SAPのS/4導入に伴い、多くの企業が大量の移送オブジェクトを処理する必要が生じています。これらのオブジェクトは、開発システムで作成され、テストシステムを経てプロダクションシステムへと移送されます。大量に発生したオフジェクトは、Golive前に一括で移送される事が多く、これらのオブジェクトを効率的かつ高速に処理することは、プロジェクトの成功に不可欠です。
ブラウンフィールド(システムコンバージョン)でのケース
システム移行/アップグレード時に移送が大量発生します。特にS/4 HANAへの移行がトレンドになっている昨今、ERPとS/4での差分が膨大な数になることがあります。私の経験では、R/3やERP時代でのアップグレードでは、発生する移送の数は数十~数百でしたが、前回経験したERPからS/4へのアップグレードでは移送の数は5000を超えるものでした。
これらの移送をシステム入れ替え時、スムーズに行うためにREALTECH社製SAPシステム変更支援ソフトウェアであるREALTECH SmartChange Transport Management(以下 TM)の活用が現実的である言えます。
移送手段毎の処理時間
ここで移送にかかる処理時間について考えてみました。
- 前提条件:移送の数 5000
手作業
トランザクションSTMSからオペレーターが一つずつ移送台帳を元にインポートします。マニュアルで移送を行うと一つあたり数分かかります。一つあたり2分と考えても5000個あれば、10000分=166時間40分=6日22時間40分ということなります。これは、ダウンタイムが伴うシステム移行に現実的ではありません。
スクリプト化 スクリプトからtpコマンドを直接コールしてインポート
直接tpを呼び出すので移送1個あたりの処理時間は数秒ですが、ある程度まとまった数(例えば20個ごと)でインポートして正常終了を行い、次のインポートを行うオペレーションになるのが一般的です。
スクリプトの開始に30秒、1個平均3秒として20個のインポートに60秒、正常確認に60秒と考えた場合、20個150秒となり、5000個インポートするには250回繰り返します。250回×150秒=37500秒=10時間25分かかります。
Transport Management(TM)
TMを使った場合、インポート処理は機械的に移送処理を行えるため、1個あたり3秒でインポート出来るとすると、5000個×3秒=15000秒=4時間10分で移送は完了します。
効率的な管理(エラー対策など)
次はエラー対策について考えてみましょう。
リハーサルから本番移行までに不具合が見つかった場合、移送依頼の依存関係や移送の順番に変更が発生することもあり、アプリケーション開発チームからベーシスチームへの伝達ミスが起こる可能性があり、紙やエクセルベースの移送管理は複雑でリスクが高まります。手作業の場合はもちろん、スクリプトでの実行はリハーサルで確立した手順も本番移行でインポート漏れのリスクにさらされます。
TMを使うことにより、アプリケーションチームが各グループ(例えばFI, CO, MMごと、さらにFIを会計帳簿、固定資産、債権残高など)の機能ごとに移送をまとめておくことが出来、さらに依存関係でインポート順番を設定できます。この機能によりFIの移送でエラーが発生しても、エラー内容でそのまま続行するのか、FIのインポートは一旦停止して、後続のCOやMMの移送を先にインポートして移送作業を続行しつつ、FIのアプリケーションが修正してする移送設計が可能になります。
フレキシブルなライセンス形態
ライセンスの提供形態には以下の二通りがあります。長期利用で費用を抑えることを優先するのか、一定期間の利用が望ましいのかなど選定いただくことが可能です。
永久ライセンス
永久ライセンスは、ソフトウェアを購入した時点で一度だけの支払いで永久に使用できるライセンス形態です。永久ライセンスを購入することで、長期的に見てライセンス費用が安くなるというメリットがあります。またバージョンアップ時の追加のライセンス費用は基本不要です。
サブスクリプション提供
サブスクリプション提供は、月単位の料金でソフトウェアの使用権を提供するライセンス形態です。利用期間が短い場合や、将来的にシステムを変更する可能性がある場合には、サブスクリプション提供が適しています。サブスクリプション提供では、ライセンス費用が月額定額であるため、プロジェクト期間のみ限定的に使用するなどで費用を抑えることができます。
まとめ
TMは、SAPシステムの移送作業に必要なすべての情報を一元管理し、ユーザーが必要なオブジェクトを簡単に選択してインポートすることができます。これにより、オブジェクトの移送作業が大幅に簡素化され、時間とコストの削減が実現できます。
さらに、TMは、オブジェクトの変更履歴を記録することができ、各オブジェクトの変更状況を一覧で確認することができます。これにより、移送作業中に問題が発生した場合でも、問題の発生時点からの変更履歴を参照することができ、迅速かつ正確な対応が可能となります。
SAPシステムの移送作業は、導入プロジェクトの重要なステップであり、正確かつ迅速な処理が求められます。REALTECH社の「REALTECH SmartChange Transport Management」は、これらの要件を満たすために開発されたソリューションであり、SAP導入プロジェクトにおいて効率的かつスムーズな移送作業を実現するための有用なツールとして活用されています。
- カテゴリ: 移送管理
- キーワード:SAP 移送