015/2/12追記
SAP ERPの次世代システム「S/4 HANA」が発表されました。
こちらは本記事で取り上げている SAP ERP6.0をHANA上で稼働させる製品の組み合わせとは異なりますのでご注意下さい。
S/4 HANAについては、こちらを参照して下さい。
すでに様々なメディアを通じて内容が露出しておりますが、リアルテック流に今一度ハイライトを当ててみたいと思います。
新しいテクノロジが新たに生まれてきた背景は、これから取り組む担当者のモチベーションの根源であり大変重要です。
今回発表会のイントロでそこが改めて語られたのはよかったです。
2006年 SAP共同創業者ハッソ・プラットナー氏がドイツのポツダム大学にHPI(
”What would an ERP system look like if we start from scratch?”
「もし我々が一から作り始めるとしたら、ERPシステムはどんなものになるのか?」
SAP社製品の中核今も昔も企業の大福帳DBであり、以前は「R/3」と呼ばれていましたが、この「R」はRealtimeの「R」から取られたことからもわかるように目指すところは「リアルタイムのさらなる追求」というところで、要は爆速のシステム、すなわち従来システムのボトルネックとなっていたディスクI/Oの限界を超えるために、①データをメモリー上に格納し、かつ②インメモリーに最適化されたトランザクションや③計画・分析処理に見合ったデータ格納方式まで実装するというまさしくスクラッチの発想から始まったとのこと。
この中で、①と③はどちらかといえば基盤の話ですが、②のインメモリーに最適化されたトランザクションというのが、ERPパッケージの雄たるSAP社の今回の目玉。本ブログでも「SAP HANAにおけるABAP開発とは:code pushdown」という記事でcode pushdownの解説をしていましたが、今回SAPパッケージ標準の400のトランザクションでpushdown作業が終わっていることで、すぐにHANAのメリットを享受することが可能になります。言い換えれば、トランザクションの幾つかが合わさったのが業務プロセスなので、今回の成果だけで具体的に23の業務プロセス改善に結びつくという内容でした。
カスタマイズされたトランザクションの一部が発表資料で公開されていますが、重い負荷かつキーとなるトランザクション満載。「なんでもかんでも code pushdown すればよいかというと、そうではない」というのは、先の記事にも書きましたが、とにかくSAP純正でやって頂いたのはありがたいです。
SAPシステム上のすべての機能は実装したソースまで追っかけられるので、まさしくcode pushdown のサンプルの塊みたいなものです。AddOnで作ったお客様特有のプログラムもこれを見ながら code pushdown することができるようになります、これもありがたいです。
無償のビジネスシナリオ推奨レポート提供
こちらのサイトからも申し込んで、Tr-Cd:ST03Nで取得できるトランザクション実行履歴をSAP社に送付することで、実際に自社で使用しているビジネスにどうインパクトがあるかのレポートを入手することができます。
まさしくITソリューション、すばらしい。(レポートのサンプルはこちらから)
デモ・デモ・デモ
デモがとてもよかったです。
特にライブデモは動画の10倍くらい現場の負荷かかっていると思いますが、どれもがわかりやすいものでした。
デモ1(ライブ)
・現場の営業さんが ipad をもって、お客様先を訪問します。
・お客様から「ある商品を4/1までに15個ほしいんだけど。」という依頼を頂きます。
・営業さんは、ipad から製品型番、数量、希望納期を入力します。
・即座に出荷ポイントごとに該当製品がいつの時点で何個準備できるかが表示されます。
こんな感じ。(あくまで雰囲気ですので、細かいところは適当です。)
通常配送 特別配送 代替品配送
出荷ポイント 最寄り 遠い ー
(=配送料別途発生) (旧モデル配送、安い)
出荷可能日付及び数量
4/1 10 15 20
4/8 15
金額 100 120 90
・この画面をみて、営業さんは即時に3つの提案を行います。
提案1)通常配送だと一部納期に間に合わず、4/8までには全て納品可。
提案2)配送料が別途発生するが希望日時に納品可能
提案3)旧製品でよければ、安くかつ希望日時に納品可能
