はじめに
少し季節を過ぎてしまいましたが、毎年冬にインフルエンザの予防接種を受ける方も多いと思います。子どもや高齢の家族がいる場合には特に気になるのが、病気の流行情報です。一昔前なら、病気の流行は厚生労働省やWHO(世界保健機関)の情報をチェックする方も多いかと思いますが、今はGoogle社のサービスでも確認できます。
Flu Trendsでインフルエンザ流行のトレンドを予測しています。検索エンジンでの大量の検索語句の中からインフルエンザ流行時に検索される語句(「高熱」等)の偏りを特定して流行度を測定するという、医学と別のアプローチをしています。
HANA上でもFlu Trendsと同様のことをするためのPAL(Predictive Analysis Library)と呼ばれる予測ライブラリを持っています。本記事では、HANAでPALを使った将来予測を解説します。
なお本記事は、下記シリーズ記事の一部で、他記事も参照されることをお勧めします。
第1回 Tech JAMリプレイ:統合プラットフォームとしてのHANA開発(SAPUI5, OData, PAL, HANA View)
第2回 Tech JAMリプレイ:HANAテキスト検索でのナレッジ管理効率化
第3回 Tech JAMリプレイ:SAPUI5 SmartTableを使った高度な一覧表示
第4回 Tech JAMリプレイ:HANA PALを使った将来予測【本記事】
第5回 Tech JAMリプレイ:HANAとLumira Desktopでの再発見
過去、現在から将来へ
今までの分析ソリューションでは、「現在の売上・利益を確認し、その要因を追究する」等、過去と現在の情報分析という意味が強かったと思います。基本的には、いかに過去・現在の状況をわかりやすく見せ、その要因を追究できるかに注力しています。
それに対して、最近の分析ソリューションでは、「過去、現在の情報を活かして将来予測、提案をする」までカバーするのがトレンドです。
今まで優秀な人間が経験と勘に基づいて売上等の将来予測、対応案の立案をしてきたと思います。その属人的なプロセスを部分的にでもシステムが担当することで、より高精度でわかりやすい形に進化することが可能かと思います。
HANAでの予測ライブラリ(PAL)
前記事の動画デモでは「開発工数シミュレーション」で過去の開発履歴情報からプログラム開発工数を算出しています。下図のように「開発者」、「タイプ」、「想定ステップ数」と「難易度」を入力して想定開発工数を算出をしています。
デモにおけるHANAの内部処理ではPALの重回帰分析を使用して将来予測をしています。プロジェクトでは属人的な領域であることが多い開発工数見積を合理的かつ簡素にしている点がポイントです。また、今回は実装していませんが、最適な開発者を提案することも可能です。
PALについてはAFL(Application Function Library)の一部であり、過去の記事「S/4HANAの勘所:HANA AFMとAFLを使った統計解析」に詳しく書いています。また、予測ではありませんが、統計解析としてクラスタリングを使った例を過去の記事「S/4HANAの勘所:HANA基本実践編(PALとLumiraを使った顧客分析)」、「S/4HANAの勘所:HANA応用実践編(PALとUI5を使った顧客分析)」で解説しています。
また、より洗練した予測分析が可能なSAP Predictive AnalyticsやIoTとM2Mシナリオ向けのSAP Predictive Maintenance and Serviceといったソリューションも出ており、この分野の進化のスピードは目を見張るものがあります。
さいごに
本記事では「HANA PALを使った将来予測」と題してHANAでPALを使った処理の例を紹介しました。冒頭で説明したFlu Trendsのように過去と現在から将来予測をするに足る技術環境は整っています。経験と勘にプラスして合理的な予測値を加えることができたら、より精度の高い未来とその対策が見えてくるのだと思います。もう一度、みなさまの身の回りのことで合理的な将来予測ができないか想像しなおしてみると、いい再発見があるかもしれません。
- カテゴリ: S/4HANA
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