アクセス管理がもたらすSAPの強固なセキュリティ体制

 2021.11.19  リアルテックジャパン株式会社

企業の基幹業務を統合管理するSAPには、強固なセキュリティが求められます。そこで重要な役割を担うのが、アクセス管理の設定です。本記事では、SAPのセキュリティ体制を強化するために欠かせないアクセス管理について解説します。

SAPのアクセス管理とは

「アクセス管理」とは、ITシステムへのアクセス権限を管理し、情報の閲覧や編集を制限する仕組みです。SAPは、財務・会計・人事・調達・生産・販売といった基幹業務を統合管理するERPシステムであり、企業のあらゆるデータやファイルが一元管理されています。そこには顧客情報や製品開発情報のような社外秘情報はもちろん、従業員の個人情報や人事考課情報といった社内秘情報も含まれます。

それは裏を返せば、企業に属するすべての従業員が機密情報にアクセスできることを意味しているため、情報の閲覧や編集を制限しなくてはなりません。そこで必要となるのが、アクセス管理の設定です。たとえば、ユーザー権限や認証システムの設定、不正操作の監視など、さまざまな施策によってSAPへのアクセス権限を管理します。ERPシステムにおける職務分掌の徹底を実現するうえで、アクセス管理は不可欠な施策といえるでしょう。

アクセス管理が必要となった背景

SAPにアクセス管理が必要となる理由には、さまざまな社会的背景が関わっています。たとえば、働き方改革の推進や新型コロナウイルスの感染拡大などの影響から、テレワークが増加していることが挙げられます。テレワークは新しい時代に即した働き方として注目される一方、セキュリティの脆弱性が懸念されています。オフィス外にPCやモバイルデバイスを持ち運ぶという性質上、データの紛失や盗難、情報の不正な持ち出しといったセキュリティインシデントの可能性は否めません。

またM&Aの増加も、アクセス管理が必要となる理由のひとつです。IT技術の驚異的な発展や、市場の著しい変化などの影響もあり、国内ではM&Aが右肩上がりで拡大しています。経営統合や合併の増加による組織改編では、データの統廃合におけるルールやセキュリティポリシーの策定が必要です。このような背景から「ガバナンス」「リスク」「コンプライアンス」の3要素を首尾一貫させ、効率的にマネジメントしていく「GRC」の重要性が高まっています。そして、GRCを整備するために欠かせない要素のひとつとして、アクセス管理が必要となってくるのです。

GRC導入事例(アクセスリスク分析導入編)
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SAPでアクセス管理を行うメリット

アクセス管理を実施する主なメリットとしては、2つの要素が挙げられます。それが「セキュリティ強化」と「IT部門担当者の軽減負担」です。ここからは、この2つの要素がどのようなメリットをもたらすのかを具体的に解説します。

セキュリティ強化

適切なアクセス管理によって得られる最大のメリットは、セキュリティの強化です。冒頭で述べたように、SAPは企業の基幹業務を統合管理するERPシステムであり、強固なセキュリティ環境が求められます。情報漏洩インシデントは、マルウェアや不正アクセスなどのサイバー攻撃による被害が多いと思われがちですが、実はそうでもありません。

コンピュータセキュリティ企業「McAfee」の調査によると、情報漏洩インシデントの原因の1位は「管理ミス」で、2位は「誤操作」、3位は「不正アクセス」となっており、4位・5位に「紛失・置き忘れ」「不正な情報持ち出し」と続きます。つまり、外部からのサイバー攻撃よりも、内部の従業員によるミスや不正な情報流出などのほうが、原因の大多数を占めているのです。

このような情報漏洩インシデントを防ぐためには、GRCに基づくアクセス管理を設計しなくてはなりません。とくに、オフィス外で業務に取り組むテレワーク環境では、ガバナンスの整備が重要です。たとえば、職務分掌を規定してユーザー権限を設定したり、ログイン認証システムを取り入れたりすることで、内部情報の流出やアカウントの不正利用リスクが軽減され、セキュリティが向上します。

IT部門担当者の軽減負担

一般的に、ユーザー権限やID認証の構造は非常に複雑で工数もかかるため、情報システム部門にとっては大きな業務負担です。SAPには、ユーザーのIDを統合管理するIdentity Managementというソリューションがあり、この導入により情報システム部門の業務負担を軽減できます。アクセス管理における業務負担が減ることで、人件費の削減に貢献すると同時に、自社のコア業務に人的資源を集中できるのも大きなメリットです。

