企業におけるセキュリティ対策がますます重要視される中、ID管理システム(Identity Management System)の導入が不可欠になっています。本記事では、ID管理システムの概要や機能、メリット、導入時のポイントなどを解説します。
ID管理システムの概要
近年、企業におけるID管理の重要性はますます高まっています。
企業が利用するシステムやクラウドサービスが増加し、適切なID管理によるセキュリティ対策と運用効率化の両立が求められているためです。 ここでは対策となるID管理の概要について解説します。
ID管理とは?
ID管理とは、企業や組織内で利用するさまざまなシステムやサービスのユーザIDを適切に管理することを指します。
従業員は業務でさまざまなシステムやサービスを日常的に利用しており、それぞれユーザーIDとパスワードが必要です。ユーザーIDやパスワードの共有といった不適切なID管理が行われていた場合、不正アクセスや不正利用の原因になりかねません。
ユーザーIDの適切な管理は、セキュリティリスクを低減するために必要不可欠な対策といえるでしょう。
ID管理システムの基本機能
ID管理システムには、主に以下の5つの基本機能があります。
機能 | 説明 |
---|---|
ユーザー管理 | 複数システムのユーザーIDを一元的に管理する |
アクセス制御 | ユーザーIDごとに適切なアクセス権を設定する |
認証機能 | パスワード認証だけでなく、シングルサインオン(SSO)や多要素認証(MFA)を設定する |
監査・ログ管理 | アクセス履歴を検査し不正アクセスを検知、管理者へアラートを発報する |
プロビジョニング | IDの作成や権限の付与を他システムと連携し自動化する |
これらの機能は管理者の工数削減や、自動化による設定誤りの防止が期待できます。
ID管理システムは多様なサービスやシステムを利用するために有効なソリューションといえるでしょう。
ID管理システムの導入メリット
ID管理システムは企業にさまざまなメリットをもたらします。主なメリットは以下の通りです。
メリット | 説明 |
---|---|
セキュリティの強化 | IDとパスワードの一元管理、多要素認証の導入、アクセス権限の厳格な設定などにより、不正アクセスや情報漏えいのリスクを低減する |
退職者のアカウント即時停止や異動に伴うアクセス権限の即時変更により、不正アクセスや情報漏えいのリスクを低減する | |
ログ監視機能により不正アクセスや不正利用の兆候を早期に検知し対応する | |
運用の効率化 | 手作業によるID発行・削除・変更作業を自動化することで、管理者の運用コストを軽減し人的ミスを防止する |
各システムへのログイン情報を一元管理することでSSOを実現し、ユーザーの利便性向上とパスワード管理の煩雑さを解消する | |
コンプライアンス対応 | 操作ログの取得と監視により厳格な内部統制が可能になる |
個人情報保護法やGDPR(General Data Protection Regulation)、ISO27001などの法規制へ準拠し、コンプライアンスのリスクを低減する |
ID管理システムの導入は、企業競争力を高めるための戦略的投資であり、企業が持続的に発展するための基盤といえるでしょう。
ID管理システムの選定ポイント
ID管理システムにはさまざまな製品があります。自社のニーズに合った最適なID管理システムを選定しましょう。ここではID管理システムの選定ポイントを解説します。
クラウド型ID管理システムとオンプレミス型ID管理システムの比較
ID管理システムには、クラウド型とオンプレミス型という2つの導入形態があります。それぞれのメリットとデメリットは以下の通りです。
クラウド型 | オンプレミス型 | |
---|---|---|
導入コスト | 低い | 高い |
運用負担 | 低い(クラウドベンダーが管理) | 高い(自社で管理) |
セキュリティ | クラウドベンダーに依存する | 自社で管理可能 |
カスタマイズ性 | 低い(クラウドベンダーが提供するオプションに依存) | 高い(自社の独自運用に合わせて変更可能) |
クラウド型の場合はサーバやソフトウェア、ミドルウェアといった設備が不要な場合が多く、初期費用を抑えられる傾向があります。
