スマートデバイスの普及
電車や駅などで周囲を見るとスマートフォンを使っている人が非常に多いです。ゲームをしている人、ネットサーフィンをしている人、電子書籍で読書をする人など用途は様々です。ニールセン調査結果によると2015年4月、「1日あたりのインターネット利用時間」はPCが54分に対して、スマートフォンは1時間48分と2倍の差があります。
スマートフォンを使う一般ユーザが多い反面、SAPユーザの多くはPCでSAP GUIからアクセスしているかと思います。しかし、今はスマートフォン、タブレット、スマートウォッチからでもSAPシステムを使うこともできます。いわゆるマルチデバイス、マルチブラウザでのアクセスです。本記事ではマルチデバイス、マルチブラウザ対応のSAP Fioriについて解説します。
なお本記事は、下記シリーズ記事の一部で、他記事も参照されることをお勧めします。
Fioriとは
Fioriはマルチデバイス・マルチブラウザ対応のアプリケーションです。スマートフォン、タブレット、PC等のChrome、Internet Explorere、Firefox等でデバイスやブラウザに依存せずに使用できます。言葉で解説するよりも紹介動画とデモサイトで見て触ったほうがわかりやすいと思います。また、以前の記事「S/4HANA構成要素について 画面編(Fioriとは)」でS/4 HANAの観点からも解説していますので参考にしてください。S/4 HANAではオンプレミス版の場合、従来のGUI画面も使えます。GUI画面に加えてFioriで処理をするという選択肢が増えたこととなります。
Gartner社はFioriについて「使うか使わないかではなく、いつどのように使うか」と評価ています(多少、意訳していますので正確には原文を参照してください。単純にモバイルで使えるだけなく、操作性の向上もあり、Fiori使用有無検討の波は不可避な状態と言えるでしょう。その流れに拍車をかけるようにFioriアプリケーション数が増え続けています。日本向けアプリケーションとして「締め請求」も近い将来リリースされる予定です。
上図で分類されている「Transactional」の解説は以前の記事「S/4HANA構成要素について 画面編(Fioriとは)」を参照ください。過去に「Smart Business」と分類されていたアプリケーションは、現在は「Analytical」に分類されていますのでご注意ください。
5つのコンセプト
Fioriは下記の5つのコンセプトに基づいてデザインされています。5つのコンセプトについてはSAP社ブログにわかりやすく載っているので、ここでは解説を割愛します。
- Role-based(役割中心)
- Responsive(レスポンシブ)
- Simple
- Coherent(一貫性)
- Delightful(楽しい)
5つのコンセプトが必要な理由について機能面から補足説明します。モバイル系デバイスはPCに比べると画面が小さいです。また、通信状態が常に安定して速いとは限りません。仮にSAP GUI画面をそのままモバイルで表示すると操作性、応答性が非常に悪くなってしまいます。小さな画面に項目や機能(ボタン)が多いと非常に使いづらいです。すべての項目を更新・参照するとデータ通信量の多さから応答性が悪くなります。そのため、モバイル特性を十分に考慮した5つのデザインコンセプトを採用しています(すべてそのような理由ではありませんが、大きなウェイトを占めているはずです)。
まずは使ってみる
Fioriのようなアプリケーションは悩んでいるより、まずは使ってみることが、ビジネスにどう役立てるかを検討する上での近道かと思います。わかりやすいことはもちろん、使ってこそわかる良さ・悪さがあります。今までオフィスだけで使っていたSAPシステムを外出先や移動中にも利用することで、業務のやり方が変わるかもしれません。今までよりわかりやすい画面(グラフ表示やフォント強調など)で業務処理をすることで、業務効率が上がったり新しい発見があるかもしれません。(MRPアプリケーションの動画を見ると既存画面との違いがわかりやすいです)。
会社独自の項目や機能がある場合にはモディフィケーションなしにFiori拡張もできます。詳しくは次回記事「マルチデバイス・ブラウザ対応:Fiori拡張・開発」を参照ください。
- カテゴリ: SAP情報