
世界中の企業で導入されてきた「SAP R/3」ですが、現在は後継システムへの移行が急務となっています。
この記事で分かること
- SAP R/3の基本的な概要とERPにおける役割
- システム誕生から現在までの歴史とバージョン変遷
- SAP ERPやSAP S/4HANAへの進化の過程
- 「2025年の崖」や「2027年問題」と呼ばれるサポート期限の課題
- 後継システムへ移行すべき理由と具体的な影響
本記事では、SAP R/3の基礎知識や歴史から、最新システムへの移行までを徹底解説します。サポート期限の終了に伴う「2027年問題」への対応は、企業にとって避けて通れない課題です。この記事を読むことで、SAP R/3の全体像を把握し、次世代ERPシステムへ移行すべき理由と必要な知識を網羅的に理解できます。
SAP R/3の概要と基礎知識
ドイツのSAP社が提供する製品名としては、R/3(読み方:アールスリー)が最も有名ではないかと思います。SAP R/3は、企業経営における資源を統合的に管理するシステムとして、世界中の多くの企業で導入されてきました。本章では、SAP R/3の基本的な概要と、その名称が意味するものについて解説します。
ERPシステムにおける位置づけ
SAP R/3は、企業の基幹業務を統合的に管理するERP(Enterprise Resource Planning)パッケージの代表的な製品です。企業活動に必要なあらゆる業務プロセスを網羅しており、主に以下のような業務領域をカバーしています。
- 財務会計および管理会計
- 販売管理および在庫購買管理
- 生産管理および人事管理
ERPシステムにおけるSAP R/3の最大の特徴は、各業務モジュールがリアルタイムに連携し、データの一元管理を実現していることです。これにより、一部署で入力されたデータが即座に他部署のシステムにも反映され、経営状況の迅速な把握と意思決定が可能になります。
名称の由来と意味するもの
SAP R/3という名称には、システムの設計思想とアーキテクチャの特徴が込められています。下表のとおり、それぞれの文字や数字には明確な意味があります。
| 名称の部分 | 由来と意味 |
|---|---|
| R | 「Real-time data processing」の先頭をとったものです。業務データの即時処理と反映を重視する設計思想を表しています。 |
| 3 | データベース層、アプリケーション層、プレゼンテーション層の3層からなるアーキテクチャであることを意味しています。 |
このように、SAP R/3はリアルタイム処理と3層アーキテクチャを組み合わせることで、柔軟かつ拡張性の高いシステム構築を実現しました。様々なプラットフォームで動作するクライアント・サーバ型の分散アプリケーションとして、企業システムの標準的な存在となりました。
システムの歴史とバージョン変遷
SAP製品のなかでも、R/3はとくに広く知られているシステムです。しかし、R/3が登場する以前にも過去のバージョンが存在しており、システムの形態や名称は時代とともに変化してきました。ここでは、SAPシステムの歴史とバージョン、および名称の変遷について解説します。
過去のバージョン
R/3の「3」という数字が示すとおり、SAPシステムにはR/1やR/2といった過去のバージョンが存在します。これらは、現在のシステムの基礎となる重要な役割を果たしました。
メインフレーム時代のシステム
初期のSAPシステムは、大型コンピュータであるメインフレーム上で動作するように設計されていました。下表のとおり、各バージョンは時代のニーズに合わせて進化を遂げています。
| バージョン | リリース年 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| R/1 | 1973年 | メインフレームで動作する財務会計システム |
| R/2 | 1970年代終盤 | 多国籍企業向けに複数通貨・言語に対応したパッケージ |
リアルタイム処理の実現
SAPシステムの名称にある「R」は、Real-time data processing(リアルタイムデータ処理)の頭文字をとったものです。データをバッチ処理するのではなく、入力されたデータを即座に処理して反映させるという、当時としては画期的なコンセプトを持っていました。
初期システムの誕生
1973年にリリースされたR/1は、メインフレームで動作する財務会計システムとして誕生しました。これがSAPの原点であり、企業内のデータを統合してリアルタイムで処理するという思想の出発点となりました。
多国籍対応への進化
1970年代終盤には、後継となるR/2がリリースされました。R/2もメインフレームで動作するシステムでしたが、欧州の多国籍企業向けに複数の通貨や言語に対応したことが大きな特徴です。これにより、リアルタイムで利用できるビジネス・アプリケーション・パッケージ製品として大きな成功を収めました。
クライアント・サーバ型への移行
1992年7月6日、ITインフラの進化に伴い、SAPシステムは大きな転換期を迎えました。それがR/3の誕生です。R/3はメインフレームから脱却し、さまざまなプラットフォームで動作するクライアント・サーバ型の分散アプリケーションとして開発されました。このアーキテクチャの刷新により、システムの柔軟性と拡張性が飛躍的に向上し、世界中の企業に導入されることになりました。
名称の変遷と派生モジュール
SAP製品は、機能の拡張や製品群の再編に伴い、名称やバージョン表記が複雑に変化してきました。ここでは、主要なコンポーネントや派生モジュールの名称の変遷について整理します。
コンポーネントの呼称変更
「mySAP ERP」製品群が発表された時期を境に、従来「R/3」と呼ばれていたコア部分は、新たに「ECC(ERP Central Component)」と呼ばれるようになりました。この時代以降、R/3という名称は後継製品には継承されなくなっています。当時の製品発表の背景については、当時のニュース記事などにも記録が残されています。
その後、「SAP ERP 2005」製品群が発表されると、R/3に相当する部分はしばらくの間「ECC6.0」と呼ばれていました。しかし、のちに「ERP6.0」という呼称が一般的になり、マニュアル上でも並記されるなど、時代とともに呼び名が変化しています。
