしれませんが、実はいくつかのステップに沿って検討することで、自社の状況に合ったフレームワークを見つけ出すことができます。選択を誤ると、貴重なリソースを浪費するだけでなく、対策が形骸化し、かえってリスクを高めてしまう可能性すらあります。ここでは、最適なフレームワークを選ぶための3つのステップを具体的に解説します。

ステップ1:組織の目的とビジネス要件を明確にする

最初にすべきことは、「何のためにセキュリティ対策を行うのか」という目的を明確にすることです。目的が曖昧なままでは、どのフレームワークが適しているかを判断する軸が定まりません。まずは以下の様な観点から、自社の目的とビジネス要件を洗い出してみましょう。

  • 顧客や取引先からの信頼獲得: ISMS (ISO/IEC 27001) 認証の取得が、取引条件になっているケースは少なくありません。対外的な信頼性のアピールが主目的であれば、認証制度のあるフレームワークが有力な候補となります。
  • 事業継続性の確保: サイバー攻撃を受けても事業を迅速に復旧させる「サイバーレジリエンス」の強化が目的であれば、NIST CSFのようにインシデントの検知・対応・復旧プロセスを重視するフレームワークが適しています。
  • サプライチェーン全体のセキュリティ強化: 近年増加するサプライチェーン攻撃への対策が急務であれば、NIST CSF 2.0で強化されたサプライチェーンリスクマネジメント(C-SCRM)の観点が重要になります。
  • 新サービスの開始: 例えば、金融関連の新規事業を立ち上げるのであれば、FISC安全対策基準への準拠が求められます。このように、特定のビジネス要件から必要なフレームワークが定まることもあります。

これらの目的と要件をリストアップし、組織内で優先順位を付けることで、フレームワーク選定の方向性が明確になります。

ステップ2:規制や法令遵守の要件を確認する

次に、自社が事業を行う上で遵守すべき法律や業界基準を正確に把握することが不可欠です。法令違反は、罰金や事業停止といった直接的なペナルティに加え、企業の社会的信用を大きく損なうことにつながります。特に注意すべき法令や基準には、以下のようなものがあります。

国内外の事業展開に応じて、準拠すべき法令は異なります。例えば、EU圏の市民の個人データを取り扱う場合はGDPR(EU一般データ保護規則)への対応が必須です。自社のビジネス領域でどのような規制が課せられているかを確認し、それらの要件を満たすフレームワークを選定する必要があります。

遵守要件の例 概要 関連するフレームワークの例
個人情報保護法 国内で個人情報を取り扱うすべての事業者が遵守すべき法律です。 ISMS (ISO/IEC 27001)、プライバシーマーク (JIS Q 15001)
サイバーセキュリティ経営ガイドライン 経済産業省とIPAが策定した、経営者がリーダーシップを発揮してサイバーセキュリティ対策を推進するための指針です。 NIST CSF, CIS Controls
PCI DSS クレジットカード会員のデータを安全に取り扱うことを目的とした、カード業界の国際的なセキュリティ基準です。 PCI DSS
FISC安全対策基準 日本の金融情報システムセンター(FISC)が定める、金融機関等の情報システムに関する安全対策基準です。 FISC安全対策基準

これらの規制要件は、フレームワーク選定における「必須項目」と捉えるべきでしょう。例えば、経済産業省が公開している「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」では、NIST CSFなどのフレームワーク活用が推奨されています。

ステップ3:組織の規模や成熟度を評価する

最後に、自社の体力、つまり組織の規模やリソース、そして現在のセキュリティ対策レベル(成熟度)を客観的に評価します。理想を追求するあまり、身の丈に合わないフレームワークを選んでしまうと、導入・運用が形骸化し、現場の負担が増えるだけという結果になりかねません。

組織の規模とリソース

  • 大企業・中堅企業: 専任のセキュリティ部門があり、予算や人材に比較的余裕がある場合は、NIST CSFやISMSのような網羅的で体系的なフレームワークを導入し、組織全体のセキュリティガバナンスを強化することが可能です。
  • 中小企業: リソースが限られている場合は、実践的で優先順位が明確なCIS Controlsから着手するのが現実的です。CIS Controlsは、実施すべき対策が具体的で分かりやすく、少ないリソースでも効果を上げやすいという特徴があります。

