はじめに
前回と前々回の記事で、システム運用時、移行前にやっておくことと、その具体的なやり方について説明しました。最後に実施していく上での注意点と実施後の次ステーップを説明していきます。
なお本記事は、下記シリーズ記事の一部で、他記事も参照されることをお勧めします。
第1回 【SolMan活用-CCLM概要編】意外な場所に潜むシステム運用/移行コストの可視化と削減
第2回 【SolMan活用-CCLM実践編】意外な場所に潜むシステム運用/移行コストの可視化と削減
第3回 【SolMan活用-CCLM次のステップ】意外な場所に潜むシステム運用/移行コストの可視化と削減【本記事】
いつ始めるか
「不要アドオン廃棄(削除)」および「アドオン品質改善」に関してはどちらもアドオンの修正を伴うため、多かれ少なかれ現行システム運用に対してリスクを伴います。しかし、「アドオン現状の正確な把握」に関しては情報収集なので、基本的にノーリスクです。まずは、少しでも早く情報収集を始めることが重要です。その理由は以下の2点です。
1. 開発・運用者がいなくなる前に。
アドオンには属人的な運用ツールや、一過性のツール(年に1回の組織改編のときのみに使うツールなど)が出てきます。それらの用途や要否について、実開発・運用者に聞かないとわからない部分も多いです。転属や退職等で開発・運用者がいなくなるのを避けるため、できるだけ早く始めることが重要です。
2. 統計情報を長くとるために。
「不要アドオン廃棄(削除)」のリスクを低減するためには、使用有無統計の正確性が重要です。仮に半年後にシステム移行が予定されていた場合、移行時にアドオン廃棄をするとして、統計をとれる期間が半年しかありません。年次で動くプログラムなどは使用有無がわからず、不足した情報でアドオン廃棄/存続の判断をすることになります。リスク低減のためにできるだけ早く統計取得を開始するのが重要です。
どう進めていくか
直近にシステム移行を伴うか否かで判断がわかれるかと考えています。
システム移行を伴う場合
システム移行を直近に控えている場合には、そのタイミングで「不要アドオン廃棄(削除)」および「アドオン品質改善」を実施するのが効果的です。特に「アドオン品質改善」に関しては、DBをHANA化する場合としない場合で改修方法が大きく異なります。特にHANA化の場合は、SQL単位での統計情報収集・整理ができているので、移行時における品質理由での改修対象絞込が非常にスムーズに行くはずです。
システム運用の中で実施する場合
「不要アドオン廃棄(削除)」に関しては、少しずつの削除を段階的に開発環境から本番環境に反映していくことが重要です。万が一、エラーが起こった場合に原因を特定しやすくするためです。
「アドオン品質改善」に関しては、使用頻度と実行時間の統計を鑑みて改善効果が高いものに絞って実行していくことが重要です。
次ステップへ
アドオンの現状把握をすることで、自然と次にやるべきことが見えたり、準備ができてくるかと思います。
円滑なシステム移行
アドオンの現状把握をしておくことで、システム移行時の検討範囲を狭めることができます。また、クラウドへ移行する場合には、冗長的な処理やデータが少ないほど、使用リソースが少ないため運用コスト削減が期待できます。SAP外システムに移行するとしても、アドオンが担当していた役割が整理されていることで、移行先システム要件定義が短期間化できます。
効果的なシステム改善
アドオンの現状を把握した結果、パフォーマンスが劣化が顕著になっているあればデータアーカイブやシステムチューニングを実施してきます。また、特定のチームや領域でアドオンの品質が低いのであれば、開発/運用ベンダーと原因の相談をしたり、運用方法の見直しをするのも効果的かもしれません。
さいごに
IT関連のニュースやセミナーでは「クラウド」、「人工知能」、「IoT」など、新しくてかっこいい用語をたくさん見ます。SAPに限定すると「HANA」、「Fiori」、「Predictive Analytics」といった用語がトレンドでしょうか。そんな中、本シリーズは、それらの派手な話ではなく、地味で渋い話です。最新のトレンドは重要ですが、トレンドに振り回されずに、目の前にある課題や予定に対応していくことも非常に重要です。DBをHANA化するにも、現行システムをパフォーマンスチューニングするにも、現状を正しく理解することが第一歩となるからです。直近でシステム移行を検討されている方も、しばらく運用に集中と考えている方にも、参考になればと願って当シリーズを投稿しました。少しでも参考になれば嬉しい限りです。
- カテゴリ: データ移行
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