データ分析関連の名称変更
基幹システムだけでなく、データ分析を担うデータウェアハウスモジュールの名称も変遷をたどっています。発表当時は「BW(Business Warehouse)」と呼ばれていましたが、一時期「BI(Business Intelligence)」へと変更されました。
その後、2009年に再び名称が変更され、「SAP NetWeaver Business Warehouse(BW)」となりました。これに伴い、関連する高速化エンジンであるBI Acceleratorも、「SAP NetWeaver BW Accelerator」へと改称されています。このように、SAP製品の名称やバージョン表記は時代とともに変遷しており、システムの全体像を把握するうえで注意が必要です。
後継システムとサポート期限の課題
SAP R/3の登場から長らく企業の基幹システムとして利用されてきましたが、ビジネス環境の変化や技術の進歩に伴い、現在は次世代の後継システムへの移行が進んでいます。また、旧システムのサポート期限に関する課題も、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。
第4世代システムへの進化
SAP R/3の実質的な後継と位置付けられる製品が、SAP S/4HANA(SAP Business Suite 4 SAP HANA)です。R/3の発表から数えると、実に23年ぶりの大幅な刷新となりました。
製品名の「S」はSimple、「4」は第4世代を意味しています。複雑化していた業務プロセスやデータ構造をシンプルにし、リアルタイムな経営判断を支援するために開発されました。SAP S/4HANAへの移行は、単なるシステムのバージョンアップではなく、ビジネス変革のための基盤刷新という意味合いを持っています。
データベースのインメモリ化
後継システムにおける最大の技術的変化は、データベースのインメモリ化です。従来製品では、オラクルやマイクロソフトなどのリレーショナルデータベース製品も利用できましたが、SAP S/4HANAはインメモリデータベースである「SAP HANA」のみで動作します。
インメモリデータベースを採用したことで、ハードディスクではなくメモリ上でデータの読み書きが行われるようになり、膨大なデータの処理速度が飛躍的に向上しました。従来システムと後継システムの違いは、下表のとおりです。
| 項目 | 従来システム(SAP R/3・SAP ERP) | 後継システム(SAP S/4HANA) |
|---|---|---|
| 対応データベース | 他社製を含む複数のデータベース | SAP HANAのみ |
| データ処理方式 | ハードディスクベース | インメモリベース |
| 世代 | 第3世代(クライアント・サーバ型) | 第4世代(シンプル化・リアルタイム処理) |
サポート期限に関する問題とは
後継システムへの移行が急務となっている背景には、SAP ERP製品のサポート期限に関する問題が存在します。これは一般的に「SAPの2025年問題(または2027年問題)」と呼ばれています。
SAP社は、SAP R/3の後継にあたるSAP ERP 6.0のメインストリームサポートを2027年末で終了すると発表しています。そのため、現在旧システムを利用している企業は、期限までにSAP S/4HANAなどの新しいシステムへ移行するか、保守延長の対応を迫られています。
期限に伴うシステムへの影響
サポート期限が切れた状態でシステムを使い続けることには、企業にとって大きなリスクが伴います。期限に伴うシステムへの具体的な影響は以下のとおりです。
- セキュリティパッチの提供が終了し、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクが増大する
- 税制改正や法改正に対応するためのアップデートプログラムが提供されなくなる
- システムの不具合が発生した際、メーカーからの技術的なサポートを受けられなくなる
サポート終了による業務停止リスクを回避するためには、計画的なマイグレーションが不可欠です。
バックボーンアップデートの重要性
サポート期限の問題に加えて、SAPサポートバックボーンアップデートのERPシステムへの影響も考慮する必要があります。SAPサポートバックボーンとは、SAP社と顧客のシステムを安全に接続し、サポートサービスを提供するためのインフラストラクチャです。
このバックボーンインフラも旧バージョンのサポートが終了しており、新しいインフラへ接続するためには、システム側の設定変更やアップデートが求められます。適切なアップデートを実施しないと、SAP社からのノート(修正プログラム)の適用や、リモートサポートの受け入れができなくなるため、システム運用において非常に重要な対応となります。
SAP R/3に関するよくある質問
SAP R/3のサポート期限はいつですか?
メインストリームサポートは2027年末に終了します。
SAP R/3の後継システムは何ですか?
次世代ERPであるSAP S/4HANAです。
S/4HANAへの移行はなぜ必要ですか?
サポート終了によるセキュリティリスクや保守切れを回避するためです。
まとめ
SAP R/3は世界のERP市場を牽引したシステムですが、2027年のサポート終了に向け、後継のSAP S/4HANAへの移行が急務です。当社はSAPのスペシャリストとして、豊富な知見と実績をもとに、最適なソリューションをご提案します。SAPに関するご相談やお見積りのご依頼は、ぜひお気軽にリアルテックジャパンにお問い合わせください。
【本記事の監修体制について】
執筆:Professional Service 部
監修:リアルテックジャパン株式会社 SAPソリューション事業
この記事は、SAP導入プロジェクトの豊富な経験を持つ当社の専門部門が内容を精査し、 以下の最終承認プロセスを経て公開しています。
最終監修責任者:リアルテックジャパン株式会社 代表取締役社長 松浦 一哉
企業の代表として、お客様の課題解決に繋がる有益で正確な情報発信に責任を持って取り組んでまいります。
- カテゴリ: SAP運用・保守
- キーワード:SAP運用・保守