セキュリティ対策の成熟度

組織のセキュリティ対策がどの段階にあるのかを評価することも重要です。ここでは、NIST CSFで示されている「ティア」という成熟度の考え方が参考になります。

  • 成熟度が低い段階(これから対策を本格化する): まずは基本的な防御策を固めることが最優先です。CIS Controlsの中でも、特に基本的な対策項目をまとめた「実装グループ1(IG1)」から始めることで、着実にセキュリティレベルを向上させることができます。
  • 成熟度が高い段階(既にある程度の対策を実施済み): 既存の対策を評価し、より高度な管理体制を構築するために、NIST CSFやISMSの導入を検討する段階です。これらのフレームワークは、継続的な改善プロセス(PDCAサイクル)を回していく上で非常に有効です。

例えば、従業員100名のある製造業の企業が、取引先からセキュリティ強化を求められたケースを考えてみましょう。この企業はこれまで体系的な対策を行っていませんでした。そこでまず、CIS Controlsを導入してサーバーの脆弱性管理やアクセス制御といった基本的な対策を固めました。その2年後、組織全体の管理体制を構築するためにISMS認証を取得し、対外的な信頼性を獲得することに成功しました。このように、自社の成長段階に合わせてフレームワークを段階的に導入・移行していくことも有効なアプローチです。

セキュリティフレームワーク導入の進め方

セキュリティフレームワーク導入の進め方

セキュリティフレームワークの導入は、一度きりのプロジェクトではありません。組織の成長や外部環境の変化に対応し続ける、継続的な改善活動です。ここでは、フレームワーク導入を体系的に進めるための4つのフェーズについて、具体的なアクションと共に解説します。

フェーズ1:現状評価と目標設定

全ての土台となるのが、自社の現在地を正確に把握し、目指すべきゴールを明確にする「現状評価」と「目標設定」です。このフェーズが曖昧なままでは、後のプロセスがすべて的はずれなものになりかねません。まずは組織が保有する情報資産や、既存のセキュリティ対策状況を徹底的に洗い出すことから始めましょう。

現状評価(As-Is分析)の進め方

現状評価では、客観的な視点で自社のセキュリティレベルを可視化します。具体的には、以下のような項目を調査・整理します。

  • 情報資産の棚卸し:サーバー、ネットワーク機器、PC、ソフトウェア、顧客情報、技術情報など、保護すべき資産をリストアップします。
  • 既存ルールの確認:現在運用されている情報セキュリティポリシーや関連規程の内容を精査します。
  • 対策状況のヒアリング:各部署の担当者に、実際の業務におけるセキュリティ対策の実施状況(パスワード管理、データの取り扱いなど)をヒアリングします。
  • 技術的な脆弱性診断:専門ツールを用いて、システムやネットワークに潜む脆弱性をスキャンし、技術的な弱点を把握します。

目標設定(To-Beモデルの策定)

現状を把握したら、次に「あるべき姿」を描きます。このとき、事業戦略や法令・規制の要求事項と連動した、具体的で測定可能な目標を設定することが重要です。

例えば、NIST CSFが定める「ティア」を参考に、「現在のティア2(リスク情報に基づいた管理)から、2年後にはティア3(反復可能)のレベルを目指す」といった目標を立てることが考えられます。これにより、組織全体で目指す方向性が明確になります。

フェーズ2:ギャップ分析と実行計画の策定

現状(As-Is)と目標(To-Be)が明確になったら、その「差分=ギャップ」を特定し、それを埋めるための具体的なロードマップを作成します。 このギャップ分析こそが、限られたリソースをどこに優先的に投下すべきかを判断するための羅針盤となります。

ギャップの特定と優先順位付け

選択したフレームワーク(例:NIST CSF)の管理項目と、自社の現状評価の結果を一つひとつ突き合わせ、対策が「未実施」「不十分」「実施済み」のいずれであるかを評価します。全てのギャップを一度に解消するのは非現実的であるため、以下の観点から優先順位を決定します。

