「用の美」
先日、食器を購入しました。私は家具や食器などを選ぶときには「用の美」を意識しています。芸術的な美しさより、実用性を追求した結果として宿るシンプルな美しさに惹かれてしまいます。絵画や彫刻はともかく、日常的に使うもので実用性のない無駄なデザインには苛つくこともあります。
システムについても「用の美」の概念は重要だと考えています。みなさんのスマートフォンでダウンロードしたけど使っていないアプリケーションはないでしょうか?会社のモバイル対応イントラネットに業務用スマートフォンからアクセスしているでしょうか?モバイル対応、モバイルファーストという流行に踊らされ、投資をしたけど使われていないアプリケーションは多いはずです。たとえ素晴らしいものだったとしても、使われなければただの芸術作品です。
Fioriにしても同様です。頑張って導入したけど使われない、となると徒労に終わってしまいます。徒労とならないためにも、拡張・開発はひとつのオプションとして検討しておきたいです。小さな画面であるがゆえに、画面の少しの改善が使用率の向上を通じて大きな業務改善につながることも多いです。
今回はFioriの拡張・開発について説明していきます。
なお本記事は、下記シリーズ記事の一部で、他記事も参照されることをお勧めします。
第2回 マルチデバイス・ブラウザ対応:Fiori拡張・開発【本記事】
第3回 マルチデバイス・ブラウザ対応:Fiori Factsheet入門
3種類の拡張方法
レイアウト拡張は以下の方法があります。順に説明していきます。
Runtime Adaption
未リリースの機能なので注意ください。2016年にサポート予定らしいです。下は項目のドラッグ&ドロップ中画面と項目プロパティ変更画面です。業務キーユーザが業務で使用するFiori画面上でそのままレイアウト変更できます。お手軽にできて非常に便利なので、リリース前ですが紹介しました。
Web IDE(レイアウトエディタ)
クラウド上の開発環境であるWeb IDEを使うと下のようなレイアウトエディタで画面拡張できます。ボタンや入力項目などをドラッグ&ドロップで配置・変更していきます。開発方法はWebDynproのイメージに近いです。Runtime Adaptionと比べて技術者向けなツールなので、より細かい設定が可能です。
Web IDE/Eclipse(コーディング)
最後の紹介はコーディングです。コーディングなのでやろうと思えば何できます。ただ、その反面、SAPUI5・JavaScirpit・ODataなどのWeb知識がかなり必要です。
上記のどの方法でも基本的にモディフィケーションなしに標準アプリケーションを拡張可能です。クラウド上のツールであるWeb IDEはHANA Cloud Connectorを使ってオンプレミス環境と接続して使いますの方法でも基本的にモディフィケーションなしに標準アプリケーションを拡張可能です。クラウド上のツールであるWeb IDEはHANA Cloud Connectorを使ってオンプレミス環境と接続して使います。
新規画面開発方法
既存画面拡張だけでなく、新規画面開発もできます。特にWeb IDEのTemplateを使うとノーコーディングでの生成も可能です。Web IDEでは下画面でテンプレート選択して画面項目位置とAPI項目をマッピングすることで、画面を自動生成してくれます。
マルチデバイス・マルチブラウザ対応
基本的に拡張でも新規画面開発でもツールを使った場合には、自動的にマルチデバイス・マルチブラウザ対応となります。これにより、ユーザは画面操作の統一感を持つことができますし、開発生産性も飛躍的に向上します。技術的な制約からPCとスマートフォンで画面が違い、その結果として必要な開発スキル、システムが別れていた時代からすると非常にスッキリした感があります。
もちろん、綺麗な画面を作りたいがゆえにあえてPC専用画面を作ることもできます。
「用の美」の実現
仮にいい機能、コンセプトのアプリケーションだとしても使われなければ価値はありません。モバイルアプリケーションの場合、使わなくても業務的に問題がないことも多いです。使われ、効果を生むための拡張・開発はアプリケーションにとって非常に重要な要素です。デスクの前だけでなく、外出先・工場内・移動中など場所を問わずに使うことで業務の幅が大きく広がるはずです。
こぼれ話
SAP社創業メンバーであるハッソ・プラットナー氏は、「過去10年のSAPシステムの大きな弱点は画面」とS/4 HANAプレスリリース時に吐露していました。「弱点」であった画面がデザイン刷新はもちろん、デバイスを問わず使えるようになり身近になりました。そして、拡張性や新規開発に関してもSAP GUI時代よりも格段に上がっています。今回はご紹介しませんでしたが、SAP HANA Cloud Platform上のサービスを使うことでオフラインアプリケーションも生成できます。
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