SAPで行うべきアクセス管理

それでは実際に、SAPで行うべきアクセス管理について見ていきましょう。とくに重要となるのは、「IAMの導入」と「ユーザー権限設計の最適化」の2つです。ここからは、この2つの要素について順番に解説していきます。

IAMの導入

「IAM」とは「Identity and Access Management」の略称で、ユーザーIDとアクセス権限を管理する機能のことです。「Identity」はユーザーIDやパスワードなどのアイデンティティ要素で、「Access」は認証やユーザー権限といったアクセス要素を指します。SAPのアクセス管理において、このIMAを最適化するのが、「SAP Identity Management」と「SAP GRC-Access Control」という2つのソリューションです。

SAP Identity Managementは、ユーザーIDやアクセス権限の設定単位を表すロールを一元管理します。一方SAP GRC-Access Controlは、アクセスリスクの分析や特権ユーザーの管理、アクセス申請やロールの作成管理といった機能を提供するソリューションです。この2つのソリューションを連携することで、IAMの主要機能が実装され、アクセス管理の最適化が実現します。

ユーザー権限設計の最適化

SAPのアクセス管理において欠かせない要素が、ユーザー権限の設計です。適切なユーザー権限を設定するためには、職務分掌規定やルールセットなどのガバナンスを踏まえた設計が必要です。

SAPのユーザー権限設計では、「トップダウンアプローチ」と「ボトムアップアプローチ」という2つのアプローチがあります。1つ目のトップダウンアプローチは、職務分掌やルールセットを先に定義し、そのあとユーザー権限を設計するアプローチです。2つ目のボトムアップアプローチでは、先にユーザー権限を設計し、そのあと職務分掌やルールセットを定義します。

トップダウンアプローチはセキュリティリスクを最小限に抑えられるものの、初期の要件定義に工数を要する点がデメリットです。一方でボトムアップアプローチは、迅速にユーザー権限を設計できますが、運用開始後に再設計が必要になる可能性があります。それぞれメリットとデメリットがあるため、自社の事業戦略やリソースに見合った手法を選択しましょう。

リアルテックジャパンのGRC支援でセキュリティを強化

SAP社はERPシステムのリーディングカンパニーであり、国内でも多くの企業が同社のソリューションを統合基幹システムに採用しています。そんなSAPのERPシステムを導入している企業におすすめしたいのが、リアルテックジャパン株式会社が提供しているSAP関連のサービスです。

リアルテックジャパンはSAPに関するさまざまなサービスやソリューションを提供しています。たとえば、SAPのコンサルティングサービスや導入支援サービスなどが挙げられます。これらはSAPの運用におけるトータルマネジメントや、「SAP S/4HANA」へのバージョンアップ、あるいはクラウド移行などを支援するサービスです。

ほかにも、SAP社のGRCツール「SAP Access Control」や、ID管理ソリューション「SAP Identity Management」の導入支援サービスなども提供しています。とくにアクセス管理を最適化するうえで、ID管理は非常に重要であると同時に、ID基盤の移行もマイグレーションにおける高リスクな作業です。リアルテックジャパンのサービスを利用することで、安心かつ安全なID基盤の移行が実現します。

まとめ

働き方改革の推進やテレワークの増加といった社会的背景も相まって、これまで以上にセキュリティ体制の強化が求められています。とくに、企業の統合基幹システムであるSAPのセキュリティ強化は、優先的に取り組むべき経営課題のひとつです。ぜひ本記事を参考に、ユーザー権限設計や職務分掌規定を明確化し、アクセス管理を最適化してください。SAPの運用に関してお悩みの際は、リアルテックジャパン提供のSAP運用コンサルティングサービスの利用もおすすめです。働き方改革の推進やテレワークの増加といった社会的背景も相まって、これまで以上にセキュリティ体制の強化が求められています。とくに、企業の統合基幹システムであるSAPのセキュリティ強化は、優先的に取り組むべき経営課題のひとつです。ぜひ本記事を参考に、ユーザー権限設計や職務分掌規定を明確化し、アクセス管理を最適化してください。SAPの運用に関してお悩みの際は、リアルテックジャパン提供のSAP運用コンサルティングサービスの利用もおすすめです。

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