  • リスクの大きさ:そのギャップが放置された場合に想定されるビジネスへの影響度と、インシデントの発生可能性を掛け合わせて評価します。
  • 対策の難易度とコスト:対策に必要な時間、人員、予算を考慮します。
  • 法令・規制要件への影響:法的に遵守が求められる項目は、最優先で対応する必要があります。

実行計画(ロードマップ)の策定

優先順位付けの結果に基づき、誰が、いつまでに、何を実施するのかを具体的に定めた実行計画を作成します。短期(~3ヶ月)、中期(~1年)、長期(1年~)といった時間軸でタスクを整理すると、進捗管理がしやすくなります。

以下は、ギャップ分析と実行計画の策定例です。

管理策カテゴリ 目標(To-Be) 現状(As-Is) ギャップと具体的な対策 優先度 担当部署 完了目標
ID管理とアクセス制御 全ての特権IDを管理し、定期的な棚卸しを実施 一部サーバーの特権IDが共有されており、棚卸しも年1回のみ 特権ID管理ツールを導入し、申請・承認フローを整備。四半期ごとの棚卸しを義務化。 情報システム部 6ヶ月後
従業員教育 全従業員に対し、年2回の標的型攻撃メール訓練を実施 新入社員研修時のみ実施 訓練プラットフォームを契約し、半期に一度、全社一斉の訓練を計画・実行。 人事部・情報システム部 3ヶ月後
インシデント検知 主要サーバーの操作ログを収集・分析し、異常を検知できる体制 ログは取得しているが、定常的な監視・分析は未実施 SIEM(セキュリティ情報イベント管理)製品を導入し、SOCサービスと連携して24時間365日の監視体制を構築。 情報システム部 1年後

フェーズ3:対策の実施と体制構築

実行計画が完成したら、いよいよ具体的な対策を実行に移します。ここでは、ツールの導入やルールの整備といった技術的・物理的な対策と並行して、セキュリティを組織文化として根付かせるための「体制構築」が極めて重要になります。
計画倒れを防ぎ、実効性を担保するためには、経営層の強いコミットメントが不可欠です。 経営層がセキュリティの重要性を理解し、必要なリソース(人・モノ・金)を配分する意思を明確に示すことで、全社的な取り組みへと昇華させることができます。

具体的な対策の実施

実行計画に基づき、優先度の高い項目から着実にタスクを進めます。これには以下のような活動が含まれます。

  • セキュリティポリシーや関連規程の策定・改訂
  • EDR(Endpoint Detection and Response)やIDaaS(Identity as a Service)といったセキュリティソリューションの導入
  • 全従業員を対象としたセキュリティ意識向上トレーニングの実施
  • サーバーのアクセス制御強化やデータの暗号化

インシデント対応体制の構築

インシデントの発生を100%防ぐことは不可能です。そのため、万が一インシデントが発生した際に、被害を最小限に抑え、迅速に復旧するための専門チーム「CSIRT(Computer Security Incident Response Team)」の構築が推奨されます。 CSIRTは、インシデントの受付窓口、原因調査、復旧作業の指揮、関係各所への報告といった役割を担います。

フェーズ4:継続的な監視と改善

セキュリティフレームワークの導入は、一度完了すれば終わりというものではありません。サイバー攻撃の手法は日々進化し、ビジネス環境も変化するため、導入した対策が有効に機能しているかを常に監視し、改善を続けるPDCAサイクルを回すことが不可欠です。

監視と評価

対策の効果を客観的に評価するために、継続的な監視活動を行います。

  • ログの監視と分析:各種セキュリティ機器やサーバーのログを常時監視し、不審なアクティビティの兆候を早期に発見します。
  • 定期的な脆弱性診断:新たな脆弱性が発見されていないか、定期的にシステムを診断します。
  • 内部監査・外部監査:策定したルールが形骸化せず、適切に運用されているかを第三者の視点でチェックします。

改善活動

監視・評価の結果や、発生したインシデントから得られた教訓をもとに、セキュリティ対策を見直します。例えば、標的型攻撃メール訓練の結果、特定の部署で開封率が高かった場合は、その部署を対象に追加の教育を実施するなどの改善策を講じます。このような地道な改善活動の積み重ねが、組織全体のセキュリティレベルを継続的に向上させていくのです。

よくある質問(FAQ)

セキュリティフレームワークとは、具体的に何を指すのでしょうか?

