SAP ERPシステムの移送作業負荷を軽減~Transport Managementのメリット

 2023.04.19  リアルテックジャパン株式会社

SAPシステムをアップデートするためには、移送依頼の適切な運用が欠かせません。移送運用の適正化はリソースの有効利用に繋がり、企業へよい影響をもたらします。実際の移送運用では、移送依頼を1件ごとに処理するのではなく、複数の移送依頼を一度にまとめる一括移送が用いられます。一括移送はSAP標準機能のみで実現できるものですが、決して万能ではありません。この記事では、SAPシステムの移送運用における問題点や、問題解決につながるリアルテック社製品「 REALTECH SmartChange Transport Management」の機能を紹介します。

SAP ERPにおける移送で必要な作業

まず、SAP ERPにおける移送関連の作業を整理してみます。SAP ERPにおける移送関連作業は以下4つです。

  • 移送依頼番号の取得(移送依頼の作成)
    移送依頼番号の取得は、SAPシステムに何らかの変更を加えた場合に必ず発生する作業です。発生する主なタイミングとしては、プログラムの新規開発や変更、アドオンテーブルの新規作成/変更、バリアントの作成時などが挙げられます。
    移送依頼番号が増えてくると、依存関係の管理や適用順序の順番などを管理する必要がでてきます。
  • 依存関係の管理
    SAP ERPの移送運用では、移送依頼の間に発生する依存関係を管理する必要があります。例えば新規でアドオンプログラムとアドオンテーブルを作成した場合、プログラムがテーブルを参照するのであれば、2つの移送依頼には依存関係が発生しています。実際の移送運用では、こうした依存関係を考慮した管理が求められます。
  • 適用順序の管理
    複数の移送依頼が発生している場合、どの移送依頼を先に適用させるかも重要なポイントです。SAP ERPシステムでは、移送対象の種類ごとに適用順序が決められているからです。
  • 移送依頼の個別エクスポート、インポート作業
    移送元のシステムにおいては、移送依頼番号ごとにトランザクションコード「SE01」でリリース作業を行います。また、、リリースした移送依頼番号は「STMS」で個別に適用(インポート)する作業も必要です。インポート後は、移送ステータスが緑(=正常終了)していることを確認し、移送作業は完了となります。
「theGuard! SmartChange Transport Management」 導入
Archive Migration Service (アーカイブ移行リモートサービス)

SAP ERPの移送で発生する問題

SAP ERPシステムの移送運用は、前述のように複数のステップを経ることから、それぞれのステップで問題が発生しやすいのが特徴です。主な問題としては以下が挙げられます。

移送順序の管理が煩雑になりがちである

SAP ERPシステムでは、移送対象となるオブジェクトの種類によって、移送順序が決められています。以下は、一般的な移送の順序です。

  • パッケージ
  • テーブルのドメインやデータエレメント、検索ヘルプといったベースオブジェクト
  • アドオンテーブル本体及び構造
  • データ型、ビュー、ロックオブジェクトなど
  • メッセージ本体とメッセージクラス
  • プログラム本体、汎用モジュール、Includeプログラム、Exitなど
  • バリアント
  • トランザクションコード

移送依頼の数が増えてくると、この移送順序を手動で仕分け・管理する必要があり、担当者の負荷が大きくなります。

また、主動で移送を管理している場合、開発側とベーシス側で頻繁にやり取りが必要になり、情報伝達が煩雑になることでミスを引き起こすこともあります。特にアドオンテーブル移送のように複数の移送オブジェクトを持つ移送依頼の場合は、ミスが発生しやすくなります。

移送実施スケジュールの調整が必要である

移送オブジェクトの種類によっては、本番環境の一時停止が必要な場合もあります。本番環境の停止は日常業務の中断につながるため、日程の調整や移送適用作業を複数回に分けて実施するなど、さまざまな雑務が発生するでしょう。

また、業務時間外や夜間など、本番環境がオフラインの時間帯を中心とした移送適用作業が続くことで、運用チーム全体の負荷が高くなるリスクも見逃せません。

紙ベースの移送管理による承認作業のミス

デジタル化が進んだ現代においても、紙ベースの移送依頼票を中心とした移送運用を続けていることがあります。紙ベースの移送依頼管理には、SAP ERPシステムの外で申請→承認のワークフローを精緻に進められるというメリットがあります。しかし、SAP ERPシステムと紙の情報にズレが発生し、本来承認すべきではない移送依頼を適用してしまうリスクもあるわけです。

移送運用の問題を解決「Transport Management」

これらSAP ERPシステムに移送に関する問題を解決できるツールがREALTECH社製SAPシステム変更支援ソフトウェア「REALTECH SmartChange Transport Management」です。

Transport Managementとは

REALTECH社製SAPシステム変更支援ソフトウェアであるREALTECH SmartChange Transport Management(以下TM)はお客様の移送運用を補助するアプリケーションです。
シンプルな画面操作とともに、これまで手動で実施してた移送関連タスクを自動化し、人為的ミスの削減や業務効率化などに役立つ機能が集約されています。

