本記事は、下記シリーズ記事の一部となり、他記事も参照されることをお勧めします。
第1回 【SAP標準機能活用】SAP標準のアーカイブ機能を使ってコスト削減
第2回 【SAP標準機能活用】SAP標準アーカイブ環境への既存データ移行(本記事)
第3回 【SAP標準機能活用】アーカイブ環境の見直し
第1回では、SAP標準のアーカイブ機能は実績もあるし、十分使えるものであることをご紹介しておりました。
今回は続編ということで、既存ですでにデータアーカイブを実装している方向けにアーカイブ見直しの背景とか技術説明となります。
アーカイブシステムを見直すきっかけ
1.アーカイブストレージの変化とハード保守切れ、アップグレード対応
SAPアーカイブデータの保管先としてのストレージシステムには様々な選択肢があります。
一昔前はWORM*メディアを採用したジュークボックス装置がSAP業界を席巻しましたが、ジュークボックス自体が時代の流れにそぐわず製品がなくなった結果、今はディスクが主流となりました。しかしながら金物なので当然保守切れのタイミングがあります。アップグレード対応の一環でアーカイブソフトの更新が必要になった(アーカイブ処理自体は地味に動いているので、結構忘れられていることも多いです。)というのもよく伺います。
*:WORMメディア:一度書き込みを行った後は読み取り専用になる(Write-Once Read-Many)メディア、CD-Rなど。
2.データ件数増大に起因するパフォーマンス低下発生とその改善
データベース圧縮機能の登場によりデータベース容量自体は劇的に低減しましたが、データ件数という意味ではアーカイブしない限り、長年の蓄積でどんどん増えることになります。
あとこれは感覚的なものですが、データ増の割合が昔と比べて増えているように感じます。10年以上全社的に使っているお客様でデータベースがいよいよ1TB超えたのでDB圧縮を行い、300GBになってよかったという話が数年前からありました。しかし最近ではTBは当たり前で、月次で数十~数百GBオーダーで増えているとかしばしば聞きます。
規模、用途でみてもSAP標準機能でそこまで増えるのはかなり難しく、ちょっと昔だったらアドオンが悪いからすぐアプリの改修要件だったのに、どうもそういう話にもなっていないようです。ガンガンSAPを使いこなしているからなのでしょうか、とにかく理由は不明ですが、正直びっくりすることも多いです。
3.ソフトウェアのコスト削減
弊社でアーカイブ関連でお仕事をさせて頂くことが多いのが、先の記事でも紹介したSAP標準アーカイブ環境に移行することです。そもそもソフトウエアは今のERP環境に搭載済みですし、ソフトウェア保守もそこで賄われますので、ソフトウェア関連のコストを下げることが可能です。
お待たせしました、既存アーカイブシステムで使用しているストレージを新しいストレージへ移行する方法に関する技術概要を説明します。
まず最初に、FAQ No.1の回答内容が下記になります。
既存のアーカイブシステムでサードベンダー製の専用ツールを使っていても、データが格納されているストレージにはSAP定義フォーマットで保存されており、データそのものはツールに依存していません。
つまり、データ移行のタイミングで既存のアーカイブツールを撤廃して、SAP標準のアーカイブ環境に移行できることがお客様が最も興味を持たれるポイントになります。
アーカイブ移行プロジェクトの進め方
弊社でよくあるアーカイブ移行プロジェクトは、この仕組み自体でお金を稼いでいるわけではないので、極力コスト、手間をかけずに進められるお客様が多いです。
なお、先にご説明した背景が別にある場合(パフォーマンスが出ない等)には、これと平行してアセスメントを進めます。
・簡単なカスタマイズの変更
既存のアーカイブ設計をそのまま踏襲し、かつ既存のカスタマイズはそのままです。
アーカイブデータ保存先の新ストレージシステムの定義を追加します。
・既存アーカイブデータの移行
SAP社が提供しているアーカイブ移行手法を用いて、既存のストレージシステムに保存されているデータを新規ストレージシステムへ移行します。これが完了すると、既存ストレージシステムの廃止が可能になります。
コンテンツリポジトリとは
ここからは、もう少し具体的に技術説明していきますが、まず最初に「コンテンツリポジトリ」について説明をします。
「コンテンツリポジトリ」とは、一言でいうとアーカイブデータを保存するストレージシステムの定義です。
コンテンツリポジトリの設定画面を見てみましょう。
t-cd:OAC0 コンテンツリポジトリ変更
下記の赤枠の項目を設定する必要があります。
次にアーカイブの条件や保存先等を設定する画面を見てみましょう。
t-cd:SARA アーカイブ管理
上記で定義したコンテンツリポジトリ名称を下記の赤枠で指定することができます。
上記の設定変更を実施することで、今後のアーカイブデータは新規ストレージシステムへ保存されるようになります。
(※イメージアーカイブの場合は追加でカスタマイズが必要になりますが、今回は割愛します。)
このままだと過去のアーカイブデータ参照のために既存のストレージシステムを残しておく必要がありますので、まだ廃止することが出来ません。
既存アーカイブデータの移行
既存で使用しているコンテンツリポジトリから新規ストレージシステムを宛先としたコンテンツリポジトリへアーカイブデータをコピーし、内部で持っているアーカイブデータリンク先を更新を行い、アーカイブ移行が終了となります。
アーカイブ移行処理の全体の流れは下記の通りです。
基本的なデータ移行の枠組みはSAP社から提供されています。弊社の場合は、それを元にお客様の移行要件に合うように(事例としてはデータアーカイブを処理対象に追加したり、一気に移行すると時間がかかるので、週末毎に分割移行可能にするなど)必要となる機能を追加で開発することで、移行の手間や計画リスクを削減する形でお客様にサービスとしてご提供しておりました。(すいません、技術ブログなのですがちょっとだけ宣伝です。)
以上で既存のアーカイブ環境がなんであっても別のアーカイブシステムに移行できることがお解り頂けたかと思います。
今回はこれで終了となります。
今まで2回に渡ってSAPの標準アーカイブの仕組みとデータ移行方法を説明して参りましたが、第3回(最終回)は、専用のアーカイブサーバを立てずに、一般的なファイルサーバを使うことでコスト削減するアイデア(コンテンツリポジトリの撤廃)についてご説明します。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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- カテゴリ: データ移行