セキュリティフレームワークとは、組織が情報セキュリティのリスクを管理し、対策を体系的に実施するための「雛形」や「骨組み」のことです。どのような対策を、どのレベルで、どのように行うべきかを示したベストプラクティス集と考えると分かりやすいでしょう。これにより、場当たり的でない、一貫性のあるセキュリティ対策が可能になります。

中小企業でもセキュリティフレームワークの導入は必要ですか?

はい、必要です。サイバー攻撃は企業の規模を問わず行われます。特に近年は、サプライチェーンの弱点を狙った攻撃が増加しており、中小企業が大手企業の取引先という理由で標的になるケースも少なくありません。NIST CSF 2.0のように、あらゆる規模や業種の組織で利用できるよう設計されたフレームワークもありますので、自社の規模に合わせて導入を検討することが重要です。

NIST CSFとISMS(ISO/IEC 27001)は、どちらを選べば良いのでしょうか?

どちらを選ぶべきかは、組織の目的によって異なります。ISMS(ISO/IEC 27001)は、第三者機関による審査を経て「認証」を取得できる国際規格です。そのため、対外的にセキュリティ体制の信頼性を示したい場合に非常に有効です。一方、NIST CSFは認証制度を前提としない「ガイドライン」であり、より柔軟に自社の状況に合わせてセキュリティ対策を強化したい場合に適しています。両者を組み合わせて活用することも可能です。

NIST CSF 2.0の改訂で、最も重要な変更点は何ですか?

最も重要な変更点は、新たな中核機能として「ガバナンス(Govern)」が追加されたことです。これは、セキュリティ対策が単なる技術的な問題ではなく、経営戦略と密接に連携すべき経営課題であるという考え方を明確に示しています。経営層が主導してセキュリティ戦略を策定し、リスクを管理することの重要性が、これまで以上に強調されたと言えるでしょう。

フレームワークを導入すれば、セキュリティインシデントは完全に防げますか?

いいえ、完全に防ぐことはできません。セキュリティフレームワークは、インシデントの発生確率を低減し、万が一発生した際の被害を最小限に抑え、迅速に復旧するための体制を構築するものです。「100%の防御」は存在しないという前提のもと、インシデント発生後の「検知」「対応」「復旧」まで含めた、組織全体の回復力(レジリエンス)を高めることが導入の真の目的です。

まとめ

本記事では、セキュリティフレームワークの基本から、国内外の主要なモデル、そして最新動向であるNIST CSF 2.0の改訂ポイントまで、幅広く解説しました。

サイバー攻撃が巧妙化し、ビジネスのデジタル化が進む現代において、もはや勘や経験に頼った属人的なセキュリティ対策では組織を守り切ることは困難です。では、どうすれば体系的で実効性のある対策を構築できるのでしょうか?その答えが、セキュリティフレームワークの活用にあります。

特に、NIST CSF 2.0で「ガバナンス」が中核機能として新たに追加されたことは、非常に重要な示唆を与えています。これは、セキュリティが経営課題そのものであり、経営層のリーダーシップのもとで全社的に取り組むべきテーマであることを明確に示しているのです。

一見複雑に思えるセキュリティフレームワークですが、その本質は、自社の現状を客観的に評価し、目指すべき姿とのギャップを埋めていくための「道しるべ」です。導入することで、セキュリティレベルの向上はもちろん、顧客や取引先からの信頼獲得、そして事業継続性の強化にも繋がります。

セキュリティフレームワークは、単なる技術的な対策リストではなく、経営と一体となったセキュリティ文化を醸成するための羅針盤なのです。この記事を参考に、まずは自社のセキュリティ体制の現状把握から、その第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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【本記事の監修体制について】

執筆:リードプラス株式会社

監修:リアルテックジャパン株式会社SAPソリューション事業

この記事は、SAP導入プロジェクトの豊富な経験を持つ当社の専門部門が内容を精査し、 以下の最終承認プロセスを経て公開しています。

最終監修責任者:リアルテックジャパン株式会社 代表取締役社長 松浦 一哉

企業の代表として、お客様の課題解決に繋がる有益で正確な情報発信に責任を持って取り組んでまいります。


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