TMには、SAP ERPシステムのランドスケープ全体を一元管理するコンソール画面が用意されており、そこから開発機/検証機/本番機の移送を操作することが可能です。。移送関連作業をそれぞれのシステムへログインすることなく行えるため、ログイン環境の誤認によるミスの防止や、複数の移送依頼の適用状況が可視化されるなど、さまざまなメリットを提供できます。

Transport Management(TM)の基本機能

TMでは、SAP ERPの以下のような機能でSAP ERPシステムの移送運用を効率化します。

  • ABAPによる操作
    SAP ERPの独自言語であるABAPを使用し、「移送依頼のマージ」「インポート順序の指定」「伝達事項の付与」「移送ルート(クライアント)の選択」「承認済み依頼のみをインポート」などの操作が可能です。
  • 自動実行機能
    インポートの自動実行や結果の自動配信、移送ログの追跡やレポート発行などが可能です。
  • 事前チェック機能
    バージョンの追い越しチェックや依存関係によるエラーチェックなど、移送作業で発生しがちなエラーを事前にチェックする機能です。

これらTMの機能を活用することで、移送運用の問題を解決することができます。 

移送順序の管理について

一括移送を行う際に、移送の順番を指定したいケースがあるかとおもいます。TMでは複数の移送依頼をまとめて移送する際、順番の指定をすることができます。パッケージという一つの入れ物に移送依頼を入れその中で順番指定を行う、あるいは個々の移送依頼に対し個別に前後の依存関係をつけていく機能が用意されています。後者ですと、例えば後からリリースされた移送依頼だけれども、ある特定の移送依頼の前に移送されるような順序関係を、任意の移送依頼を指定して個々にもたせることができます。

移送実施スケジュールの調整について

例えば次のような場合にTM コンソール画面上から一括移送することができれば、移送担当者の負荷は軽減されるでしょう。

  • 予定されているカットオーバーに向けて会計アプリケーション開発の移送を一括で実施したい
  • システムメンテナンス中に止めていた移送依頼のインポート処理を一括で進めたい
  • 既に他システムへ移送済みの複数の移送依頼をまとめて別システムへ移送したい

TMでは移送を待機させておくための専用のキューが用意されており、このキューへ承認された移送依頼のみを配置していきます。キューに入っている移送依頼を定期的に対象システムへインポートすることにより、指定した日時、間隔で一度に移送することができます。ジョブのスケジュールも可能ですし、任意のタイミングで手動実行することも可能です。

ジョブを定期的に流すことにより移送運用担当者は1件ずつ移送をインポートする必要はなくなります。また、定時移送のために日々待機しておく必要もありません。一度キューに入った移送依頼はいつでもキューから取り除くこともできるので、移送したいものだけを含めることができます。また、インポート時のパフォーマンスを考慮する設定も用意されており、移送適用作業にかかる時間短縮にも貢献します。

さらに、このキューを各システムの平常時移送用とし、任意のユーザ専用の特別なキューを作ることも可能です。TMをご利用いただいているお客様のなかには、この特別なキューを緊急対応などイレギュラーな移送時に利用することで、柔軟な移送運用を実現されているケースもあります。

TMではこれらのキューによる移送を開発機から検証機、次に本番機へと順に実施していきます。
既に別のシステムへ移送済みの移送依頼を後からまとめてTMアプリケーションへ含めることもできます。

紙ベースの移送管理による承認作業のミスについて

移送依頼の数が多い場合は、テキストファイルからの読込みでTMへ乗せることも可能となっています。TMに乗せた後は、移送申請、承認、移送と進んでいくことになります。

また、一括移送をするうえで多くの場合前提となる「移送申請への承認」にも対応可能です。一般的な移送運用では、承認者が移送依頼票の承認をした後で移送処理(リリース、インポート)が実施されます。しかし、移送依頼の数が多い場合、承認者の負荷が高くなり、承認作業の遅延やミスの発生などにつながるリスクがあります。TMでは、承認時にも複数の移送依頼を選択し、一括で承認ワークフローを処理することが可能です。従いまして、一括移送の際に承認のシステム入力が滞り作業が進まないということもありません。

ちなみに承認には2種類あり、移送の内容を把握している担当者用(開発リーダー、マネージャなどを想定)と、移送を実施する担当者用(移送運用者を想定)が利用できます。それぞれ複数の承認者を経由しなければ移送できないように、多段階承認を設定することもできます。

まとめ

ここでは、SAP ERPシステムにおける移送関連作業の概要と、そこで発生する問題点などを紹介してきました。TMは、これらSAP ERPシステムの移送に関する問題を解決できるツールです。移送依頼を一括でTMへ乗せ、一括で承認し、確実かつ迅速に移送を行う機能を提供しています。ランドスケープ全体を見渡せるコンソール画面を中心に、移送運用に時間をかけず移送運用担当者へ負荷をかけないための工夫が盛り込まれている製品となっております。

興味のあるお客様はぜひREALTECH SmartChange Transport Managementの利用をご検討ください。ご相談はリアルテックジャパンまでご連絡ください。

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リアルテックジャパンはSAP製品に精通したエンジニアが多数在籍する、テクノロジーコンサルティングファームです。
2002年の設立後、SAPシステムを導入されている企業、クラウドベンダー、ハードウェアベンダー、コンサルティングファーム等のお客様から高い評価を頂いております。
移行の規模を問わずさまざまなお悩みに対応していますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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