・お客様は上記の提案から一つを選択します。
・営業さんはipadから即時に受注処理を行い、直ちにHANA上のERPに反映されます。
・営業部長さんが自部門のダッシュボード上にあるグループ売り上げ実績グラフが即時に反映されたことに気づきます。
・グラフをドリルダウンすると、ある営業さんが案件を受注したことがわかります。
・営業部長さんは、即座に担当営業さんに携帯で連絡し、労いの言葉を伝えいます。
・へとへとになった営業さんは上長からの労いの言葉に報われた感じがします。そして「明日も頑張ろう。」
上記の内容が、実際のビジネスシーンでサクサクッとリアルタイムで実現できるということ。
若干デモシナリオを盛ってしまいました;)、よい内容でした。
デモ2(動画)
こちらは複雑なシナリオでしたが、新たな気づきの多い動画ベースのデモです。
・あるお客様の自宅の冷蔵庫から変なノイズが発生しはじめました。
・お客様は自宅の冷蔵庫から変なノイズが発生しているというクレームを、SNS上で冷蔵提供ベンダーにつぶやきました。
・冷蔵庫提供ベンダーのカスタマセンターの担当者は即時にお客様情報を検索し、保有している製品の型番を把握します。併せて地図上で最寄りのサービス拠点を検索して保守要員のスケジュールを確認し、修理の提案(何時であればお伺いすることが可能)を行い、修理日付を確定するとともに、保守作業依頼伝票を社内で起票します。
・サービスマンは保守作業依頼伝票を参照します。事象から過去の類似事例を検索することで、修理箇所の特定を行うとともに、サービスカーに保守用のパーツが搭載されていることを確認します。
・サービスマンが修理に伺います。該当箇所の修理を行い、その際にある消耗品が交換する時期に来ていることをお客様に提案し、消耗品の交換作業も併せて実施します。
・サービスマンは修理作業報告を行います。
・修理作業報告を見て、同種製品を利用している顧客の抽出を行い、未然予防の点検サービス提案を立案するとともに、消耗品の新規提案を行います。
・当初お客様からのクレームから始まったものの、迅速なサービス提供で、結果的お客様は満足されて、この冷蔵庫ベンダーが好きになります。
こちらも若干デモシナリオを盛ってしまったかもしれません;)、よい内容でした。
当日の動画はすでに日本語のキャプチャーもついておりましたので、早期の公開を期待しております!>SAP様
デモ3(ライブ)
こちらは、SAPを知らなくてもMobile+HANAアプリが簡単にできると言うことのデモでした。
実際に作成されたのは、Web系を得意とされるClassMethodさんでSAPさんからの依頼で1-2日でサクサクッと作られたとのこと。
内容的には、HANA One(訂正します;汗、正しくは)AWS 上のJava環境からSAPさんの半蔵門4FにあるシスコUCSのERP on HANAに対して大量データのインサートを常時裏でかけつつ、GroupByなどの集計処理をして、結果をリアルタイムで表示されるというものでした。(我々もAWS上のHANA One、オンプレミスのHANA Applianceどちらも触っていますが、インサートの抜けは良好です。分析系の早さどうしても目立ってしまうのであえて補足です。)
また仮想データモデルにより、SAPの複雑なテーブル構造を理解する必要がなく、SAPを知らなくても容易に開発できるということでした。(資料にはSAP HANA Analytics Foundation(事情通の方は頭文字をとってシャフと呼ばれている。)内に、物理テーブルの上にPrivate View、Reuse View、Personalized VIewがあって、そちらがリアルタイムなビューとしてアクセスできるらしい。ここは今後要チェックですね。
最後になりましたが、関係者様(特にデモ作られたコンサルの方にハイライト!)にお礼を述べます、ありがとうございました、Wow! です。SAPのパートナーがやらないといけないこと、今回の発表会でかなり明確になりました、後はやるだけです。厳しいですが頑張ります。汗;
長文お読み頂きありがとうございました。
参考:
SAP Business Suite powered by SAP HANA のキャンペーンサイトはこちら。(情報まとまっています。)
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