DB HANA化パフォーマンス検証結果とそのメリット(後編)

 2015.12.11  リアルテックジャパン

HANAの3つの速さについて

前回記事「DB HANA化パフォーマンス検証結果とそのメリット(前編)」ではHANAの3つの「速さ(早さ)」についてお話しました。

・処理が速い

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・データウェアハウスが不要となりデータ更新から分析可能となるまでの時間が早い

・やりたいことを実現するまでのスピードが速い

今回はSQLServer上に構築された従来のERP6.0環境と比較した検証と、比較結果からDB HANA化のメリットについて解説していきます。

SQLServerとHANAの比較検証

従来のRDMSベースのERP6.0環境(SQLServer)とHANAで同じクエリ処理の速さを比較してみました。

<最初にお伝えしなくてはならないこと2つ>

1.今回の評価はDB対決(SQLServer vs HANA)の評価にはなっていません。

弊社内の検証環境で動くSQLServerベースのERP環境は大量I/Oに不向きで(=OLTP向きではない)SAP環境向けに推奨されない、7,200回転のSATAディスク6本(RAID5)に複数の仮想環境が相乗りしている状態で稼働しています。またCPUもHANA4コアに対してSQL2コアです。つまり金物のSPECでみれば、SQLServer側はかなり劣っており、不利な環境になっています。あくまでHANAを評価する際の参考指標の一つとして捉えて下さい。

2.処理実装方式は一般的なものです。

処理を速くするという意味では様々な実装方式があり、やればやるだけ早くなります。今回採用した方式は一般的な力量の開発者が通常実装するならこれだろうという方式を採用しています。

以上2点をあらかじめご理解頂いた上でお読み頂ければ幸いです。

前置きが長くなってしまいました、では説明を始めます。

前記事の検証と同じでThe NetWeaver Enterprise Procurement Modelというデモ用SAP標準のテーブルを使用して下記の処理をしています。

  1.  データソース:トランザクションヘッダ2000万件、明細1.2億件、マスタテーブル4つの計6テーブルから140万件を抽出
  2. 計算処理:抽出した140万件を通貨換算して11件に集計(通貨換算と集計は1項目)

上記のデータソースからレコードを抽出して計算処理をしています。ただ、前回と異なり、進捗率を画面上でわかりやすくするため、1件のクエリで全結果を取得するのではなく複数クエリを発行しています。
※動画のグラフの値がHANAとSQLServerで少し異なりますが、伝票明細データの売上高を乱数で決定しているためです。

 

 

 

実行結果として、下図のように約40倍の速度差が出ています。

DB Compeare Result.jpg

実装していて痛感したこと

今回の検証で、HANAのもう一つの速さに気づくことができました。より正確に表現すると「痛感」させられました。それは システム実装の速さです。まずHANAで実装したのですが、HANA Viewを作ってあとはSQLと画面関連のコーディングをするだけなので非常に素早く実装できました。今回は比較画面に出力する都合上ABAPコーディングをしていますが、LumiraやEXCELなどに出力するだけであれば特にコーディングを必要としません。逆にSQLServerの場合は、単純なSQLビューを定義してノーコーディングでの実装をしようとしましたが、処理時間がかかりすぎたため、諦めました。ABAPコーディングや2次インデックス作成で地味にパフォーマンスチューニングをして何とか動画のレベルのパフォーマンスを実現させています。

Implementation.jpg

※HANA View(Information View)については過去の記事「S/4HANAの勘所:HANA Viewを使った分析高速化」を参照ください。

 [SMART_CONTENT]

DB HANA化のメリットまとめ

DBをHANA化することで3つの「はやさ」を得ることができます。

  1. 処理が速い
  2. データウェアハウスが不要となりデータ更新から分析可能となるまでの時間が早い
  3. やりたいことを実現するまでのスピードが速い
また、データウェアハウスをなくすことで以下のメリットが実現できます。
  1. データウェアハウスの運用コスト削減
  2. データウェアハウスへのデータ連携処理の削減
  3. リアルタイムでの情報分析実現

さいごに

近年の技術進化はキャッチアップだけでも大変なくらい速いです。技術進化の恩恵を得るにはシステムをアップグレードしないといけません。システムをアップグレードしないことで、システムサポート期限が迫ることはもちろん、新機能を使うことで得られるメリットを享受することが出来ません。ですが、一方でアップグレードにはリスクと費用がかかり両者のジレンマに悩まされている方も多いはずです。
アップグレードのリスクと費用を低減するためには、アドオン削減は欠かせません。以前にCCLMというアドオン最適化(削減)ツールを紹介しました。今回の内容を踏まえて、アドオン(ABAPプログラミング)でレポートの早さを実現していた機能をHANA化によってアドオン削減というアプローチもあります。アドオン削減により、シンプルで拡張性の高い実現の一助になるはずです。

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