また、自社が独自のシステムを運用している場合は、カスタマイズのできるオンプレミス型が有利です。
しかし、カスタマイズ分は個別費用が必要だったり、管理項目が増えたりして負担が大きくなるおそれがあります。
運用をID管理システムのパッケージに合わせることで、カスタマイズを減らす方法を検討してもいいでしょう。
拡張性を考慮したID管理システムの選定
ID管理システムは、導入後も自社の成長に合わせて拡張していく必要があります。そのため、将来的なユーザー数の増加や新たなシステムとの連携を見据えて、拡張性の高いシステムを選定することが重要です。
拡張性を考慮する際の主なポイントは以下の通りです。
ポイント | 説明 |
---|---|
ユーザー数の上限 | 将来的にユーザー数の大幅な増加が見込まれる場合は、上限の高いシステムを選定する |
システム連携の容易さ | 今後、連携するシステムが増えたときに容易に連携できるAPI(Application Programming Interface)が提供されているかを確認する |
連携可能なシステムの確認 | 今後、利用する予定のシステムやクラウドサービスに連携できるのかをあらかじめ確認する |
特にユーザー数の上限に関しては、従業員だけでなく協力会社や委託先企業のユーザー数も必要な場合があります。ユーザー数が不足せずに利用できるか確認しましょう。
既存システムとのID統合
ID管理システムを導入する際には、既存システムとのID統合が重要な課題となります。
特に自社システムがクラウド型とオンプレミス型に分かれている場合、両方と連携できなければID管理システムのメリットが十分に生かされません。自社で利用しているオンプレミスのシステムとさまざまなクラウドサービスとの連携が可能か確認しましょう。
また、既存のユーザー情報を流用できる点が重要です。既存システムのユーザー情報を活用できれば、スムーズなID統合が可能になり管理者の負担を大きく軽減できるでしょう。
ID管理システム導入のステップ
ID管理システムを導入する際には、計画的なステップを踏むことが成功の鍵となります。
現状分析から運用開始までの主なステップは以下の5つです。
- 現状の分析:
自社のID管理における課題やニーズを分析して解決すべき目標を明確にします。 - 機能要件の明確化:
現状分析の結果を踏まえ、ID管理システムに求める機能要件を明確にします。レスポンスやメンテナンス性といった非機能要件も明確にするとよいでしょう。 - 製品の選定:
機能要件の明確化にもとづき、複数のID管理システムを比較検討し、自社に最適なシステムを選定します。 - 導入・設定:
選定したID管理システムを実際に導入し、各種設定を行います。導入・設定作業は専門的な知識が必要となる場合があるため、ベンダーのサポートを受けながら進めるとよいでしょう。 - 運用開始:継続的な監視と最適化を実施
ID管理システムの導入・設定が完了したら、運用を開始します。
運用開始後も継続的にシステムの監視と最適化を行い、セキュリティレベルの維持と運用効率の向上に努める必要があります。
また、定期的にルールやシステム設定を見直し、改善することで最新の脅威やビジネス環境の変化に対応可能となります。
ID管理に関するお問い合わせ
ID管理システムは自社の環境や課題、ニーズにより製品に求める機能が大きく変わってきます。システムの選定にはID管理システムに知見のある専門家に相談する方法が有効です。
リアルテックジャパン株式会社は、適切なID管理システムの導入を検討されている企業様向けに無料相談を受け付けています。
詳細な資料もご用意しておりますので、ぜひお問い合わせください。
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まとめ
ID管理システムは企業のセキュリティ強化、運用効率化、コンプライアンス対応に有効なシステムです。
今後、より多くのクラウドサービスやシステムの利用が見込まれ、ID管理システムの重要性はますます高まってくるでしょう。
自社に最適なID管理システムを導入し、より確実なセキュリティ管理と業務効率を向上させましょう。
- カテゴリ: ID管理